2020.02.18

手負いの大阪エヴェッサをけん引する若き司令塔…中村浩陸「どんな形でも勝利に貢献する」

窮地に立つチームにあって、存在感を増す中村[写真]=鳴神富一
スポーツジャーナリスト

 現在、西地区首位争いを演じている大阪エヴェッサBリーグも折り返し地点を過ぎる中、依然としてチャンピオンシップ進出圏内をキープしており、現時点で好調なシーズンを過ごしていると言ってもいいだろう。しかし今、彼らに試練が訪れている。主力を担っていた伊藤達哉合田怜と2人のガードがケガで長期離脱を余儀なくされたのだ。

 そんな中、司令塔として大きな役割を担っているのが特別指定選手の中村浩陸だ。12月下旬に加入してからすべての試合でコートに立ち続けている彼は、これまで平均20分以上のプレータイムを獲得。2月12日の琉球ゴールデンキングス戦、15日千葉ジェッツ戦ではスタートとしてゲームに出場している。

 昨年夏、通っている大東文化大学のつながりから大阪の練習に参加した中村。その時に「オフェンスではボールプッシュして速い展開を行い、ディフェンスでは激しいプレッシャーを掛けていく。そんなチームのプレースタイルが自分と合っている」と感じたという。そして今冬、今度は選手としてオファーが届いた格好だ。本人曰く「他のチームからの誘いはなかった」という状況の中、相思相愛な関係で新たなキャリアをスタートさせた。

プロの舞台で感じた課題と手応え

 チームを率いる天日謙作ヘッドコーチは彼の冷静さを評価しつつも、同時に状況判断力が今後の課題であると15日の千葉ジェッツ戦後の記者会見で語ってくれた。

「彼は冷静ですよね、どんな状況でもしっかりとコート全体を見ることができる部分が一番いいと感じています。完璧ではないですが、二重丸をあげていいですね。でも、Bリーグの中で富樫(勇樹)選手のような経験ある選手とマッチアップして、長い時間コートに立っていると少し悪い判断のプレーが出てきています。『こういうことをしたらこうなるんだ』とか『このパスだとBリーグではカットされる』など経験を積みつつ、早く学んで成長してほしいです」

 状況判断力向上の必要性という点に関しては、中村自身もこの2カ月間でHCと似た考えを持ったようだ。

「プロでも大学と同じように、ポイントガードとして意識的にチームへ声を掛けるなどのことはやっています。けれど、自分は英語が十分には話せないので改善していかないといけないですね。そこを改善すればコミュニケーションも取れてチーム力も上がっていくと思っています。プロ選手のフィジカルやディフェンスの強度に序盤は苦しみましたが、2カ月間で慣れてきている状況ですね。今までは相手のプレッシャーに打ち勝つので精一杯でしたが、これからは2つ先や3つ先の流れをイメージしたプレーができるように、瞬時にいい判断をしてゲームをもっとクリエイトしていきたいです。それが自分の次のステップになると感じています」

 一方で自身のディフェンスには確かな手応えを感じている。

「ディフェンスの部分は通用しているかなと思いますね。今日(15日千葉戦)も前からプレッシャーを掛けてスティールできましたし、特に後半は相手にとって嫌なディフェンスを積極的に仕掛けることができたので。それを1クォーターの入りからやるべきだと思いますし、1試合通してやっていかないといけないかなと思います」

今シーズンの目標とその先の夢

 昨シーズンは大東文化大学でキャプテンの役割を担う中、チームを関東大学バスケットボールリーグ戦1部優勝に導き、集大成となった全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)では優勝こそ逃したものの3位という結果を残した。特別指定選手という立場ながら、プロの世界においても同じように結果を出す責任感を中村は感じている。

「今のチームはガードが少ない厳しい状況です。自分は特別指定選手として入っていますけど、プレータイムをもらって試合に出ている以上は、どんな形でもチームの勝利に貢献しなくてはいけないと感じています」

 チームの勝利に貢献した先には彼自身にとってはもちろん、大阪としても新たな景色が待っている。取材の最後にはそれを今シーズンの目標として明確に言葉にし、さらにはその先の夢も語ってくれた。

「今シーズンはしっかりとチームで地区優勝をして、その先のチャンピオンシップで勝つという目標があります。その目標のために自分がチームへ力を与えられたらと思います。そして、その先には日本代表。バスケットをやっている以上は日本代表を目指すのは当たり前のことなので、一つでも二つでもレベルの高い所でプレーできるように努力していきたいと考えています」

 果たして大阪は新たな景色を見ることができるのか。若き司令塔の成長如何で、大阪が歩むストーリーは変わっていくだろう。彼への期待は非常に大きい、だからこそ結果を出せば中村自身のバスケットボール人生にも新たな景色が広がるはずだ。

文・写真=鳴神富一

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