2020.05.15
2シーズン連続で川崎ブレイブサンダースと特別指定選手契約を結んだ増田啓介。昨年のインカレでは筑波大学を3年ぶりの日本一に導き、自身もアシスト王と優秀選手賞を受賞した。大学最後のシーズンを有終の美で飾った上で、12月末に川崎の地へ足を踏み入れたのだ。増田のポジションには長谷川技や熊谷尚也といった経験と実績のある選手が多い中、現状では3番手としてコートに立つ場面が多い。
それでも、2月16日の島根スサノオマジック戦では第1クォーターから出番がやってくる。残り3分強でコートに立つと、フィジカルを活かしてチームのフィロソフィーである激しいプレッシャーディフェンスを披露。また、第4クォーターではゴール下でサーカスショットを見せるなどオフェンスでもチームを盛り上げ、チームの勝利に貢献した。この日は増田に加えて、もう一人の特別指定選手である水野幹太も大活躍。若い力で島根を撃破したのである。
「いい働きをしてくれました。何かミスがあっても2人は常に次のことを考えてプレーしてくれて、本当に良かったです。チーム力の底上げにつながったんじゃないかなと思います」と、試合後に増田と水野を褒め称えたのが佐藤賢次ヘッドコーチ。
加えて増田のことを「日本のマティアス(笑)」と、ケガで現在長期離脱中のマティアス・カルファニのようだと笑顔で絶賛した。
「彼が入ってきた時にチームメートには言ったんですけど、プレーがマティアスに似ているんですよ。攻守両面でのオフボールの動きやポジショニングなど、IQが非常に高いです。加えて体も強くて、相手に当たり負けせずにプレーできるのが、思い切って起用できる一つの要因だと思います。ボールを持っている時の動きは、試合を重ねていけばどんどん良くなると思うので。今期待して評価しているのは、ボールがない所での動き。だから試合に使っています」
佐藤HCの評価を増田にそのまま伝えると。「それは初めて聞きました」と驚きを見せながら試合を振り返ってくれた。
「自分はカルファニ(マティアス)選手みたいにはできないですけど、逆に自分にできることをしっかりとチームに伝えてコートで表現できたらと思います。今日に関してはいい部分も悪い部分もあって……第3クォーターにコートに立ったのに立て続けにファールを重ねてしまって、すぐにベンチに下がってしまいました。チームに勢いを与えられなかったので、そこは反省ですね。あとは課題のフリースローを3本外してしまったので、そこはバイウィークでしっかりと見つめ直して、練習して、次こそは決めたいです」
少しずつではあるが、重要な局面でコートに立つようになっている増田。本人も絶賛する川崎の環境が、日々の成長を後押ししているようだ。
「本当に川崎はすごく環境が良くて、食事や練習場に加えてコーチ陣も最高です。本当にいい場所でバスケットをさせてもらえていると思います。今はいろいろなことにチャレンジして、失敗を恐れずに前を向いてやっていきたいです」
まだまだ課題があるというが、その課題をコツコツとクリアしていき、“川崎に必要な選手”になりたいと増田は言う。
「チームディフェンスの中での個人の役割も課題ですけど、今はあまり入っていないシュートをしっかりと決め切れるようにしたいです。課題は山ほどあるので、一つひとつクリアしていきたいと思っています。やるからには上を目指してやっていきたい。でも、先ばかり見ても自分はまだまだなので、まずは一つひとつ、1試合1試合、そして毎日の練習をしっかりハードに全力でプレーしていきたいです。そして自分自身の能力を少しでも高めて、誰が見てもチームに必要な選手になりたいです」
そんな中、先日行われた全日本大学バスケットボール選手権大会(インカレ)の祝勝会で、久しぶりに筑波大学の吉田健司監督と会い、叱咤激励されたことを苦笑いしながら話してくれた。
「インカレの祝勝会に行った時に吉田監督から『毎試合をしっかりとチェックしているからな、頑張れよ』というようなことを言われました。もう思わず『頑張ります!』としか返事できなかったですよね(笑)」
「今までは学生としてバスケットをしていくという形でした。筑波大学は文武両道でバスケットも勉強もしっかりと取り組まないと卒業できない環境だったので。これからはバスケット1本でやっていくことになりますが、バスケットに真摯に取り組むことはもちろん、一選手として私生活の面でも『自分にとって大切なものは何か』という事を考えながら毎日行動していきたいです」
最後は力強くプロとしての意気込みを語ってくれた増田。中地区首位をひた走る状況の川崎、悲願のリーグタイトル獲得を目指すチームにあって、彼の真摯な姿勢が勢いをもたらすのは間違いない。
文・写真=鳴神富一
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