2021.06.02

千葉を最も知る西村文男…自称“前半のMVP”が述べた「おめでとう」の恩返し

ファイナルでも印象的な活躍を見せた西村[写真]=B.LEAGUE
フリーライター

日本生命 B.LEAGUE FINALS 2020−21」の第3戦を制し、悲願の初優勝を成し遂げた千葉ジェッツ。チャンピオンシップMVPにはセバスチャン・サイズが選ばれ、ファイナルの3試合を通して印象的な活躍した選手に送られる「日本生命ファイナル賞」には富樫勇樹が選出された。

 もちろん、この受賞に異論はない。サイズはクォーターファイナルのシーホース三河戦からすべての試合で2ケタ得点を挙げ、リバウンドでもチームのために体を張り続けた。富樫も自らの得点に加え、うまくいかない時でさえもベンチで仲間を鼓舞し続けた頼もしいキャプテンであった。

 そんな中、優勝直後のインタビューで「前半のMVPは俺だろ」とアピールした男がいる。

 西村文男だ。

 勝つか、負けるかの宇都宮ブレックスとのGAME3。西村は第1クォーター途中からコートへ立つと、さっそく2本のアシストで得点を演出し、残り1分18秒には相手のファウルを受けながらもタフショットをねじ込んだ。

 さらに第2クォーターでは、先制点となる3ポイントシュート沈めてリードを6点に拡大。その後得点は生まれなかったものの、フリースローを含めると前半だけで6本のシュートを放つ積極性を見せた。そのプレーには普段のクールな様子とは違い、鬼気迫るものがあった。

「普段の試合(インタビュー)では、割とネガティブな発言しかしてこなかったんですけど、今日だけは自分を褒めたいなと思います」とも話した西村。宇都宮との大一番で見せた姿には、前回のファイナルの舞台で何もできなかった悔しさがあったからと話す。

「2年前は個人的にも何もチームに貢献できなかった悔しい思いがありました。そういった意味で、今回のチャンピオンシップでは自分の役割がある中でも、それ以上に自分みたいな普段大人しいプレーヤーが、泥臭いことをやってチームを勢いづかせたいなと思い、体を張って見せる場面も多くしたつもりでした」

運命の一戦で今季最長のプレータイムを記録

ベンチからチームを支えるベテランは仲間からも厚い信頼を寄せられる[写真]=B.LEAGUE


「本当に文男さんの存在は大きいと思います」

 そう述べたのは、西村の前の席に座り記者会見に臨んだ富樫。

 最終戦の第3クォーターでは、相手の速攻を止めにいった際にアンスポーツマンライクファウルを宣告され自身3つ目の反則を取られた。だが富樫は、この場面に一切の後悔はない。むしろ「成長」と捉え、仲間との信頼関係がそうさせたと打ち明けた。

「ファウルトラブルになってしまったんですけど、あの3回目のファウルは自分の中でも1つの成長かなと。このファイナルもCSも、レギュラーシーズンも含め後ろに座っている文男さんが(いるから)。本当に自分が良くも悪くもコートでプレーをして、ベンチに下がったときにこういう人が後ろにいるというのは本当に心強いです。数年前だったらあそこをファウルせずにレイアップにいかせていた場面かもしれないですけど、躊躇することなく3つ目のファウルができました」

 今シーズンの締めくくりとなった一戦、悲願の初優勝を決めた一戦で、西村は富樫を上回る21分41秒のプレータイムを得た。これは普段ベンチからチームを支えるベテランポイントガードにとって今季最長の数字だ。

 2つのディフェンスリバウンドも拾ったことに関しても西村はご満悦だった。「気持ちの勝負となるリバウンドで、僕のこの2本がなければ35本対35本でした。結果がどうなっていたかわからないので、そういった意味でも自分を褒めてあげたいと思います」。

 気づけば在籍7年目、選手としては最古参となった34歳。だからこそ、苦しい時の千葉ジェッツを一番知っている。だからこそ、これまで支えてくれた全ての人たちへ、誰よりも恩返しがしたかった。

「ありがとう」という言葉とともに、「おめでとうございます」と口にした西村文男が、とてもカッコよかった。

 きっと貴方も、誰もが認めるMVPだ。

文=小沼克年

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