2022.06.30
優勝のファイティングイーグルス名古屋、準優勝の仙台89ERSが見事B1昇格でシーズンを終えたB2。今回はシーズン中にコートの外で、大きくオフェンシブな姿勢を示した「越谷アルファーズ」をピックアップしたい。
各メディアやSNSで大きな話題となった、越谷の新応援グッズ「ネギばんばん」が大ヒット。県外からのオーダーも相次ぎ、収穫と出荷が間に合わないという、ホンモノのJA全農もびっくりの取り組みだ。ネギフリークなら知ってて当然、埼玉県は全国トップクラスのネギ生産量を誇る。あえてスタッツに触れる必要はないだろう。
この「ネギばんばん」の取り扱いはツッコミどころが多いので整理しておこう。
●定価:1,200円(税込)
●ネギった場合:1,000円(税込)
●値切らず購入の場合:200円が「ネギらい応援金」→特産品を活用した地域活性化へ
●「ネギばんばん」持参
・チアやスタッフとハイタッチではなく「ネギタッチ」が楽しめる
・一部の席限定で試合終了後には選手との「ネギタッチ」を行う
・選手入場時に花道ならぬ「ネギロード」で「ネギタッチ」で選手をコートに送り出す
コロナ禍でふれあいが制限される中、ならば!と新たなふれあいの形を実現させた。
専属チアリーダー・アルファヴィーナスがリードする『幸せならネギたたこう』のダンスはTwitterで1日2万回再生を突破し、定番化に成功。シーズン終盤にはファンクラブ会員限定購入アイテムとして、ゴールドの「金のネギばんばん」まで登場し、もはやネギとは認識できないアイテムへ変化した。
越谷が属するB2東地区を飛び越え、B2西地区の会場で「ネギばんばん」を持つブースターが、ちょっとした人気者になってしまうというレポートが届くなど、もうどこまでが本当なのか取材に苦労する案件だ。
「越谷は遊んでいるんだなぁ」と多くが思っていた取り組みに、他のクラブが笑えなくなってきたのが、4月24日の仙台89ERSとのGame2だ。
B2プレーオフへチームを後押しすべく、ホーム・越谷市立総合体育館をB2では特筆すべく2800名越えのブースターが埋めたのだ。
【Game1】2022年4月24日(土)越谷75-94仙台 2061名
【Game2】2022年4月25日(日)越谷66‐75仙台 2865名
これまでの越谷の最多入場者数は2020年2月8日(土)の仙台戦で、その時が1659名とあるので、1000名以上を上積みすることに成功したことになる。
このクラブレコード達成は選手だけでなく、クラブ職員、協力会社、行政を含むホームタウンが一丸となって戦った参考事例が隠れている。
まずJリーグで観客数のV字回復に成功した、名古屋グランパスに教えを請い、チケットセールスのアプローチの手法と予測値を見直した。
ここでクラブが大切にしたのが、対3000人、対2000人を相手にした考えではなく、一人ひとりのファン・ブースターと向き合う気持ちを大切にすること。
そして、潜在的な観戦候補者を特にフォーカスし、アプローチしたというのだ。
長期的なクラブの成長を見越した集客に飛び道具は存在しない。データをしっかりと蓄積・活用し、数字と向き合いながら、シーズンを通して地道な努力を重ねた。
その取り組みはクラブ職員だけでなく、選手やコーチ陣、チア、アカデミースタッフなどすべてのメンバーで行われ、試合告知、チケットの案内、再度のリマインド、来場のフォローという地味ではあるが、バスケと同じように「基礎=ファンダメンタル」を大切にし、1枚1枚を積み上げた結果だという。
また、シーズンを通して大切にし続けた地域活動が徐々に浸透し、普段からホームへ来てくれるブースターたちから、ビラ配りのさいに声を掛けられる機会が増え、心の距離もグッと近づいた。
これまでアルファーズには、「どうせ客席は埋まらない」、「フロントは何しているんだ」と、どこかチームとフロントに半信半疑な雰囲気がゼロではなかったそうだ。ただネギばんばんのヒットにより、たかがネギではなく、次も成功できるのではないか?という雰囲気に変わった影響が大きいという。
終盤の大一番で2800名の来場者というクラブレコードを達成した影響は多岐にわたる。
選手・スタッフ・クラブ職員含めて、あの迫力あるホームの景色を一緒に体感する成功体験が必要。さらにすでにチームを応援してくれている、ブースター・スポンサー・関係者にとっても「オレの応援しているチームは凄いだろう!」と一緒にいえる体験になったそうだ。
効果は早速表れ「来シーズンはこうしよう」という関係各所からの提案や、シャトルバスや駐車場など、B1昇格に備えた満員御礼の来場者対策についても、ホームタウンである越谷市など行政関係者から、前向きな話し合いが増えたという。
いかに多くの関係者と一緒になり、ホームゲームを成功させるかが大事かを教えてくれた。
■2021‐22シーズンB2上位平均観客数
1位 仙台89ERS/1538名
2位 熊本ヴォルターズ/1168名
3位 越谷アルファーズ/952名(前シーズンの12位から躍進)
とは言っても平均観客数では1000人を僅かに切っている危機感も忘れない。そしてコート上もFE名古屋とのクォーターファイナルで完敗だったと現実も直視する。
かつて実業団として多くのサラリーマン選手を抱え、BリーグになってもBリーマンとして、社業を抱える選手が所属するこのクラブの本当の戦いは、ホームの迫力を一緒に経験したあの景色を実現したことにより、さらに大きな一歩を踏み出したのかもしれない。
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