2018.12.29

不甲斐ない敗戦から1年。キャプテンとして成長した松崎がチームメイト、ライバルとともに頂点を極めた

福岡第一の松崎キャプテンは応援席に向かって両手を突きあげた [写真]=兼子慎一郎
バスケットボールキング編集部

キャプテンになって芽生えた責任感

決勝戦でもリングに向かっていくプレーを随所に見せた松崎 [写真]=兼子慎一郎


 優勝へのカウントダウンが響く中、古橋正義がキープしたボールを高く投げ上げた時、試合終了のブザーが会場に響き渡った。松崎裕樹は対戦相手や審判へのあいさつを済ますと、真っ先に応援席に陣取るチームメイトに向かって両手を突きあげていた。

「Softbankウインターカップ平成30年度 第71回全国高等学校バスケットボール選手権大会」は福岡第一高校(福岡県)の優勝で幕を閉じた。そのチームをキャプテンとして引っ張った松崎は、ベンチに入れなかった3年生に感謝の気持ちを伝えたかったのだろう。

 昨年の大会では井手口孝コーチに「どこにいるのかわからない」と酷評された松崎。福岡大附属大濠高校(福岡県)に準決勝で敗れた後、井手口コーチは敗因の一つとして松崎の不甲斐なさを指摘していた。

「去年の大会は本当に、河村(勇輝)だったり下級生が引っ張っていったということもありますし、3年生についていくだけになってしまって、自分の役割というか、自分が何をしたらいいかっていうものを自分自身見失っていました。試合を重ねるにつれて自信というか、積み上げてきたものがどんどん崩れていった感じでした」と、当時を振り返る。

 その中でキャプテンに任命された。「キャプテンというポジションを任せていただいたことによって、絶対チームを勝たせなければいけないっていう責任感も生まれました。また、スキルを磨くこともそうですし、練習に対する姿勢なども考えるようなりました」という。

 さらに「そういった積み重ねがたくさんあって、このウインターカップでそれを発揮するだけだと自分に言い聞かせていました。それに3年生や下級生がしっかりついてきてくれて。本当に今年はチームを任されるというポジションに就けたことで、自分自身も成長できたと思います」と胸を張った。

ライバルの応援を受けて、優勝へ邁進

優勝トロフィーを受け取った松崎は笑顔を隠さなかった [写真]=大澤智子


 今回の優勝は、福岡県予選の決勝で福大大濠に勝利したことがその原動力となったのは言うまでもない。「まずチームメイトを勝たせる、自分たちのために戦うというのが一番でした。ただ、今年の国体は大濠のメンバーと一緒に優勝して、それほど力のあるチームなのに、自分たちのチームでは全国大会出られないというもどかしさ、悔しさを大濠の選手たちが感じていたと思います。だから自分たちが情けないゲームをしてしまったら大濠にも失礼ですし、県予選で勝った後、『(ウインターカップは)圧倒して勝つ』とも言ったこともあり、それを実行するために県予選から1カ月間必死に練習しました。それをウインターカップでしっかりと出すことができて。やはり、大濠の存在は本当大きかったと思います」と感謝の気持ちを示した。

 実はウインターカップの会場となった武蔵野の森スポーツプラザに福大大濠のメンバーである土家大輝中田嵩基が応援に訪れていた。「中田とは会っていないのですが、連絡はもらいました。土家とは1回会って、『しっかり頑張ってくれ。圧倒してくれ』と言われたので、やるしかないと思っていました。ライバルチームなのに東京まで応援に来てくれたことは本当嬉しいことです」。

 福岡第一での3年間で学んだものは、「1日でもサボると技術は衰えるということ。それと(井手口)先生にいつも言われるのは『一つひとつの行動によってシュートは外れる。リングにシュートが入る、入らないのは運もあるから、いい行動を常にしなさい』ということです。今後は高校3年間で学んだ技術だけでなく、身につけた人間力もしっかり活かして。いつかはBリーグでプレーしたいので、大学でも頑張りたいと思います」と将来を見据えている。厳しい言葉を投げかけた井手口コーチも「将来は日の丸をつけてほしい」とエールを送る。

 決勝戦では両チーム最多の21得点を叩き出した。その勝負強い3ポイントやドライブなど、今大会でも大器の片鱗を存分に見せてくれた松崎。福岡第一優勝の原動力となったエースは、学生バスケ界でさらなる成長を期している。

文=入江美紀雄

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