2022.02.28

福岡第一vs福大大濠の今季初対決が実現…真剣勝負でなくとも最後まで熱を帯びた贅沢な“前座試合”

Bリーグの前座試合として福岡のライバル校が激突 [写真]=B.LEAGUE
フリーライター

新チームでの初対決は福岡第一が競り勝つ

「前座試合」にしてはあまりに贅沢な組み合わせが実現した。2021年ウインターカップ優勝校の福岡大学附属大濠高校と同大会3位の福岡第一高校。全国屈指の強豪校であり、福岡県内の覇権を争い続けるライバル同士でもある両校が2月26日、ライジングゼファー福岡vs佐賀バルーナーズの試合前に「エキシビジョンゲーム」という位置付けで相まみえた。

 新チームが始動してから初めての顔合わせとなったこの日、福大大濠はエースの湧川颯斗(2年)がケガで欠場。さらには片峯聡太コーチも不在となり、福岡第一の井手口孝コーチは「片峯先生もおられなかったですし、湧川君も試合に出られない。こういう立派なコート(照葉積水ハウスアリーナ)で高校生が試合できることはなかなかないから、1人でも多くコートに立たせることができたらなと思いながらやっていました」と話す。

 今回のライバル対決は勝つか、負けるかの真剣勝負ではなかったかもしれない。しかし、実際の試合は最終スコア65−61という最後まで熱を帯びた好ゲームとなった。

 試合を制したのは福岡第一。「今はいろいろなプレーができるよう“個”の部分を伸ばしていますが、今日はいろいろなことができませんでした」。試合を終え、井手口コーチはチームの出来に対し苦笑いを浮かべたが、点差を詰められるたびに轟琉維(2年)の鋭い縦への突破や城戸賢心(2年)の高いシュート力で福大大濠を振り切った。

ゲームキャプテンを務める轟琉維 [写真]=小沼克年

 福岡第一の新ガードコンビとなる城戸と轟の活躍には、「予想どおり」とまずまずの評価を与えた井手口コーチ。今年はこの2人が中心を担う存在であり、指揮官が「精神面でもプレー面でも頼れる存在」とチームキャプテンの城戸について言及すれば、ゲームキャプテンの轟にはエースとしての働きも求める。

「当然マークも厳しくなりますし、今日もハードに守られていましたけど、それを何食わぬ顔ですり抜けていけるようにならないと、あの身長(168センチ)でバスケットをしていくのは難しいですからね。ディフェンスはまだまだですけど、オフェンスはいろいろな技術を持っているので、ぜひ先輩たちに続くようないいカードに育ってほしいと思います」

 昨年から主力としてコートに立つ轟自身も、「マークが厳しくなるのはわかっていますし、今年は最上級生なので自分が責任感を持ってチームを引っ張っていきたい」と静かに闘志を燃やしている。

エースと指揮官の不在をカバーした“敏腕マネージャー”

指揮を執った2年生の野原悠太郎 [写真]=小沼克年

 一方、福大大濠はウインターカップ王者として追われる立場にある。今回はエースと指揮官が不在という状況での試合を強いられたものの、第3クォーター終盤には村上騎士郎(1年)がコーナーから3本の3ポイントシュートを沈めて一気に点差を詰めると、第4クォーターには一時逆転に成功。あと一歩及ばなかったが、最後まで諦めずに戦い抜いた。

 その“影の立役者”とも言えるのが、片峯コーチに代わり指揮を執った野原悠太郎(2年)だ。普段は主にマネージャーとしてチームを支える野原は、E級コーチライセンスの持ち主。試合中は作戦ボードを使って選手たちに指示を出し、時には判定に対して感情をあらわにし、味方が相手選手と交錯した際には「すみません」と、すぐに井手口コーチに頭を下げるなど、常に堂々とした振る舞いを見せていた。

 試合後、野原は実戦の場を与えてくれた片峯コーチへ感謝を述べた一方で、「自分のせいで負けてしまった」と悔しさを吐露する場面もあった。

「今日の負けは、やっぱり片峯先生がいる、いないの差が出たと思います。私が先生のやりたいことを理解して、それを選手につないでいけるようなパイプ役になっていければ、日本一の手助けができるのかなと思っています」

 それでも、試合をベンチから見守った湧川は「第一さん相手に4点差と、しっかりできた部分もある。今日の試合で出た簡単なミスをこれからどう減らしていくかが大事だと思います」と手応えを口にする。ウインターカップ優勝メンバーであり、いずれも190センチオーバーの湧川、副島成翔(2年)、川島悠翔(1年)が軸となる福大大濠は、今年も大型チームとして夏と冬の2冠を目標に掲げる。

 この日、同じ会場で行われた福岡vs佐賀の試合後に発表された来場者数は1793人。照葉積水ハウスアリーナにおける今シーズン最多入場者数であり、福岡第一vs福大大濠のティップオフ時刻となった10時20分から同等の数のファンが会場に訪れていた。

 次回、両者が激突するのは、負けの許されない真剣勝負の場になる可能性が高い。高校バスケ界で“超”がつくほどの人気カードは、これからも多くのファンを魅了し続けてくれるだろう。

文=小沼克年

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