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最優秀守備選手賞のウェンバンヤマ、昔はディフェンスが下手だった「あいつを攻めろと言われていた」

年間最優秀守備選手賞のトロフィーを手にするウェンバンヤマ [写真]=Getty Images

 ヴィクター・ウェンバンヤマ(サンアントニオ・スパーズ)が、史上最年少で年間最優秀守備選手賞(DPOY)を受賞した。

 それだけではない。数々の守備の達人たちに贈られてきたこの賞において、史上初の満票受賞者となったのだ。4度の受賞者であるベン・ウォーレス(デトロイト・ピストンズ)でさえ、初の受賞となった2002年は1位票を4票逃した。また、3年連続のDPOYに輝いたドワイト・ハワード(オーランド・マジックほか)でさえ、2011年には6票を逃している。ペイントエリアの覇者たちでさえ叶わなかった偉業を、ウェンバンヤマはわずかキャリア3年目にして成し遂げてしまったのだ。

 しかし、エイリアンのディフェンスの才は、生まれ持ったものではなかった。スパーズの背番号1は元々、ディフェンスが得意ではなかったという。

 フランスの大手スポーツ紙『L’EQUIPE』は、その守備力が規格外のサイズによるものだけではないと考える。最優秀守備選手賞受賞にともない、ディフェンスのレベルが現在地にまで達した理由を尋ねると、ウェンバンヤマは今の姿からは想像できない意外な過去を明かした。

「14歳の頃、フランスでナンテール92の下部組織に入団した最初の年、僕は“ディフェンスをしない選手”と見なされていました。ルーアンとの対戦で、相手チームのコーチが僕に対して『見ろよ、あのNBA有望株。ディフェンスができないぞ。あいつを攻めろ』と言っていたと聞いたんです。僕は個人的にその事実を受け止めました。そこからプロや大人と一緒に練習するようになると、与えられる役割は一つしかありません。守って、リバウンドを取ることです。それができなければ、その場所にいる資格はない。上のレベルに進むための第一条件は、いつだってそれでした」

 ウェンバンヤマはこれまでのキャリアにおいて、547人のプレーヤーと対戦してきた。そして、相手選手の半数にあたる273人に対して、ブロックショットを成功させている。『The Athletic』のザック・ハーパー記者は、この記録を「比較対象になるものが何もない」と紹介している。
 
 ステフィン・カリー(ゴールデンステイト・ウォリアーズ)がゲームチェンジャーだったように、ウェンバンヤマもまたゲームチェンジャーである。MVP争いについて問われた際、「ディフェンスはゲームの50パーセントを占めている」と発言したように、かつて対戦相手から守備の穴として狙われていた選手は、今ではディフェンスが勝負を決めるものであると自負している。

 コート上での影響力は、数字にも表れている。スパーズの今シーズンのディフェンシブレーティングは、リーグ3位の110.4だった。しかし、ウェンバンヤマがコートにいる時間に限定すると、その数字は102.9まで上昇。これは、リーグ1位に輝いたオクラホマシティ・サンダーの106.5さえも悠々と上回る成績だ。また、1試合平均3.1ブロックの事実は、相手を戦意喪失に陥れている。元スパーズのビデオコーディネーターであるモー・ダキールは、リングにアタックする相手選手が、ウェンバンヤマを前にして得点を狙うのを完全に諦めて方向転換する様を「Uターン」と名付けた。

 ウェンバンヤマは、自身のディフェンスのどの部分を最も誇りに感じているのだろうか。

「相手を左右どちらかへ追いやって思いとどまらせる時、あるいはボックスの外で小柄なポイントガードについた時ですかね。例えるなら、小さい選手がビッグマンをブロックするようなものなんです。わかりますよね?そっちのほうが、より印象的なんです」

 スイッチを利用してミスマッチを攻めるのは、現代NBAの常套手段であり、ビッグマンを外に引きずり出して、ガードがスピードで翻弄するシーンは決して少なくない。だが、ウェンバンヤマに、その戦術は通用しない。足さばきは、7フッターのビッグマンとは思えないほど鍛錬されており、仮に懐への侵入を許したとしても、第二の矢として長いウィングスパンを生かしたブロックを放つ。この男がそびえ立つ場所はエリアを問わず、難攻不落の要塞と化すのだ。

 驚くべきは、ウェンバンヤマは自身のディフェンスにまだ改善の余地があると考えていることだろう。同選手は「スパーズのディフェンスコーチたちの発言を素直に聞き入れるのであれば、僕は何一つ、ちゃんとできていません(笑)」と笑いを誘ったが、同時に、そんな自身の伸びしろに興奮を覚えているという。

 今後、ウェンバンヤマ以上にディフェンスでインパクトをもたらす選手が現れるのか。そう問われた場合、多くの専門家たちが「No」と答えるだろう。今年のDPOY受賞は、序章に過ぎない。ウェンバンヤマは、ハワードの3年連続受賞もかすむほど、今後塗り替えられることのない記録を打ち立ててしまうかもしれない。

文=Meiji

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