2022.03.09

度重なる誹謗中傷に限界のウェストブルック「家族を試合にも連れていけない」

ウェストブルックはファンから脅迫の被害を受けていると明かした[写真]=Getty Images
某ストリートメディアのシニア・エディターを経験後、独立。ひとつのカルチャーとしてバスケットボールを捉え、スポーツ以外の側面からもNBAを追いかける。

 開幕当初優勝候補と目されていたロサンゼルス・レイカーズは今、窮地に立たされている。プレーオフのストレートインに向け、終盤戦は尻上がりの戦績が求められていたものの、理想と現実の乖離は著しく、直近10試合は2勝8敗。下からの突き上げも始まっており、このまま結果が伴わなければ、プレーイン圏内からも脱落の危機にある。

 レイカーズのファンたちは、そんな不調にあえぐ球団を見兼ねて、“戦犯”なくして正気を保てなくなっている。そのターゲットにされているのが他でもない、今シーズンレイカーズに加入したラッセル・ウェストブルックだ。

 ビッグスリーの一角として鳴り物入りで加入したウェストブルック。しかし、フランク・ボーゲルヘッドコーチが思い描くバスケットにフィットできず、今シーズン平均18.1得点とキャリアワースト3位のスタッツをマークしている。また、試合のタクトを振るうポイントガードにもかかわらず、度々ゲームの流れを壊すようなプレーも取り沙汰され、ウェストブルックは現在、ファンたちの不満の矛先となっている。

 ウェストブルックはこれまでも批判に対して気丈な姿勢を示し、ファンに我慢を求めてきたが、最近は外部からのリアクションが一線を超えてしまったもよう。その影響は家族にまで及び、ウェストブルックの妻ニーナは脅迫・恐喝被害に遭っているという。

 同選手は3月8日(現地時間7日)に行われたサンアントニオ・スパーズ戦後、メディアの前に姿を現し、選手としてではなく一家の大黒柱として悲痛な叫びを挙げた。

「僕は妻を全力で支え、彼女が感じている気持ちをサポートする。シュートは外す、決めるというバスケットボールの話題は気にならない。でも、自分の“名前”が貶されるのであれば、それは黙ってはいるわけにはいかない」

「今までは気にならなかったから、放っておいた。でも、この前は本当に衝撃を受けた。僕と妻が息子の保護者面談に参加した時のことだ。その時、先生は僕たちにこう言った。『(息子の)ノアくんは、彼の苗字を誇りに感じています。彼はどこにでも、何にでもそれを書くんです。僕は“ウェストブルック”だ、とね』……僕はショックのあまり、その場に座り込んでしまった。最悪だよ。これ以上、家族の苗字を中傷するのは許せない」

 ウェストブルックは最近の不調と貢献度の低さを揶揄され、名物コラムニストのスキップ・ベイレス氏を発端に、ファンから「Westbrick(ウェストブリック)」という不名誉なニックネームで呼ばれている。ラスが言及した悩みはこの呼び名のことであり、恐らく彼の息子も過度な名前いじりでいじめの対象になっていることが推測される。

「試合を観に行くことにさえ影響が出ている。大好きな試合をしている父が意味もなく不名誉なニックネームで呼ばれているのを聞かせたくないから、子どもたちを会場に連れて行くのも嫌になる。最近はそれが顕著になり、僕の家族はホームゲームにも行きたがらなくなってしまった。最悪だし、残念極まりない。僕はこの問題に取り組み続けるつもりだ。とにかく悲しいよ」

元球団社長のマジック・ジョンソンはファンにサポートを求めた

 このウェストブルックのコメントを受けて、レイカーズの元球団社長のマジック・ジョンソン氏は、ファンにサポートを呼びかけている。

「レイカーネーションの皆さん、一丸となってラッセル・ウェストブルックと彼の家族をサポートすることが我々の責任ではないでしょうか。ウェストブルックファミリーへの脅迫や攻撃は、全くもって容認できるものではなく、決して許されるものではありません。スポーツ界にこのような行為をする場所は存在しない。以上だ」

「ラッセルはレイカーズで重要な役割を担っており、残りのシーズン、そしてNBAプレイオフでの成功に欠かせない存在となるでしょう。もっと団結して、ウェストブルックファミリーをサポートしようじゃないか」

マジック・ジョンソンは「ウェストブルックファミリーをサポートしよう」と呼びかけた[写真]=Getty Images


 辛い時期こそ選手や球団はファンのサポートが何よりも励みとなり、立ち直る原動力となる。困難を乗り切るために、レイカーズは今こそ、真の意味での団結を示さなければならないはずだ。

 果たしてレイカーズファンはウェストブルックへの姿勢を改め、ロスターに逆転の起爆剤を注入することはできるのだろうか。

 文=Meiji

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