2025.06.09

米メディアで加速するレイカーズのトレード論議…八村は契約延長か、トレードか

契約延長が必要となるドンチッチ、リーブス、八村 [写真]=Getty Images

 NBAは2チームを残して、来シーズンの準備に着手している。中でも、ロサンゼルス・レイカーズはプレーオフで明確な欠点が露呈し、マーケットで確実にアクションを起こす球団として、その動向に注目が集まっている。

 レイカーズは、選手のフィジカルチェックに問題があり破談となったが、冬の市場でもシャーロット・ホーネッツからマーク・ウィリアムズの獲得に迫ったように、スターターを任せられるビッグマンの確保を最優先事項としている。また、レブロン・ジェームズルカ・ドンチッチの二枚看板はディフェンスへの懸念が拭えず、総合的な守備力強化も課題のひとつに挙げられている。

 ロブ・ペリンカGMは、新旧のリーグの顔を擁するぜいたくな環境下で再びリングを獲得するために、複雑な意思決定が求められている。それはトレードに限らず、既存戦力の契約延長にも当てはまることだ。

 レイカーズには今オフに契約延長の対象となる選手が6名も在籍している。それぞれの金額や延長可能日は異なるが、検討すべき延長候補について考察してみたい。

今夏に契約延長資格を持つ6選手

衝撃のトレードでレイカーズ入りしたドンチッチもその一人 [写真]=Getty Images

 この夏、レイカーズが最も大きな延長交渉を行う選手は、レブロン政権の次を担うドンチッチである。スロベニアの至宝は、ダラス・マーベリックスから衝撃的な形でトレードされたが、レイカーズはこの取引によってフランチャイズの未来を塗り替えることに成功した。ドンチッチは、8月2日に契約延長の資格が与えられる。4年2億2800万ドル(約328億9600万円)のマックス契約になるのか、3年契約で10年目のFAを目指すかは不透明だが、いずれにせよ、フロントはドンチッチが望む契約を提示するだろう。

 スターターの契約延長は、ドンチッチのみではない。サードスコアラーであるオースティン・リーブスと、JJ・レディックヘッドコーチから絶大な信頼を置かれた八村塁も該当者なのだ。

 リーブスは今シーズン、ロールプレーヤーから正真正銘の3番手として飛躍を遂げた。レギュラーシーズンに記録した20.2得点4.5リバウンド5.8アシストはいずれもキャリアハイの成績。一方、足のケガの影響もあってプレーオフでは期待に応えるような活躍はできず、ファンからは批判の対象とされていた。同選手は、7月6日以降に4年8920万ドル(約128億6800万円)の延長資格を保有するが、来年夏にプレーヤーオプションを破棄してFAを選択すれば、より大きな契約を狙える。もし、リーブスとレイカーズが今夏の契約延長を見送れば、フロントにはリーブスのトレードを検討する余地が生まれてくるだろう。

 八村も、リーブスと同日に現行契約から若干のサラリーアップを見越した契約延長を結ぶことが可能になる。レギュラーシーズンでは2年連続スリーポイント成功率40パーセント以上を達成し、今年のプレーオフでは48.4パーセントと約半分のアウトサイドショットを成功させた。出場時における100ポゼッションのプラス/マイナスも20試合以上出場した選手の中ではチーム3位と好成績で、サイズと屈強なフィジカルを武器にディフェンスでも重要な役割を担ってきた。八村は来シーズン、1830万ドル(約26億3900万円)の契約があり、これはチーム3番目に高額で、サラリーキャップの約12パーセントを占める。選手目線では長期的な安定を求めるのであれば契約延長、より大きな契約を目指すのであればFAとなるが、契約延長については球団側の意向次第といえそうだ。

 残すは、シーズン後半に3&Dとして存在感を示したゲイブ・ビンセント、八村とポジション争いを繰り広げたドリアン・フィニー・スミス、ケガの影響もありトレード後はほとんど出番のなかったマキシ・クレーバーの3選手。『Lakers Nation』のロン・ガッターマンは、この中で最も新契約の可能性が高い選手をフィニー・スミスとし、オプトアウトして新契約を結ぶ路線を有力視。ビンセントは貴重な3&Dとして契約満了まで在籍させる公算で、クレーバーはマーベリックス時代からドンチッチのチームメートということもあり、来季に出場機会を与えて適性を見極める選択肢が現実的としているが、同時にサラリー調整のトレード要員に組み込まれる可能性も高いとの見解を示している。

貢献度の高い八村をトレードせざるを得ない厳しい球団事情

キャリアハイのスタッツを残したリーブス [写真]=Getty Images

 レイカーズが有望なセンターを獲得するためには、それなりの代償を支払わなければならない。しかし、長期的なチームづくりよりもレブロンとの優勝を優先してきた球団には、使用可能な1巡目指名権ひとつと、契約満了となるいくつかの中型契約しか手札が残っておらず、本格的な戦力アップを図るには、貢献度の高い選手を手放さざるを得ない状況にある。

『ClutchPoints』のアンソニー・アーウィン記者によれば、レブロンとドンチッチを動かさないという前提があるレイカーズ内部では、リーブスと八村の処遇についての活発な議論が続いているという。両選手は組織内で高い評価を受ける選手だが、抜本的なテコ入れをするためには、テーブルにどちらかの選手を差し出さなければいけないと考えられているのだ。

 レイカーズは、オーナーのジニー・バス氏のお気に入りとされるリーブスについて、オールスター級の選手との交換でなければトレードに応じない姿勢を示している模様。一方の八村については、交渉の席に乗せる余地を残しているものの、球団内には彼の残留を望む声も根強く存在するという。

 実際に、八村はミネソタ・ティンバーウルブズとのプレーオフ・ファーストラウンドで奮闘し、チームのサイズ不足とフロントコートの層の薄さを補う働きを見せた。レディック監督も八村については公の場で度々言及し、「スモールラインアップの要」や「明確に役割を与えた選手でトップの働きをした」など賛辞を惜しむことはなかった。

 そんなレイカーズがターゲットとする肝心のビッグマンだが、ここ数日、ブルックリン・ネッツのニック・クラクストンの名前が急浮上している。渡邊雄太ともチームメートだったジョージア大学出身のビッグマンは、211センチの長身と長いウイングスパンに加え、縦への機動力と機敏な反射速度を兼ね備えている。また、ペイントエリア内での高いショット成功率や、スイッチディフェンスの対応範囲、パーソナルファウルの少なさなど、クラクストンはレイカーズが求める現代的なビッグマン像に当てはまる。

 現地メディアは、八村とクラクストンのトレードの可能性について取り上げ始めた。もしレイカーズがクラクストンを獲得する場合、球団は八村と2031年のドラフト指名権をセットにし、ダルトン・クネヒトやクレーバーなど、サラリーの均衡が取れるロールプレーヤーをパッケージングする見込み。また、『Fadeaway Sports』のエディー・ビター記者は、ここにデンバー・ナゲッツが加入し、マイケル・ポーターJr.を組み込んだ3球団によるクロストレードを提案している。

FA市場を含め、八村をキープする場合のセンター候補は?

レディックHCの信頼が厚い八村だが… [写真]=Getty Images

 フロントには、八村放出という苦渋の決断を避けるオプションもある。

『The Athletic』のヨハン・ブハ記者は、ドンチッチとプレー経験豊富なダラス・マーベリックスのダニエル・ギャフォードもレイカーズの獲得候補としている。だが、もしギャフォードを獲得するためには、レイカーズには“過払い”が必要になるだろうと予測した。

「相場以上のオファーを覚悟しなければなりません。彼ら(レイカーズ)はおそらく、オーバーペイする必要があるでしょう。具体的には、ゲイブ(・ビンセント)とダルトン(・クネヒト)、1巡目指名権でギャフォードを獲得するような形になるかもしれない。それは(マーベリックスにとって)かなり大きな見返りとなります」

 レイカーズが切実にセンターを必要としている事実は、すでにリーグ全体に知れ渡っているため、質の高いビッグマンを手に入れるためには相場以上の代価を払わざるを得ない。しかし、ギャフォードはドンチッチと並んで効果的にプレーできることを証明しているため、多少の過払いが発生しても、アセットを差し出す価値はあるだろう。

 一方で、トレードを敢行せず、FA市場からビッグマンを確保するという選択肢も十分に検討できるものだ。事実、今夏にはブルック・ロペスクリント・カペラマイルズ・ターナーといった実力派ビッグマンのほか、ケボン・ルーニーアンドレ・ドラモンドディアンドレ・ジョーダンメイソン・プラムリートーマス・ブライアントなど、サラリーキャップの圧迫の少ないプレーヤーたちも、制限なしFAとして来季の所属先を探すこととなる。

 FA市場においては、ヒューストン・ロケッツで存在感を示すスティーブン・アダムスに関心を示している。しかし、ロケッツにとって、アダムスとの再契約は夏の最優先事項のひとつとなっており、交渉は一筋縄でいかないとの見解が強い。

 果たして、レイカーズは最終的にどのビッグマンをロスターに迎え入れるのか。いずれにせよ、今夏のマーケットで八村の名前を目にする機会は増えそうだ。

文=Meiji

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