2025.07.26

レブロンからAI業界に警告…侮辱的なディープフェイク動画の制作者に即時中止の法的文書を送付

自身の肖像を無断で使用したディープフェイク動画に法的措置を講じたレブロン [写真] = Getty Images

 AIの進歩は著しい。その勢いはすでにNBAにも波及しており、一例としてゴールデンステイト・ウォリアーズは、ステフィン・カリーがロボットとシューティング練習する映像を公開し、NBAファイナル期間中に金融サービス企業の「Kalshi」が放送したCMは、AI生成によってわずか2日間で制作されたものだった。

 しかし、すべてがポジティブな導入とは言い難い。テック系メディア『404 Media』の報道によると、レブロン・ジェームズは自身の肖像を無断で使用したディープフェイク動画に法的措置を講じたという。

 レブロンが問題視したのは、ブレインロットAIと呼ばれる一種のインターネットミーム。このバイラル動画群の中ではレブロンが妊娠した姿など、同選手を侮辱するような非現実的なシナリオが大量に拡散されていた。これに対してレブロンは弁護士を通して、ジェネレーティブAIツール「Interlink  AI」とその運営母体であるプラットフォーム「FlickUp」宛に、制作の即時中止を求める警告書を送付した。

 警告を受けた「Interlink AI」は、レブロンからの注意勧告に即座に対応。Discordコミュニティのモデレーターはメンバーに対して、「Interlink  AI」のプラットフォームからすべての実在する人物モデルを削除する決定を通達し、チャンネル内に以下の文章を投稿している。

「この変更は、最も尊敬に値するバスケットボール選手をめぐる法的問題に直面したことを受けて行われたものです。これ以上の混乱を避けるため、積極的なアプローチを取り、すべての実在する肖像をサイトから完全に削除することを決定しました。コンテンツのリアルさを楽しんでいた方々には残念なお知らせかもしれませんが、この変更によりプラットフォームの将来が守られ、我々は一層大きなものの構築に集中できるようになるでしょう」

「FlickUp」の創業者であるジェイソン・スタックス氏も、『404 Media』からの取材に対し、警告書の発行人がレブロンであることを認めている。

レブロン・ジェームズ氏の弁護士から、当社のクリエイターであるInterlink AIに関して、使用停止命令書を受け取りました。Interlinkと共同で、レブロン・ジェームズをはじめとする数名の有名バスケットボール選手をモデルにしたAIモデルのプロモーションを行っておりましたが、差し止め命令を受けてから30分以内に、Interlink AIのソフトウェアからすべての実在する人物データを削除することを決定いたしました。ジェネレーティブAIは、著作権と知的財産権の分野では無法地帯ですが、我々は変化の正しい側に立つ努力をするとお約束します」

 レブロンを題材とした生成AIの映像には、レブロンが妊娠した映像のほか、同選手をホームレスに見立てたり、レブロンがひざまずいて舌を出した動画などが含まれている。

 悪趣味なジョークを超え、本人の名誉とブランドを脅かす合意のないディープフェイクAIだが、今回のレブロンの一件は著名人が正式に動いた最初のケースのひとつであり、業界関係者は今後はプラットフォーム側が事前に実名モデルをブロックする流れが加速するとの見解を示している。

 未だ明確な線引きのない、肖像権と生成AI。レブロンの行動を機に、今後はデジタル表現の自由と肖像権のバランスをどう取るかが国際的なテストケースとして注目されていくだろう。

文=Meiji

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