2025.07.04

初の国際大会での控えの奮闘と収穫を手土産に、福大大濠がインターハイへ挑む

初の国際大会で経験と課題を得た福大大濠 [写真]=NBAライジングスターズ・インビテーショナル
バスケットボールキング編集部

 NBAが主催した「NBAライジングスターズ・インビテーショナル」はアジア太平洋地域の11カ国から高校生チームが集結した大会。今回、初めてシンガポールで開催され、日本からは男子が福岡大学大濠高校(福岡県)、女子が京都精華学園高校(京都府)が出場した。

 男子の部では準決勝で福大大濠を75−65で破った龍山高校(韓国)と、バーウィック大学高校(オーストラリア)を78−68で破った清華大学附属高級中学(中国)が対戦した。

 疲れからかシュートが決まらない清華大附属に対し、前半から60パーセント超える確率で面白いように3ポイントシュートが決めた龍山が前半を62−24で折り返す。後半、このリードを守った龍山が97−48で勝利。初代チャンピオンに輝いた。

優勝した韓国の龍山高校に食らいついた準決勝

片峯コーチは「チーム全体の底上げ」を目標に掲げて大会に臨んだ [写真]=NBAライジングスターズ・インビテーショナル

 改めて福大大濠の準決勝を振り返る。龍山の粘り強いシュートと要所で見せるゾーンディフェンスに対し、福大大濠はマンツーマンとゾーンを織り交ぜるチェンジング・ディフェンスで対応。相手のキーマンを迷わせる場面もあったが、後半は龍山のゾーンがより積極的に仕掛けてきたことにより攻撃が停滞した。

「試合の序盤に喝を入れたら、奮起してくれました」と、片峯聡太コーチが試合後にメディア対応。「この試合のポイントと見ていたチェンジンディフェンスが機能し始めてからは落ち着きを取り戻して、自分たちらしいオフェンスもできた。前半は計算通りでした」

 一進一退の第3クォーターを終えるも、第4クォーターには、「(韓国の)22番の選手が予想以上に駆け引きが上手く、ショートコーナーからの起点もなかなか継続できなかった。うちの遂行力の課題が見えたし、相手の対応力が勝っていたと思います」と振り返った片峯コーチ。福大大濠は惜しくも準決勝で涙をのんだ。

 その一方で、福大大濠のポイントガード、榎木璃旺のプレーには手応えを感じていたという。

結局的にゴールそ目指した榎木 [写真]=NBAライジングスターズ・インビテーショナル

「強気で打ち切ってくれたのは収穫。ゾーン攻略においてはガードのシュート力が重要。シュートを打ち続けるだけでなく、そこから次の展開を準備することが、今後の鍵です。本人にも、チームとしても、それは求めていかないといけない」

控え選手たちの奮闘と評価

 今大会、福大大濠は主力数名が不在という特別な状況でエントリーしている。得点源の一人、本田蕗以が体調不良で欠場、さらに櫻井照大と白谷柱誠ジャックらがU16日本代表の活動に参加しているため、ベストメンバーが組めない中での挑戦となった。片峯コーチは大会前から「勝ち負け以上に、控え選手を含めたチーム全体の底上げ」を目的として位置づけており、実戦経験を通じての成長を注視していた。

 特に先発として出場機会を得た村上敬之丞と栗原咲太郎のハッスルはチームに活力を与えた。

「村上はアグレッシブなドライブが魅力。3ポイントシュートも良かった。ただ、大事な場面でのターンオーバーは反省点。プレータイムを管理しながら、いい部分を生かしていきたい。ドライブに入る強さや意志は素晴らしい。身体能力だけでなく、判断力の向上が今後の鍵になる」

村上(左)は3ポイントシュートでもチームに貢献 [写真]=NBAライジングスターズ・インビテーショナル

「栗原はスリーポイントやランプレーで良い仕事をした。だが、シューターとして出場する以上は、ディフェンスでのハードワークも必須。守備での声出しやポジショニングの徹底も求めたい。そこを伸ばせば間違いなく大きな戦力になる」

課題を与えつつも、片峯コーチは今大会の栗原(左)の成長を評価した [写真]=NBAライジングスターズ・インビテーショナル

 大会の課題だったチーム力アップのキーパーソンだった村上と栗原について、片峯コーチは及第点を与えたと言える。

 しかし、「コミュニケーションが課題」とも語ってくれた。

「プレーのミスはある程度仕方がないが、声をかければ防げるようなケアレスミスは直さないといけない。そこはこの2~3週間で詰めていきたい。彼らなら修正できるはず」

 本田、櫻井、白谷ら主力が不在というハンディキャップを受け止めつつ、その分だけ控え選手たちに責任と経験を与えることができた今大会。片峯コーチが重視したのは「チーム全体の強化」であり、主力不在の中で一人ひとりのプレーを見つめ直す機会となった。控えの選手たちが大舞台でどう振る舞い、どこまで通用するか。コートでの経験は、今後のチーム作りにおいて大きな財産となる。

 普段とは違う国際大会での実戦の中で見えた課題を一つずつクリアにしていくこと、そして個人ではなくチームとしての成長を促すこと。昨年は地元福岡での開催でありながらベスト4で涙を飲んだ福大大濠が、今年のインターハイに向けて、急速に力を蓄えているように見えた。

文=入江美紀雄

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