2024.10.11

富士通の“新しいスパイス”宮下希保…自分らしさ追い求めながら日本一目指す

今季から富士通レッドウェーブに加入した宮下希保[写真]=田島早苗
フリーライター

■富士通へ移籍した理由

「キャリアはあるけれど、富士通では新人なので、みなさんよろしくお願いします」

 10月4日、富士通レッドウェーブはメディア向けの公開練習を行い、練習後にはヘッドコーチと選手数名が個々に順番で囲み取材に応じた。この時、最後だった宮下希保の番になると、BTテーブスヘッドコーチ自らが宮下を伴って取材陣に歩み寄り、上記のように発して場を和ませた。

 オールラウンダーで5月には3x3女子日本代表として「FIBA 3x3 オリンピック最終予選 2024」を戦った宮下は、県立足羽高校(福井県)卒業後にアイシンウィングス(当時はアイシン・エィ・ダブリュ)に入団。1年目から4シーズンを主軸として活躍すると、2021-22シーズンからはトヨタ自動車アンテロープスへ移籍し、3シーズンの在籍でWリーグ優勝も経験した。

 また、3人制のみならず5人制でも日本代表として国際大会の出場経験があり、指揮官の言葉通り、キャリアの豊富な選手だ。そして今シーズンから富士通の一員となったが、すでに2007-08シーズン以来の皇后杯優勝、Wリーグ連覇に向けたチームの即戦力として期待されているのだ。

「自分がステップアップするために同じポジションの選手がいるところに行って、もっともっと学びたいという気持ちがあったので移籍しました。富士通はみんなで守って、みんなで攻めるというバスケット。それは私の好きなバスケットなので富士通に決めました」

 このように移籍の理由を語った宮下は、7月には町田瑠唯宮澤夕貴林咲希の3人が日本代表活動で不在の中、「京王電鉄 presents サマーキャンプ2024 in 武蔵野の森」では得点面などでチームをけん引。パリ2024オリンピックを終えて町田ら3人が合流した直後の「パクシンジャカップ」(韓国開催)、そして9月末のWリーグのチャンピオンとして出場した「FIBA女子バスケットボールリーグアジア2024」(中国開催)でも、攻守とも存在感を存分に発揮した。これには司令塔の町田も「フィットしていると思います」と、コメント。だが一方で、「“合わせよう”が強くなっているのかなと思うので、希保らしさを出したい。合わせと希保が積極的に行くところをうまくバランスとってやっていきたいし、そういう声掛けをしていきたいです」とも発した。

■新たな武器を模索

FIBA女子バスケットボールリーグアジア2024では3位だった富士通[写真]=fiba.basketball

 この町田の言葉を受けて宮下は、「トヨタ自動車は核となる選手がたくさんいる中で、私は合わせるプレーを一番に考えていたのですが、富士通は合わせる選手も多いので、合わせているだけでなく、時には自分で仕掛けるというのはやらないといけないなというのを中国遠征の試合ですごく感じました。中国では最後の試合を3番ポジションで少しやらせてもらったので、そうなると本当にドライブなどが必要になってくる。そこはもっともっとやっていかなくてはいけないなと思います」という。

 これは、サマーキャンプのときから「まだ自分の中でドライブなどに少し怖さがあって挑戦しきれていない。チームの動きの中での自分が行っていいのか、ミスしてしまったらというのがあります」と、宮下自身が課題としていたことでもある。それだけに、町田らが代表活動から戻って戦力がそろった中、今後はシーズンを戦いながらプレーの連携を高めていくことになるだろう。

 それでも、「器用な選手、3ポイントシュートもミドルジャンパードライブもポストもパスも、いろいろと上手です」(町田)、「ディフェンスもオフェンスもアグレッシブにできる選手。頼りにしています」(宮澤)と、すでにチームメートからの信頼は厚い。

 今シーズンは、昨シーズンまで献身的な働きで富士通のWリーグ優勝に貢献した中村優花(昨シーズンをもって引退)が務めていたポジションを担うことが多くなるが、宮澤は「新しいスパイスというか、中村選手にはない宮下選手の良さがある」という。

公開練習後、取材に応じた富士通レッドウェーブ宮下希保[写真]=田島早苗

 宮下はトヨタ自動車時代から体を張ったディフェンスやリバウンドなどを見せていた選手。「昨シーズン、富士通が優勝したのは中村さんのあの泥臭いプレーがあったから。それは試合を見ていても思ったので、中村さんが抜けた分、トヨタ自動車から継続している泥臭いプレーをすること。それにプラスして3ポイントシュートや富士通はカッティングやドライブが多いので、中を開けたり、外から攻撃したりとパターンが増やせるようになればいいなと思います」と、意気込む。

「私自身経験がないわけではないので、(昨シーズンまで)相手として戦って、富士通の嫌なところなどは自分が一番よく分かっているので、そういうこともみんなに伝えられたらいいなと思います」と、宮下。

 富士通の一員としてはじめて臨んだサマーキャンプではファンの声援にも背中を押された。「富士通に入って感じたのは、本当にいい選手ばかり。ファンの方たちが多い理由が分かるなと思いました。私も同じように富士通の選手として見てもらえるように頑張っていきたいです」

 アイシン、トヨタ自動車と2チームでプレーし、実績を重ねてきた。覚悟を持って移った新天地で、10月12日、宮下は自身8年目のシーズン開幕を迎える。

取材・文=田島早苗

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