2025.08.22

八村塁「挑戦する勇気を持ち、自分を信じて」…ファンに託した熱きメッセージ

熱いメッセージを残した八村塁 [写真]=バスケットボールキング
バスケットボールキング編集部

MJが認めた者だけが立てる舞台、ジョーダンブランドの誇り

ジョーダンアスリートとしてのプライドも語った [写真]=バスケットボールキング

 8月22日、東京・渋谷の「World of Flight Tokyo Shibuya」にて開催されたスペシャルトークショーに、八村塁(ロサンゼルス・レイカーズ)が登壇した。「挑戦すること、自分の限界を超えること、そして世界を見据えることの大切さ」をテーマに掲げたこのイベントで、八村はまさにそのテーマを体現する存在として登場。NBAという世界最高峰の舞台で戦い続けるトップアスリートが、集まった中高生や学生アスリートやファンたちに自身の歩みやマインドセット、そしてジョーダンブランドの一員としての誇りを語り、多くの人に勇気と希望を与える力強いメッセージを届けた。

 ジョーダンブランドに加入して7年目を迎える八村は、冒頭で「マイケル・ジョーダン本人が承認しなければファミリーに加わることはできない。僕自身、誇りを持っている」と語り、その特別さを強調した。先月にはギリシャで開催されたブランドのワークショップに参加し、世界中のジョーダンアスリートと交流を深めた。そこでは3日間にわたってジョーダン本人と時間を共にし、「ブランドの名を背負いながらも個性を大切にしてほしい」と繰り返し語りかけられたという。「彼はバスケットボールだけでなく、ファッションやコミュニケーションなど多方面に強い関心を持ち、僕らの意見にも耳を傾けてくれる。本当に大きな存在だと改めて感じた」と振り返り、憧れの存在から直接言葉を受ける重みを噛みしめた。

 話題はNBAでのキャリアへ。2019年にワシントン・ウィザーズからドラフト指名を受けて以降、6シーズンにわたりリーグに在籍してきた八村は「最初に驚いたのはオフコートの重要さだった」と明かす。NBA選手の平均キャリアがわずか4、5年に過ぎない現実を前に「長くプレーを続けるためには体のケア、リカバリー、食事、睡眠といった一見細かな積み重ねが決定的に大きい。試合や練習は1日のうち数時間だが、それ以外の時間をどう使うかが成否を分ける」と強調した。さらに「試合で良いプレーをしても悪いプレーをしても、その瞬間で切り替えることが大事。勝敗や個人の出来を引きずらず、次に進むことがプロフェッショナルとして必要だ」と語り、オンとオフの切り替えの重要性を訴えた。

 レイカーズでの経験については「伝統ある球団に所属するプレッシャーは計り知れない」と打ち明けた。「他のチームで活躍していた選手でも、レイカーズに入ると同じプレーができなくなることは多い。それだけ環境の重みが大きい。残れず去っていく選手も多い中で、自分は今3番目に在籍が長い選手になった。そこに責任と誇りを感じている」と胸の内を明かし、名門のユニフォームに袖を通す意味の重さを噛みしめた。

 続いて、次世代の選手に向けたメッセージも展開。「世界で戦うには英語が一番大事」と断言し、「バスケットは一瞬で意思疎通が求められる競技。英語ができなければ信頼関係を築くのが難しい。僕自身、大学に入ってから苦労した部分でもある」と振り返った。さらに「日本人にはバスケIQや努力を惜しまない姿勢といった強みがある。それは世界でも十分通用する」と力を込め、挑戦する若者たちに自信を持つよう促した。

自身の経験をシェアすることで、子どもたちが夢を持つきっかけに

最後は参加者へ静かに語りかける場面も [写真]=バスケットボールキング

 質疑応答のコーナーでは、参加者から次々と質問が投げかけられた。「感情表現が難しい」と感じている学生には「日本では感情を抑える文化があるけれど、バスケでは楽しむ姿勢が大事。恥ずかしがらずに情熱を出すことで自然に表現できるようになる」とアドバイス。さらに「相手からトラッシュトークを受けても僕は冷静さを貫く。プレーで示すことが一番」と、自身の流儀も明かした。

 また、夏にロサンゼルスのキャンプに参加したという選手から「ボールをもらえず悔しい思いをした」と問われると、「信頼を得るにはコミュニケーションが不可欠。英語で自分を伝え、コート外でも仲間と会話することがパスにつながる」と真剣に応じた。会場の若い選手たちはうなずきながら耳を傾けていた。

 さらに、「自信をなくした時の立て直し方」を問われた際には「失敗した時こそ、自分の何が足りなかったのかを分析すること。嫌なこともバスケのためなら取り組む。失敗を乗り越えた先に強さがある」と強調。別の質問では「日本とアメリカの練習の違い」に触れ、「アメリカは短時間で激しく取り組み、時にはチーム内で本気の衝突もあった。日本の練習は長時間になりがちで効率が課題。質の高さが成長のカギだ」と経験をもとに語った。

 最後の質問では「勉強とバスケの両立」について聞かれ、「僕は勉強が得意ではなかったが、その分バスケに覚悟を持って取り組んだ。嫌なことでもバスケのためならやり抜く姿勢が大事」と答え、覚悟の意味を力強く訴えた。会場の学生たちにとっては忘れられない言葉となったに違いない。

 イベントの締めくくりで、八村は改めて集まった人たちにメッセージを送った。「ジョーダンブランドの一員として日本で特別なトークショーを開けることは大きな喜び。日本のバスケットボールは今、世界と戦うための大事な時期にある。僕自身がここまで歩んできた経験をシェアすることで、子どもたちが夢を持つきっかけになり、大人の皆さんも新しいモチベーションを得てもらえたらうれしい」と熱を込めた。そして「挑戦する勇気を持ち、自分を信じて努力を続けてほしい。僕も日本のバスケを世界に広げるために戦い続ける」と力強く締めくくり、会場は大きな拍手に包まれた。

文=入江美紀雄

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