ファンの声援に「ホームを感じた」小酒部泰暉…TOYOTA ARENA TOKYOで語る今季の決意

　9月20日、TOYOTA ARENA TOKYOで行われた長崎ヴェルカとのプレシーズンゲーム後、アルバルク東京の小酒部泰暉が試合後のメディア対応に臨み、試合の課題やアリーナでの手応え、そして今シーズンに懸ける思いを語った。

　この日、アルバルク東京は立ち上がりに9−2とリードを奪ったものの、長崎の粘り強いディフェンスを前に失速。一時はリードを奪われる展開となったが、最終的には59－55で競り勝った。小酒部は試合内容を振り返り、「入りの部分ではいい形で入れたが、9点目を取った後にオフェンスに意識が傾き、ディフェンスが緩んでしまった。1対1でやられる場面が多く、そこからキックアウトを許し、相手のやりたいことをさせてしまったのが課題だった」と率直に語った。それでも「最後はしっかりと締めることができたのは良かった」と手応えも感じ取っていた。

　新アリーナについて問われると、表情をほころばせながら「今まで以上にホームを感じた。自分たちのアリーナがやっとできて、ここで試合ができる喜びは大きい。試合前からワクワクしていたし、ファンの声援もすごく耳に届いて、本当に嬉しかった」と語り、クラブにとって大きな節目となる環境整備の効果を実感していた。

　また、練習環境と試合会場が一体となったことについても触れた。「今までは代々木（国立代々木競技場第一体育館）や（アリーナ）立川立飛など、さまざまな会場を転々としていた。けれど、ここでは練習も試合も同じアリーナでできる。前日練習もできるので、感覚的な部分を常に準備できるのは大きい。これは他のチームにはなかなかない環境だと思うし、本当に恵まれている」と強調。新アリーナがもたらす「ホームアドバンテージ」を強く感じていると明かした。

　また、「アップのときからライブ会場のような雰囲気で、自分たちのホームだと実感した。アウェーの会場にも素晴らしい環境は多いが、自分たちの場所で同じ雰囲気を味わえるのは特別」と話し、感慨深げに振り返った。

　さらに、アリーナの設備についても言及。「一度でいいから観客として試合を見てみたい。コートサイドでお酒を飲みながら観戦できたら、絶対に楽しいと思う」と笑顔を見せ、選手としてだけでなくファン目線からも新アリーナの魅力を語った。

　今シーズンの目標については「もちろん優勝を常に意識している。シーズン中には自分が調子に乗れないときもあるだろうが、そのときは割り切ってチームのためにできることをやっていきたい。自分を犠牲にしてでもチームに貢献すれば、勝利はついてくると思う」と語った。また、昨シーズンからの課題についても「オフェンスの積極性をもっと出していかなければならないし、それを継続することが大事。ディフェンスは一番信頼されている部分なので、そこは常にやり続けたい」と具体的に述べた。

　新加入のマーカス・フォスターについては「得点力とクリエイト能力がすごい。見ているこちらが驚くほど」と絶賛。「相手チームは必ず彼を止めようとしてくる。その中で彼を活かしながら、自分もサポートできれば」と新戦力との連携に意欲を見せた。さらに「試合中は常にコミュニケーションを取るようにしている。いい時も悪い時も、コートに立つ5人で確認を重ねることで次につながる」と、フォスターを含むチーム全体での意思疎通の重要性も強調した。

　今シーズンのBリーグ全体については「年々レベルが上がっていて、優勝は一筋縄ではいかない。質の高い外国籍選手やコーチが次々と加入している中で、ただ口にするだけでは優勝できない。試合を重ねる中で足りない部分を見つけ、打開策を探していかなければならない」と危機感をにじませつつ、「その中で戦えるのは楽しい」と意欲を示した。「一試合一試合勝つのが本当に難しくなっている」と実感を語りつつも、挑戦を楽しむ姿勢を崩さなかった。

　クラブハウスや食事環境についても質問が及ぶと「食事はグレードアップした。栄養や塩分の面で変化を感じている。今までも美味しかったが、さらに良くなった」と笑顔を見せた。また「（アリーナの外にある）スポーツコートやアリーナ内の売店も見に行った。観客目線で楽しめる施設が多い」と話し、選手としてだけでなく一人のバスケットボールファンとしても新アリーナを堪能している様子をのぞかせた。

　TOYOTA ARENA TOKYOという新たな舞台で迎えるシーズン。小酒部は「優勝」を目標に掲げつつ、個人としても攻守両面での成長を誓う。選手として、そしてファンの視点も持つ存在として、クラブの未来を担う姿が期待される。

文＝入江美紀雄