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福大大濠が盤石の初戦突破…片峯コーチが説く「高い基準」と榎木キャプテンが語る『OUR TURN』の覚悟

2連覇を目指すウインターカップの初戦の臨む榎木璃旺 [写真]=SoftBank ウインターカップ2025
バスケットボールキング編集部

 12月23日、高校バスケの真の日本一を決める「SoftBank ウインターカップ2025 令和7年度 第78回全国高等学校バスケットボール選手権大会」が開幕。京王アリーナTOKYOで行われた男子1回戦には、連覇を目指す前回王者・福岡大学附属大濠高校(福岡県)が登場。報徳学園高校(兵庫県)を84−41で下し、盤石のスタートを切った。

 試合は重いスタートとなったものの、福大大濠のインテンシティの高いディフェンスに報徳学園の得点が伸びず、それに呼応するようにシュートが決まるようになり、前半だけで42−16と大量リードを奪った。後半も「誰が出ても強度が落ちない」と片峯聡太コーチが自信を持つ11人のローテーションで相手を圧倒。本田の14得点を筆頭に、計5名が2ケタ得点を挙げる隙のないバスケットを展開した。

 試合後のメディア対応で、片峯コーチはディフェンス面について「終始強度高く、自分たちのやるべきことをしっかり遂行してくれた」と評価。しかし一方で、オフェンス、そして選手たちの「メンタリティ」に厳しい注文をつけた。

「初戦特有の硬さがあったとはいえ、オフェンスは重かった。何より今日一番納得がいかなかったのは、序盤に本田がバスケットカウントを決めたときに派手な雄叫びを上げた場面です。私は彼に『何、そんな安いプレーで満足しているんだ』と言いました。勝負を決める一本や、歴史を変えるようなプレーなら分かります。しかし、あそこで満足して自分に酔ってしまうようではいけない。その後の彼のプレーが停滞したのも、あの一本で一安心し、満足してしまったからではないかと思っています」

 勝利そのものよりも、目指すべき頂から逆算した「大濠の選手としての基準」を求める。初戦の採点についても「50点か60点くらい」と決して高くはなかった。

「報徳さんは非常にコントロールが上手いチーム。一歩間違えればもっと競った展開になっていた可能性もあります。我々は今回、11人のローテーションで戦っていますが、これは2分、3分で次々とメンバーを入れ替えることで、常に100パーセントの強度を相手にぶつけ続けるためです。シュートの確率が落ちたり、ミスが出たりするリスクはありますが、それを回数と強度でカバーし、相手のエラーを誘う。今日、途中から入った中村(文哉)が3ポイントを決めて流れを作ったように、誰が出ても自分たちのバスケットを遂行することが大事です。優勝するには、まだまだやるべきことがたくさんあります」

 指揮官の求める高い要求に対し、コート上で誰よりも声を出し、背中で引っ張るのがゲームキャプテンの榎木璃旺(3年)だ。この試合、榎木は6得点4アシスト2スティールという数字以上の存在感を放った。

「チームのウェアにも入っていますが、今年は『OUR TURN(自分たちの番だ)』という言葉を掲げています。これはジョーダン(ブランド)さんと一緒に考えた言葉です。昨年優勝しましたが、今年はインターハイでも(ウインターカップ福岡)県予選でも負けて、悔しさを味わってきました。もう一度チャレンジャーの精神で、『次は自分たちの番だ』という強い意志を持ってこのコートに立っています」

 榎木が語る「OUR TURN」という覚悟の裏には、ある大きな転換点があった。11月の福岡県予選でライバル・福岡第一高校に敗れた直後、主力の3年生はU18日清食品トップリーグの遠征に参加できなかった。

「先生からそう言われたときはショックもありましたが、客観的に自分たちの立ち位置を見つめ直す機会になりました。それまでは、試合に出ること、この舞台に立つことをどこか当たり前のように感じていたのかもしれません。外から試合を見て、下級生が必死に戦う姿を見て、自分たちに足りないのは泥臭いコミュニケーションや、一戦に懸ける執念だと気づきました」

 片峯コーチのショック療法でチームが変わるきっかけになったのかもしれない。3年生が合流したU18日清食品トップリーグの最終戦で、ウインターカップの県予選の決勝で敗れた福岡第一に97−48で完勝。大差での勝利となったが、何より印象的だったのが個々の選手のディフェンスに対する意識の高さ。強度の高いディフェンスで福岡第一のオフェンスを完全に制圧した。
は、個の力以上に「集団としての強さ」に磨きがかかっている。

 24日の休息日を経て、2回戦は12月25日、羽黒高校(山形県)と対戦する。同校初のウインターカップ連覇に向けて、着実にその一歩を踏み出した。

文=入江美紀雄

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