2021.06.26
チームは4月25日から5月11日まで4都府県で緊急事態宣言の期間に入ることに伴い、この日の秋田戦が有観客試合での今シーズンホーム最終戦になった。開催前日の23日に急きょ発表されたわけであるが、この大事な一戦で田中は約20分の出場時間で3ポイント2本を含む14得点をマーク。奇しくも27日に発表された個人通算4000得点を達成した一戦にもなった。振り返れば2月27日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦で負傷し、右下腿(ヒラメ筋)筋損傷で戦線離脱を余儀なくされたわけであるが、4月14日のレバンガ北海道戦で復帰し、4試合目にしてようやく本来の姿が垣間見えたのである。復帰後初の3ポイントを決め、最多11本のフィールドゴールをアテンプがあったようにリングへ向かう力強いドライブが、それを強く印象づけた。
そしてルカ・パヴィチェヴィッチヘッドコーチも「まだケガから復帰してパフォーマンスが100パーセントではありません」としながらも「田中大貴らしいプレーが見えてきました」と、彼の復調を感じ取っていた。さらにチャンピオンシップ進出に向けた大事な時期に約2カ月も試合から離れた彼の心中をこう察している。
「リハビリ中も彼は今シーズン悩んだので、なるべく早く100パーセントの力に戻ってほしいと思っています。チームにケガで迷惑をかけていることは、本人が一番知っていることでしょう。(復帰後も)プレータイムの制限がある中で、試合に入ってもいつものプレーでリズムが作れず、本人にとっても厳しく、(自分の体に)アジャストする必要があったと思います」
一方で田中自身も14得点を記録した試合後、現在の状況について「徐々にコーチやトレーナーと相談をして少しずつプレータイムを増やしていこうと話をしています」と明かし、次のように続けた。
「自分も2カ月近く試合に出ていなかったので(良いパフォーマンスを出すことは)なかなか難しいのですが、シーズンだけではなくて先のことも見越して徐々に状態を上げていく必要もあります。試合の強度に慣れていくも、そのひとつです。復帰して4試合目で体の調子がいつもと同じではありませんが、コンディションがどんどん良くなっていることでプレーにもそのまま反映されていると思います」
彼の言葉からは悩みつつも、一歩ずつ前進している様子が感じ取れる。無理は禁物であるが、コンディションに比例し、プレーで目に見えた結果が生まれることは、田中にとって収穫だろう。目下のCS進出に向けた戦いは自力進出の可能性が無く厳しさを増すが、彼の復調はチームにとって心強い。本人も「自分たちがどういうバスケットボールをやるのか。どのレベルでバスケットボールをやるのか。チームとしても個人としても最後までやり続けていく必要がある」としている。ルカHCが掲げてきた「強度の高いディフェンスでアグレッシブにタフにプレーする」「相手のディフェンスを読みながらスマートにプレーをする」というチームのスタンダードを体現する姿を残り試合でも見せてくれるはずだ。
さらに詳しく触れることはなかったが、「先のことも見越して」という言葉からは開催が予定される東京オリンピックの代表活動も視野に入っていることを感じさせた。Bリーグのシーズン終了後には本格化するだけに、田中大貴がベストに戻っていく過程は、アルバルクの勝利、そしてオリンピックで飛躍を狙う日本代表へ貢献すること、すべてがつながっている。
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