2024.10.11
社会的責任活動「B.LEAGUE Hope(B.Hope)」では横浜アリーナで開催された「日本生命 B.LEAGUE FINALS 2023-24」にて令和6年能登半島地震復興支援活動「With 能登」として被災地の子どもたちを招待。バスケットボールクリニック、メインコートでの紅白戦に参加しました。今回は子どもたちを指導した横浜ビー・コルセアーズの森井健太選手にお話をうかがいました。※本インタビューはB.LEAGUE HOPE(https://www.bleague.jp/b-hope/about/)に掲載された記事を転載したものです。
【インタビュー対象者】
森井健太選手
ーー2023年最後のホームゲームを終えた翌日、2024年1月1日に最大震度7の能登半島地震が発生しました。当時はどこで何をしていましたか?
森井)初詣から家に帰ろうとした時、すごい数の連絡が届き、スマートフォンを見たら「石川は大丈夫?」と。ニュースを見て、地元で地震が発生したことを知りました。本当に現実の出来事ではないようでしたし、衝撃的なことでした。母親からは泣きながら電話が掛かってきました。実家は野々市市といって金沢市寄りなので、震源地の能登からは少し離れていますけど、祖父母は震源地から近い場所に住んでいます。最初はなかなか連絡が取れず心配でしたが、無事が確認された時はすごくホッとしました。
ーー1月1日以降も余震が続き、落ち着いたと思ったら6月3日に再び震度5強の揺れが観測されました。
森井)半年が経とうとしていますけど、本当に気が気じゃないというか。能登地方に住む方々は「1カ月くらいは毎日のように余震が発生した」と言っていました。そのような状況でずっと過ごしていたと思います。ファイナルに来てくれた子どもたちも大きな被害を受けたと思います。不安な日々を過ごしていたなか、僕自身が何かできることはないか考えていました。今回のB.Hopeの活動は本当にいい機会をいただけたと思っています。
ーーB.Hope ACTION参加のオファーを受けた時の感想を聞かせてください。
森井)本当に素晴らしい機会を作っていただいたと思いました。対象が奥能登の子どもたちだと聞いて、本当に会うのが楽しみでしたし、また一緒にバスケットボールをプレーできるのはすごくうれしかったです。ニュースなどで被災地の映像が出ると、大丈夫かなという心配な気持ちでいっぱいでした。そういった意味でも純粋に参加したいと思っていました。
ーー参加前にコーチ陣と話していたことはありますか?
森井)クリニックの内容は基本的にコーチが考えてくれました。僕たち選手は子どもたちと多く触れ合って、コミュニケーションを取れるように意識しました。クリニックや試合では子どもたちとハイタッチしたり、一緒に喜び合ったり。あの舞台でプレーする機会はなかなかないですし、楽しもうと伝えていたので、すごくいい2日間になったと思います。
ーー子どもたちとの会話はどのような話題でしたか?
森井)「大きくなったね」とかですね。今回参加した子どもたちとはもともと交流があって、小学生の頃から見ている子どもたちなので、その成長を見られたのが何よりうれしかったです。笑えるような環境ではなかったと聞いていたので、純粋に楽しんだり、喜んだりする顔を見られて、逆に自分たちがパワーをもらいました。「どうやったらチームをまとめられますか?」とか、「どうやったらうまくなりますか?」と聞いてくれた子もいました。いろいろと考えて、行動に移そうとしている姿も見られました。バスケットボールのスキルだけではなく、人として考えることを体現していたので、すごく成長を感じられました。
ーー所属する横浜ビー・コルセアーズは1月、2月のホームゲームで災害支援金の募金活動を実施しました。
森井)僕も募金活動に参加しました。シーズン中ということもあり、自分が被災地に出向くことはできませんでしたが、オフ期間の7月には石川県バスケットボール協会の方と協力して、チャリティーイベントを開催する予定です。子どもたちに対し、バスケットボールを楽しくプレーする機会を作っていきたいと思っています。今年だけではなく、継続的に行うことが大事だと思っているので、今後も続けていきたいです。
ーー以前から珠洲市でバスケットボール教室を定期的に開催しているようですね。始めた時期やきっかけを聞かせてください。
森井)ルーキーイヤーを終えた時のオフ期間に始めました。祖母が珠洲近辺に住んでいたこと、昔からお世話になっているトレーナーの方が珠洲に住んでいることもあり、挨拶に行った時に「地元の子どもたちに対して何かできないか?」と相談を受けました。そこで地元の小中学生を集め、バスケットボールに触れ合う機会を作ることにしました。5、6年は続いていて、先日のファイナルに来た中学生は小学生の頃から交流しています。僕自身としては小学生の頃から知っている彼らの成長を見られてうれしかったですし、あの舞台で楽しそうにバスケットボールをプレーできる彼らの喜びを肌で感じました。すごくいい経験になりました。
ーーバスケットボール教室にはどれくらいの子どもたちが参加されるんですか?
森井)あの地域にはミニバスのチームが3つあって、小学生だけでも男女合わせて50人から60人ほどです。中学生も含めて100人以上は来てくれますよ。毎年会うような関係なので、年を重ねるごとに彼らの成長を見られると同時に、僕自身も1年を見つめ直すいい機会です。バスケットボールを教える勉強にもなりますし、子どもたちと接することで元気やパワーをもらっています。
ーー若い時からバスケットボール教室を開催する選手は珍しいと思います。
森井)選手キャリアを終えたあともバスケットボールに関わっていたいと思っています。現時点での指導レベルは高くないと思いますけど、自分自身が成長する場というか、教えることに対して勉強する場でもあります。現役の今だからできることは多くありますし、子どもたちの刺激にもなってほしいという思いから続けています。
奥能登で取り組むのにも意味があります。ほかの地域と比べると、指導の環境やバスケットボールをプレーする環境が十分に整っているとは言えません。何か少しでも与えられるものがあればいいと思い、継続的に行うようにしています。
ーー幼少期、トップの選手からバスケットボールを教わる機会はありましたか?
森井)小学生の頃、現在は川崎ブレイブサンダースでゼネラルマネージャーを務める北卓也さんが地元石川県の子どもたちを対象にクリニックを実施してくれました。日本を代表するような選手が来てくれて、すごく刺激を受けました。また、中学校の先輩で、三遠ネオフェニックスヘッドコーチの大野篤史さんが練習に来て、アドバイスをくれたこともありました。自分自身が高いレベルを目指すにあたって、すごく刺激になりました。今度は僕がそういった立場の人間になれればいいですね。
ーー6月中旬には被災地復興イベントに参加し、実際に現地へ行くようですね。
森井)現役選手だからできる活動は多くあると思っています。バスケットボールを楽しむのが大事です。震災後は避難所として使われた体育館があって、気軽にバスケットボールをプレーできるのが当たり前ではなくなってしまいました。そういった環境にいた子どもたちに楽しんでもらい、夢や勇気を与えられるような活動をオフシーズンに取り組んでいきたいです。また、シーズン中も自分が頑張って活躍することで、石川県の子どもたちに希望や元気を与えていきたいです。この環境が当たり前ではないことを肝に銘じて、今後も頑張っていきたいです。
ーー社会的責任活動に取り組む意義についてはどのように感じていますか?
森井)プロバスケットボール選手だからこそできることがあると思います。石川県出身選手としてコート上で活躍する姿を見せるのが大事ですし、自分自身も心掛けている部分です。オフコートでは子どもたちに夢や勇気を与えられるように、社会的責任活動にも取り組まなければいけないと自覚しています。今年だけではなく、何年間も継続することに意味があると思うので、今後も続けていきたいです。
ーー話は少し変わりますが、先日はオフコート活動の一環として小田原市の田植え体験にも2年連続で参加しました。
森井)クラブのトップパートナーでもあるウエインズトヨタ神奈川さまの社内イベントで、社員やそのご家族の皆さんと一緒に田植えを体験しました。自分は小さい頃、祖母の農作業を手伝った経験があります。今の生活では、自然に触れ合う機会はなかなかありません。また、田植えをしながら、参加者の皆さんと何気ない会話や交流をするのも普段はできないことです。農業を仕事にする人が減っているということも聞きました。この活動をきっかけに興味を持ってくれる方がいたらうれしいですし、こういう取り組みもすごく大事だと思いました。
ーー今後、取り組んでいきたいことはありますか?
森井)自分が今までのキャリアで培ってきたスキル、学んできた考え方を子どもたちへ伝えること。バスケットボールをより好きになったり、バスケットボールをプレーしたいという子どもが増えるような活動に取り組んでいくのはすごく大切なことです。バスケットボールという分野にとらわれることなく、いろいろな競技の方と協力して、スポーツ全体を盛り上げるような活動は、地元はもちろん、神奈川県、横浜においてもやっていきたいですね。
ーー地域における盛り上がりも感じていると思います。
森井)在籍5シーズン目を迎えますけど、加入当初に比べると、アリーナは毎試合のように満員になっています。その環境で応援してもらえるのは、本当に素晴らしいことだと思っています。何より、ビーコルの知名度がどんどん上がっていると感じます。地域の方々により応援されるチームになっていくため、皆さんの役に立つため、コート内外で自分たちができることに取り組んでいきたいです。
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