2022.11.21
トム・ホーバスヘッドコーチ新体制において、数少ない東京オリンピック経験者として存在感を発揮している張本天傑。「FIBAアジアカップ2022」ではオーストラリア戦でダンク、イラン戦でブロックショットと豪快なプレーでチームにエナジーを与えただけでなく、オフコートでも”特技“を発揮し、ムードメーカーとして若いチームをけん引した。
頼りになるベテランは、約1カ月の代表合宿で何を得て、新シーズンに向けて何を持ち帰ってきたのだろうか。
インタビュー・文=山田智子
――アジアカップを通じて、トム・ホーバスHCの目指すスタイルが浸透してきているのを感じました。チームの成長をどのように実感していますか。
張本 僕が代表に参加するのは去年の(ワールドカップ予選) Window1以来で、その時とは少し違うシステムだったので、最初はそれに対応するのに時間がかかった部分がありました。オーストラリアでの(ワールドカップ予選)2試合では、相手のスイッチディフェンスに僕らのオフェンスのシステムが追いついていない状態だったので、そこを合宿でずっと取り組んでジャカルタに入りました。
アジアカップは(渡邊)雄太と(富樫)勇樹が加わったことによって、さらにチームのシステムを広げられましたし、スイッチディフェンスに対抗する新しいシステムを入れることで良いシュートセレクションにつなげることができました。ベテランとフレッシュな選手のバランスもすごく良かったですし、試合を重ねるごとに全員が自分の役割を明確に遂行できて、チームとしての成長を感じました。
――張本選手はどのような役割を求められていたのですか。
張本 全員に言えることですけど、3ポイントシュートを中心にしたシステムなので、まずはシュートを打つことですね。その中で、このチームには自分よりも良いシューターがたくさんいるので、彼らのためにチャンスを作ることが自分の役割だと考えています。
あとは、ベテラン選手としてチームのムードを作ること、インサイドのディフェンスで身体を張って苦しい時にチームを助けること。あまり目立たないことですが、自分にしかできない役割だと思っています。
――フィジカルの強さは張本選手の持ち味でもあります。アジアの強豪チームに対してフィジカル面での戦いはどうでしたか。
張本 Bリーグでも外国籍選手とマッチアップすることが多いので、アジアではフィジカルの部分で自分が負けると感じることはほとんどありませんし、手応えを感じています。高さに関しては、全員でコミュニケーションを取ってカバーし合うことが大事だと考えています。
――準々決勝オーストラリア戦ではダンクシュートも決めました。
張本 あのダンクは、自分でもちょっとびっくりしました。
――びっくり、ですか?
張本 東京オリンピックの前からずっと休みがなかったこともあって、ヒザの調子が万全ではなかったので、シーズン中もダンクはしばらくしていませんでした。でも、(オフに)少し休養をもらってだいぶ調子が良くなったので、(今回の代表合宿では)練習でもガンガンダンクをしていたんです。
あの場面はフリーだったのでシュートに行ったのですが、体が勝手に動いたような感じで。自分でもダンクした後にびっくりして、「あれ、ヤバい。ダンクした!」って(笑)。だから(吠えるまでに)結構時間があったんですよね。少しの間自分で(プレーを)振り返って、「うわー!!」ってなっていました。
――アジアカップでは若手の活躍が目立ちました。ベテラン選手として意識したことはありますか。
張本 僕は国際経験が多いほうなので、これまで経験してきたことを若手に引き継ぐということを意識していました。それは代表の伝統の一つですし、しっかりと表現できたと感じています。
特に今回は吉井(裕鷹/アルバルク東京)とはポジションが被っていたので、ビッグマンの守り方など、練習中からお互いに話し合ってやっていました。若い時はどうしてもむしゃらに頑張ってしまうところがあるんですけど、それでは限界がある。要領良くというか、自分がマッチアップする相手を観察して、試合が始まったらなるべく早く相手の特徴を見極めることが大事になるので、そういう部分を伝えました。
――吉井選手から、張本選手がムードメーカーとしてチームを鼓舞していたと聞きました。
張本 このチームは本当に若い選手が多くて、みんな真面目なんです。試合前は余裕がないので、緊張をほぐそうと心がけました。
試合の60分前になると、ロッカールームで音楽を流しながらストレッチをしたりして各々で集中力を高めるのですが、そこで自分がダンスをしたり、特に吉井が緊張していたら目の前でダンスをしたり、からかったりというのは毎試合していました。トムさんにまで「今日は踊らないの?」と言われて、「もう踊りましたよ」ってこともありましたね。
みんなすごく仲が良かったですし、今までの代表にはない雰囲気があって、とてもやり易かったです。
――今までにない雰囲気、というのは?
張本 なんて言えばいいのか……。これまでは自分が若手の立場だったのですが、今のチームは本当に若い選手が多いので、見守っている感があるというか。だって、河村(勇輝/横浜ビー・コルセアーズ)とかめちゃくちゃ若いじゃないですか。でもいい意味で先輩を敬っている感じでもないですし(笑)、僕も若い頃は同じようなタイプだったので、やり易かったですね。
――今後に向けた課題を教えてください。
張本 チームとしての課題はディフェンスですね。オフェンスはある程度システムが出来つつあるので、そこを磨いていけばさらに(シュート)確率は上がると思います。ディフェンスに関しては、今回はアジアのチームとの対戦だったので対応できた部分がありました。
僕たちの目標は来年のワールドカップなので、世界レベルで戦うためにはもう一段階では足りなくて、もう二段階、三段階レベルを上げなければいけない。国際試合でしか経験できない部分もあるので、アジアカップは若手選手にとって良い機会になったと思います。
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