2025.10.16
「2030年までにNBA選手5人輩出」を目指し、Bリーグがこの夏、本格的に動き出した。
出場希望選手の中から選ばれた選抜チーム「B.LEAGUE UNITED」を結成。6月28日~29日に群馬県の「オープンハウスアリーナ太田」でオーストラリアNBL選抜チーム「NBL SELECT」と2試合を行った。そしてアメリカネバダ州ラスベガスに移動。同地ではNBAサマーリーグに出場するトロント・ラプターズ、ヒューストン・ロケッツ、デンバー・ナゲッツ、ポートランド・トレイルブレイザーズの4チームと練習試合をするという貴重な経験を得た。結果的には4戦とも敗戦となったが、中村拓人(群馬クレインサンダーズ)が「実際にプレーして、日本ではなかなか感じられないインテンシティを感じましたし、ペースは全く違った。いいも悪いも日本に帰ったら、チームに還元できればいいなと思います」と話したようにオフを返上して自らの向上を目指し参加した選手たちにとって、大きな学びを得た4試合となった。
初戦のラプターズ戦では、全員が手を抜くことのない強力ディフェンスに遭った。それでも第4クォーターには17-8と意地を見せ63-79と16点差での敗戦。負け試合で満足することこそなかったが、世界最高峰のNBAでいずれプレーすることを期待される選手たち相手の初戦で、今まで気づかなかった課題を突きつけられたことに選手たちはむしろ悦びを感じた様子だった。日本人最年長の今村佳太(名古屋ダイヤモンドドルフィンズ)は「こんな強度でNBAのサマーリーグの選手たちとやれるなんて、一生にあるかないかだと思いますし、これがスタンダードになっていったらすごいことだと思います」と目を輝かせ、「この強度を経験した選手たちは、それが自分のものになるために努力すれば、すごく(伸びる)。もう全員が参加すべきなのかなというふうに僕は思っています」。さらに「試合している時からずっと楽しかったので。もう笑っちゃうぐらい(笑)『うわ、通用しねえなあ』って思う時もあるし、『全然通用しねえわ』っていう時もあるし、うまくいった時の気持ち良さもある。でも課題しか出てこないのが面白いですね。やりがいがあります」と声を弾ませた。また、中村は「やられまくりましたし、そこはバスケットボールプレーヤーとして非常に悔しい部分ではありましたが、これから自分のバスケットボールキャリアにおいて貪欲にバスケットールをうまくなっていきたいと改めて感じることができました」と心を新たにした。

日本人最年長29歳でB.LEAGUE UNITEDに名を連ねた今村[写真]=B.LEAGUE
有望選手に国際経験を積む機会を提供するというこの取り組みを実現させたBリーグ執行役員国際事業グループの岡本直也氏は、同トレイルブレイザーズ戦後、「今日、今村選手がドライブからシュートを決めていました。たぶん初日はできていませんでした。(相手の)スピードとインテンシティに圧倒されて、なかなかやれていなかったのですが、やはり慣れてきているんだろうなと。僕の個人的な意見ですけど、すごく良かったなと思いますね。あと淺野ケニー選手(群馬)もすごくハッスルして、アンドワンまで取りました。彼は今日、全て出しきるという気持ちでコートに出たそうです」。さらに「トロイ・マーフィージュニア選手(サンロッカーズ渋谷)は今日すごいのがありました。アリウープで片手で飛び込んできて、そのまま叩き込んだんです。(見に来ていた)コーチらから『すごいポテンシャルがあるから、JRスミスみたいになれ』と言われていました(笑)。シュートも入りだして、自信も増して、1試合目より2試合目、2試合目より3試合目(と向上し)、今日は2桁得点(10得点)でした。加藤嵩都選手(名古屋D)もすごく良かったです。ディフェンスもすごかったし、昨日(のナゲッツ戦)でしたか、彼のプレッシャーに相手がイラついてました。彼のことを突き飛ばしたりして、すごくイラついていましたね」と選手各々の短期間での成長を喜んだ。
オフ日にはサマーリーグの観戦をしてさらにモチベーションを高めた。特に自らも初戦で戦ったラプターズと河村勇輝がロスター入りするシカゴ・ブルズとの対戦を見て、今村は「あれだけ点差が離れても強度が落ちずにやり続けられる(ラプターズの)姿勢。僕たちとやった時も同じような強度でやってくれたので、そういうマインドだったり、インテンシティだったり、遂行力だったりというのは、どのBリーグのチームも学ばなきゃいけない部分」と話し、「NBAのサマーリーグでやるチームでも30ターンオーバーぐらい(ブルズは34ターンオーバー)していたので、『僕らも頑張ってたんだなぁ』っていうのは、少し思いました。本番の試合と、僕たちとの練習試合では強度が全然違うと思いますが、それでも戦い方だったり、しっかり考えることができれば、通用する部分もあるんだというのは、やってみてもそうだし、見てもすごく感じるところは大きかったです」と手応えを口にした。

B.LEAGUE UNTIEDの一員として多くの刺激を受けた中村[写真]=B.LEAGUE
またアンダーカテゴリーで河村ともに日本代表としてプレーし、中部大学第一高校2年時にはウィンターカップの準々決勝、3年時には決勝で河村の福岡第一高校に敗れた中村は、サマーリーグの舞台で奮闘する元ライバルを見て、「やっぱりファンタジスタですね。パスだったり、あのレベルの中でああいった素晴らしいプレーができるというのは、本当に僕自身も見習いたいと思いますし、見ていて少しこうファンというか、楽しませてもらいました。僕自身もレベルアップしたいと改めて思いました」と意欲を掻き立てた。このラスベガスでの4戦で頭角を現した加藤が「ゆくゆくは海外でプレーしたいという気持ちがあります」と話していたが、中村も「具体的にはまだ曇っている部分はあるんですけど」としながらも「海外の選手たちとやっていくことによって、自分のバスケットボールプレーヤーとしてのレベルは確実に上がっていくと思う。アメリカだけではなく広い視野を持って、いろんなところでやれたらなと思っています」と希望を抱いている。「(河村は)高校の時から知っているプレーヤーなので、そういった意味でも、本当に彼が目指しているところだとか、彼のプレーは素晴らしいものがあると改めて思いますし、それに加えて富永啓生選手(6月にレバンガ北海道と契約/サマーリーグではインディアナ・ペイサーズでプレー)もそうですけど、同世代に負けたくないという気持ちは僕自身もあるので、自分の置かれている環境だとか立場で、その場でしっかりと結果を出して頑張りたい」と同世代の挑戦に刺激を受けている。
実際、自らも日本を飛び出し、海外を経験することで今の立場にいる河村と富永もBリーグが立ち上がったこの取り組みを前向きにとらえている。

今夏も猛アピールが実りシカゴ・ブルズと2Way契約を結んだ河村勇輝[写真]=Getty Images
また富永も「間違いなく、日本のバスケットボールのレベルアップにつながるすごくいい機会だと思います。(NBAサマーリーグに出場するような)若手の有望選手とBリーグの選手が対戦するというような機会はなかなかないと思うので、これからの日本のバスケの発展のためにもすごく大事なこと。日本は日本ですごくいいバスケットをしますが、もっと視野を広げ世界を見ることによって、個人としても日本のバスケとしても幅が広がり、大きな成長になると思うので、すごく大事なことだと思っています」と話す。
群馬での試合の3日前に集合した寄せ集めの即席チームを見事にまとめ、個々の良さを引き出し、奮起させてきた水野宏太ヘッドコーチ(シーホース三河)は、「普段突き詰めてやることによって、高みを目指さなきゃいけないということは、僕たちがもらえた課題なのかなと思います。ここで得た経験というものをどう(今後に)つなげていくのか。こういうところに来ないと得られない経験をすることによってできる成長というのはすごくある」と、これをいい経験だけで終わらせてはいけないことを主張した。

オフ返上で渡米したB.LEAGUE UNITED[写真]=B.LEAGUE
NBL SELECTと対戦した2試合とラスベガスでの4試合。これらの試合とその間のすべての体験をB.LEAGUE UNITEDのメンバーは、どのように開花させるのか。新シーズンの姿を楽しみにしたい。
文=山脇明子
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