2024.06.19

渋谷にNBAレジェンド上陸…レイ・アレンが河村勇輝や少年少女に伝えた“大事なこと”

レイ・アレンが渋谷でNBAファンや少年少女と触れ合った[写真]=NBA
フリーライター

河村勇輝がレジェンドに質問

 6月15日と16日に渋谷で「NBAフェスin Japan 2024」が開催された。初日は2023-24シーズンの頂上決戦「NBAファイナル2024」第4戦、ボストン・セルティックスvsダラス・マーベリックスのライブビューイングが行われた。

 試合前には佐々木クリスとMC MAMUSHIが登壇し、息の合った軽妙なトークで会場を盛り上げ、ハーフタイムになると2018年にバスケットボール殿堂入りを果たしたレイ・アレン(元シアトル・スーパーソニックスほか)が登場。

 会場には横浜ビー・コルセアーズ河村勇輝、ダンス&ボーカルグループ「BE:FIRST」のMANATO、ニューヨークで生まれ育った動画クリエーターのRikuto AFも加わり、アレンへ直接質問をぶつける場面も。「キャリアの中でチームを選ぶ決断する際、大事にしていたことは何ですか?」という河村の質問に対し、アレンは「新しい環境へ行くことはとても難しいこと。必ず自分のメンターのような人と話すことが大事になる。それが代理人の時もあれば、選手たちやコーチの時もあるから、いろいろな人と話してから最終的な決断をすることが大事だと思う」と丁寧に答えていた。

多くのNBAファンがレジェンド登場に沸いた[写真]=NBA


 また、この日は同時にライブビューイングを実施していたフィリピンとインドネシアとも“Zoom Session”で会場をつないだ。インドネシアのファンから「一番好きなシューターは誰ですか?」と聞かれると、アレンはデリック・ホワイト(セルティックス)と返答。「ビッグショットを決めるし、フォームが綺麗なんだ。そして個人的にはジャンプをしながらシュートするタイプの人が好きで、とても注目している」とその理由を語っていた。

 セルティックスとマブスによるシリーズ第4戦は、3連敗で後がないマブスが最大48点差をつけ、最終スコア122-84で快勝する思わぬ展開に。それでも、NBAの覇権争い最終章で見事なプレーを連発する選手たちに会場からは大歓声が飛び交った。試合終了後には再びアレンが登場し、会場にいるファン限定5名に用意したプレゼント獲得をかけた“じゃんけん”にも参加してファンを喜ばせた。

■「High Fiveが大事だって知ってる?」

コミュニケーションの重要性を解いたレイ・アレン[写真]=NBA


 イベントは金王橋広場にある屋外コートへ移り、5歳から18歳を対象にしたバスケットボール・クリニックも開催された。参加者がウォームアップを終えると2人1組になってフロントチェンジ、バックチェンジ、レッグスルーをする際にそれぞれ相手の手をタッチし、ハンドリングのメニューをこなす。その後は後方から股の下を10回通した後にドリブルで進んでいき、リング下でストップしてショットを放っていった。

 屋外コートにアレンが現れると、現役時代と同様の美しいシューティングフォームからフリースローを放ち、会場にいた人たちの視線を一斉に集めた。まずは参加者一人ひとりがフリースローを2本放っていき、決まったら拍手2回、外れても1回拍手をしてコーチ陣と参加者の一体感が増していく。

 続いてベースラインから進行方向とは逆へステップを踏み、スクリーンを経由してジャンプショット、今度はトップ下からリング下へ走り込んでフェイクをかけて左右どちらかに進んでパスを受け取ってウイングからジャンプショットを繰り出す実践形式のメニューをこなし、最後は再びフリースロー2本を放った。

 そこでアレンはクリニックへ参加した子どもたちへ“High Five”(ハイタッチ)の重要性を語っていた。「みんな、High Fiveがとても大事だって知ってる?チームメートたちとHigh Fiveをしたり、肩の上をポンポンとたたき合うチームの方が、勝率は高くなるというデータもあるんだ。だから自分のチームの子が良いプレーをしたらHigh Fiveをしてあげてほしい。僕たちも最後に今日の出会いにHigh Fiveをして終わろう」と語りかけ、コーチ陣も含めて「1・2・3、NBA!」と全員で声を出し、記念写真を撮影してクリニックを終えた。

■ 歴代最高シューターを作り上げた練習法

バスケットボールを通じて少年少女たちと触れ合ったレイ・アレン[写真]=NBA


 イベントを終えたアレンはメディアとの囲み取材にも応じた。練習をするうえで意識していることを聞かれると「コンディショニングだね。疲れると近道をしてしまう。そうならないためにコンディショニングを大事にしないと。バスケットボールと私生活の体勢は全く違うものだから、バスケットのような無理な体勢でも疲れないように、コンディショニングを整えていくことが重要」と口にしていた。

 NBAで18シーズンを戦い抜いたアレンは、キャリア初期には身体能力の高さを駆使してドライブから強烈なダンクを軽々とたたき込む場面も多々あった。キャリアを重ねて、移籍もしたことで役割が変わっていき、そのシュート力に磨きをかけて歴代最高のシューターの1人と評される選手へと進化。

 では、シューティングをするうえで、アレンがメンタル面で重要視していることは何なのか。NBAのレジェンドはここでも“コンディショニング”を挙げていた。

「コンディショニングが一番大事だと思っていて、練習に取り組む時とかも、できるだけ自分の居心地が悪くなるような状況を作り出すようにしている。本当に疲れて、足の感覚もなくなるような状態になったくらいで、そこからさらにトレーニングする。試合になると相手選手につかまれたり、どこかが痛いとか、そういった状況になるから、練習でどれだけその状況を再現して取り組んでいるかが重要なので、コンディショニングを大事にしつつ、トレーニングすることを意識している」

 2013-14シーズンを最後にNBAから離れたアレン。現役ラストゲームから10年が経つものの、来月49歳を迎える人とは思えないほど現役時代と同程度の肉体をキープし、一つひとつの質問に対して親切かつ丁寧に答える姿が印象的だった。

渋谷のビル群に設置された特設コートで笑顔[写真]=NBA


取材・文=秋山裕之

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