2022.01.18
東京2020オリンピックでは、3x3女子日本代表がメダルこそ届かなかったものの5位と健闘。そして5人制では快進撃を続けて準優勝、銀メダルを獲得した。
日本だけでなく世界を熱狂させた日本代表選手たちにオリンピックのことや10月から始まるWリーグ、さらにはその先についての話を聞いた。
最終回となる16回目はセンターの髙田真希(デンソーアイリス)。チームを銀メダルに導いたキャプテンは、2度目のオリンピックをどのように戦ったのか。自身の今後の夢も含めて話を聞いた。
――自国開催の大会で、日本バスケ界初のオリンピックでのメダル獲得ということもあり、バスケファン以外の方の注目も集めました。実際、決勝のアメリカ戦が終わった直後、率直にどういう感想を持ちましたか?
髙田 試合を重ねていくごとに、チームの団結、まとまりが深まっていったので、終わった直後は「やりきった」感がありました。一方、「もっとこのチームでやりたい」「離れるのが寂しい」という気持ちがありましたね。
――それは手応えがある試合、プレーができたからこその充実感ですか?
髙田 それもありますし、純粋に試合をしていて楽しかったと感じていました。一人ひとりがお互いを信頼しあい、自分自身のプレーをそれぞれが実践していたので、もっともっとこのチームで試合をしたい、楽しみたいっていう感じでしたね。
――一番思い出に残っている試合は?
髙田 この質問はたくさん聞かれるんですけど、全部が濃かったというか…思い出に残っています。でも、予選グループ初戦のフランスに勝てたことがその後の戦いで一番大きかったと思うので、この試合かなと。そこで勝つと負けるのでは全然違いますし、勝てたことが自信になって次に進めましたし、勢いも出ました。この試合のために4月からずっとフランスをイメージして自分たちはアジャストしてきたので、そこに懸けていた部分が大きかったからです。
――今回のオリンピックで得たものは?
髙田 表現が難しいんですけど…、自分はロンドンオリンピックのときはあと一歩で出場を逃していて(世界最終予選で敗退)、「オリンピックに出たい」という気持ちはバスケット始めたときからの夢でもありました。ですから、次のアジア選手権に優勝してリオ大会の出場権を獲得して、その夢がかなったことがすごくうれしかったことを覚えています。ただメダルには届かなかった。そして、トムさんがHCに就任して、次の東京大会では金メダル獲得を目標にやってきました。結果は銀メダルでしたけど、日本バスケット界初のオリンピックのメダルを獲得できたのはうれしかったですし、これも一つ目標を達成できたと感じています。今、達成してみて思うのは、もちろんメダルが欲しかったですし、首にかけてもらったときの感動は忘れられませんが、それ以上に今まで合宿を積み重ねてきた過程であったり、高い目標に対してみんなで練習して乗り越えてきた過程がメダル以上の価値があることを感じました。
――やはり色々な国際大会を経験している髙田選手でも違う感慨があったと。
髙田 今までは負けて悔しくて、もっとああしておけば、こうしてれば良かったという目標に対しての悔しさなどは感じていたんですけど、本当に高い目標をほぼ達成に近い感じでやり遂げて、そこまで頑張ってきたプロセスが価値のあるものだなと感じました。だからこそ、そこに向かってやっているときがすごく大事で、一日一日が本当に100パーセントで充実していないと、目標は達成できないと分かった部分もあるので。メダル以上にその価値があるんだなと感じました」
――一つ壁を乗り越えた感じなんですかね?
髙田 そうですね。こういう達成感や充実感もあるんだということが分かりました。この感覚は次世代につながっていくと思うので、この経験をしたからこそ、若い世代の選手には年齢関係なくチームを引っ張っていってほしいなと思いますね。
――大会後のある番組で「次はパリ(大会)を目指します」と発言しました。
髙田 1年開催が延びたことによって、(パリまで)1年縮まったなという印象があります。それに今回のオリンピックの前からずっと渡嘉敷(来夢/ENEOSサンフラワーズ)とは「次のオリンピック一緒に出ようね。頑張ろうね」と声を掛け合っていました。そのためには次のオリンピックを自分が目指さないといけないのですけど、1年縮まったことで、「まだまだいけるんじゃないかな」と感じている部分もあります。
――とはいえ、体力的な問題も出てくると思います。
髙田 もちろんです。それに良い選手はたくさんいるので、そんなに甘くはないと思っています。ですから、そこに向けてプレーにおいてもっとやらないといけないことがたくさんありますし、自分自身がステップアップしていかないとその舞台には立てないので、コンディションや体作りも含め、1年1年の積み重ねだと思います。現状維持にはならずに、もっといい選手になりたい。若いうちならどんどん成長できたのですけど、今はキープするのも難しくなってくるので、そこをしっかり理解して。でもさらに良くなっていくためにはやらなければならないことはたくさんあるので、しっかり足下を見て、一歩一歩進んでいきたいなと思います。
――「女子バスケを盛り上げたい」と、常々おっしゃっていました。今後どのように広めていきたいと思っていますか?
髙田 そのためにもやっぱりたくさんの人の前でプレーしたですね。Wリーグの試合で満員になることはほとんどないので。「見に行きたいな」と思ってもらって、たくさんの観客の前でプレーできるような環境や流れになっていってほしいなと思います。日常にバスケットの会話やテレビをつけたらバスケットがやっているような。まだまだ先だとは思うんですけど、そんな世界になっていってほしいなとこれまでもバスケットをずっとやってきているので、そうなったらうれしいですね。
――そのためには何が必要ですか?
髙田 Bリーグは盛り上がってきていると思いますが、女子の場合は運営を含め、発展していかないといけない部分がたくさんあります。「また来たいな」「また見たいなと」思ってもらうには、もちろん選手が頑張るのは必要ですけど、それ以外の力も大切になってきます。そこは一丸になってやっていかないと、ブームで終わってしまうのではないでしょうか。これからも女子だけではなくバスケを文化として日本に定着させていくには、選手はもちろん、周りをサポートする人たちなどが、もっと意識を持ってやっていくことが大切だと思います。男子はプロになってそういう意識が高まりましたが、女子はその面ではまだ遅れている部分がたくさんあります。せっかくチャンスをつかんだのに、ここを逃してしまったらもったいないので、まずは自分がやってきているからこそ、女子のバスケを盛り上げたいと思います。
――そして、いよいよWリーグが開幕します。目標を改めて教えてください。
髙田 目標は日本一です。昨シーズンからマリーナ・マルコヴィッチHCに替わって、わかってきている部分もありますけど、彼女のやりたいバスケットを去年全部自分たちに伝えたかと言うと、まだまだ半分もできていないと思います。その高い要求を自分たちが理解して、体現できるかがすごく大事になってきますし、そこをみんなが理解して、遂行できるのかがポイントです。
――チーム全体のレベルアップは必要ですね。
髙田 本当に必要だと思います。登録されている選手全員の力が必要なので、そこは互いに信頼しながら、やっていくことも大切です。チームがうまくいくように、みんながプレッシャーを感じずに、本来持っている力をみんなが出せるようなチーム作りをしていきたいなと思います。
――最後にファンへメッセージをお願いします。
髙田 オリンピックは無観客での開催でしたが、SNSやテレビなどを通じて、たくさんの方々に応援していただいて、たくさんのパワーをいただきました。バスケットボール界初の銀メダルを獲得できたのは皆さんのおかげです。とても感謝しています。今度はともに戦ってきた仲間たちがライバルとなってお互い切磋琢磨するWリーグが開幕します。いつも見てくださっている方を含め、オリンピックを機に知ってくださった皆さんにも見ていただきたいです。オリンピックでは叶わなかったですけど、Wリーグでは今のところ現地で観戦できるので、安全の範囲で会場にも来ていただけたらうれしいです。これからも応援していただけるように頑張ります。
取材・文=入江美紀雄
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