2026.08.09
8月8日、八村塁(ロサンゼルス・クリッパーズ)が主宰し、日本バスケットボール協会(JBA)との連係プログラムとして実施された「BLACK SAMURAI SUMMIT 2026」が名古屋市のIGアリーナで閉幕した。男子U18日本代表の強化合宿を兼ねて行われた今回のキャンプや、今夏の「FIBA U17ワールドカップ2026」を経て、日本のアンダーカテゴリー指導は今、どのように変わっていくべきなのか。同代表の片峯聡太ヘッドコーチ(福岡大学附属大濠高校)と、アンダーカテゴリーの責任者である井手口孝強化部会(福岡第一高校)がメディア対応に応じ、これからの育成現場における「指導者のあり方」と、指導する“大人”が持つべきマインドセットについて語った。
片峯HCが今回のキャンプを終えたメディア対応で話してくれたのは、指導者が「自分のバスケットを伝えたいから」という理由で、選手の成長に蓋をしてはならないということだ。
「自分のバスケットをどうこうするというよりも、やっぱり選手たちがどこを目指すのかによって、僕ら指導者や大人が、何をやれるのかというのを本気で考えなければいけない」
例えば、選手が本気で「NBAを目指す」と口にしたとき、英語力を身につけさせるために何が必要か、どのようなスキルを準備すべきか。指導者一人の力に頼るのではなく、専門家の力を借りてでも選手が最大限に伸びていく環境を整えること。そうした「大人側の実行責任」と真摯に向き合うマインドこそが、今の日本の指導現場に必要であると片峯HCは指摘する。
「指導を変えるというより、指導者たちのマインドセットの方向性を変えること。その選手たちが最大限に伸びていくために何ができるかを真剣に考える指導者、大人が増えていけば、八村選手に続く世界最高峰のNBA選手が出てくる可能性は十分にあると思っています。そうした選手が一人でも二人でも増えていくことで、日本のシニア代表の強化にもつながっていく。国内で努力して結果を出すことで、日本代表やNBAにつながっていく絵をしっかりと共有できれば、指導の側からいい流れが作れます。選手の可能性に蓋をしない大人たち、それがキーになるはず。そこに真剣に向き合っていきたい」
片峯HCは指導者が選手たちの可能性を信じ、様々な角度からアプローチする重要性を語った。

自らを「雑食」と語り、指導に対する探究心を話してくれた井手口強化部会長 [写真]=BLACK SAMURAI 2026
一方、アンダーカテゴリー全体の強化を統括する井手口強化部会長は、ボトムアップのための具体的なアプローチとして「指導者レベルの向上」を挙げる。
「指導者レベルが上がれば当然選手のレベルも上がる。世界基準にする取り組みを、急速に進めなければいけない。僕の役割としては、若くて可能性のある指導者を一人でも多くこういう世界基準の場に連れてきて経験してもらい、それを自分のチームや地域での指導に還元してもらうことから始めている」
JBAが推進する改革のスピード感に連動し、意欲ある若い指導者を積極的に引き上げていく。それと同時に、すべての現場の指導者自身が常に自らのアプローチを振り返り、アップデートし続ける必要性についても言及した。
「自分の信念で指導することは悪いことではないが、時々振り返ってみることが必要。もっと良い方法はないかと模索しなくなったら指導者としては終わり。シーズンの途中でも振り返り、些細な動画(YouTubeなど)からでも『あ、これこんなやり方があるんだ』と気づけばやってみる。僕自身も雑食なので結構やるが、新しいものを吸収する柔軟さと勉強する意欲が何より重要だ」
自らの経験や信念に固執せず、常に謙虚に学び続ける「雑食の姿勢」を持つこと。それこそが、日本の育成年代の底上げにつながると井手口強化部会長は確信している。
今回の「BLACK SAMURAI」とJBAの連係プログラムが残した意義は、一過性の刺激に終わらせず、その世界基準のマインドセットをいかに各チームの「日常」へと落とし込んでいけるかにある。JBAの改革スピードに呼応して、若い優秀なコーチたちが次々と意識を変え、そして世界基準を吸収し、それぞれの地域へ波及させていくことこそ、日本全体のレベルアップにつながっていく。
「BLACK SAMURAI SUMMIT 2026」を経験して、日本の将来を担っていくユース世代が本気で「世界」を語り始めた今、指導者側もまた、新たなスタートラインに立っている。
文・構成=入江美紀雄(バスケットボールキング編集部)
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