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「もっとできる」出場機会に飢えた川真田紘也…28歳で琉球へ「キャリアで一番大事な時期」の決断

今シーズンから新天地で戦う川真田[写真]=長嶺真輝
スポーツライター

 プロバスケットボール選手にとって、20代後半から30歳前後は心身ともに脂が乗る時期と言えるだろう。その期間をどのチームで、どんな環境に身を置いて過ごすかは、キャリアを形成するうえで重要な意味を持つ。

 28歳の川真田紘也は、今がまさにその時期だ。

 新たなトップカテゴリー「Bプレミア」が幕を開ける2026-27シーズン。日本代表としてFIBAワールドカップ2023など多くの大舞台を経験してきた204cmのビッグマンは、昨シーズン初優勝を飾った長崎ヴェルカを離れ、新たな挑戦の場に琉球ゴールデンキングスを選んだ。結んだ契約は4年間。32歳までを過ごす長期契約だ。

 川真田自身、選手としての現在地を「キャリアの中でも一番大事な時期」と表現する。そのタイミングで、なぜ新天地に琉球を選んだのか。背景には、長崎で過ごした2シーズンで抱え続けたもどかしさと出場機会への飢え、そして、それでも失わなかった自身の可能性への確信がある。

 7月28日、沖縄サントリーアリーナで川真田にインタビューした。

文=長嶺真輝

■「プロとは何か」長崎で変わった価値観

 川真田のキャリアが大きく動いたのは、滋賀レイクス時代の2年目に当たる2022-23シーズンだった。59試合に出場して平均12分22秒のプレータイムを獲得し、体を張ったリバウンドやスクリーンで貢献。体重117キロの巨体ながら走れる脚力を備え、日本代表にも定着した。

 しかし、さらなる飛躍を期して2024-25シーズンに移籍した長崎での2年間は、思い描いたものではなかった。

 5アウトオフェンスや激しいディフェンスからの素早いトランジションを武器とするスタイルの中で、平均出場時間は1年目から順に6分49秒、6分28秒にとどまった。特に2年目は突出した力を持つスタンリー・ジョンソンイヒョンジュンが加入し、チームは限られたメンバーでローテーションする戦い方となった。

 川真田は「『もっとできるんじゃないか』と思いながら、もどかしさはもちろんありました」と率直に振り返る。

 ただ、長崎で過ごした時間を後悔しているわけではない。昨シーズン、長崎はクラブ創設5年目にして初優勝を達成。自身初のチャンピオンシップ(CS)は2試合で計6分4秒のみの出場にとどまったが、目標に向かって組織全体が一丸となる空気を肌で感じた。

[写真]=B.LEAGUE


「長崎は選手、コーチ、そしてマネージャーや広報など裏方のスタッフまでみんな意識が高く、本当に前だけを向いて進んでいく組織でした。選手個々のレベルも本当に高くて、プレータイムが少ない悔しさはありながらも、刺激を受けながら『自分もまだまだできる』『俺も頑張ろう』と思いながら挑戦していました。長崎にいた2年間は、僕のキャリアにおいてすごくプラスだったと思っています」

 バスケットボールへの向き合い方、私生活の送り方。プロフェッショナルな人間たちに囲まれ、「以前は楽観的な部分が強かったですけど、『プロとは何か』を考えるようになりました」と自身の価値観にも変化があったという。

■マクヘンリーAHCの「熱さ」に動かされた

 長崎からは残留を求められ、ほかのクラブからもオファーが届いた。その中で川真田が琉球を選んだ理由の一つが、新たに指揮官に就いたアンソニー・マクヘンリーAHC(アソシエイトヘッドコーチ)から伝えられた明確な期待だった。

「琉球からのオファーを受けるか悩んでいたとき、長崎はまだ次のヘッドコーチが決まっていなくて、その人選次第では、また試合に出づらい状況になるかもしれないと感じていました。ただ、マクヘンリーAHCと面談したときに、自分を『こういうふうに使いたい』『ああいうふうに使いたい』と熱く語ってくれて、『よし、また挑戦しよう』と思えたんです」

 面談では、日本人選手以外の構成について、ジャック・クーリーを軸としながら、外国籍選手にはスモールフォワードタイプとインサイドを担えるビッグマン、帰化・アジア特別枠にはガードを獲得する構想まで聞かされたという。実際にデイビッド・ヌワバグラント・ジェレットキーファー・ラベナが加入し、その顔ぶれは説明に沿ったものだった。

 特にガードのラベナの獲得からは、自身をビッグマンの一人として計算していることが伝わってきた。「自分にもチャンスがあるロスターだと感じました」と振り返る。ただし、出場時間が約束されているわけではない。それは川真田自身が強く自覚している。

「もちろん実力がなければ試合には出られません。出場時間はあくまで自分でつかむものです。今までの自分のプレーを評価してオファーをしてくれたと思うので、まずは体を張ったディフェンスやリバウンド、味方へのスクリーンなど、できることからしっかりやっていきたいです」

[写真]=長嶺真輝


 琉球は昨シーズンまでインサイドに大きな強みを持っていたが、新チームではアップテンポなスタイルを標榜している。日本代表でも証明しているように、川真田は「デカいなりに走れているという自信はあります」と言い、走るバスケットについても「加入の決め手の一つ」と明かす。パワーを武器とするクーリーとの差別化という意味でも、「速い展開は長崎でも慣れているので、そこで違いは出せると思っています」と自信を見せる。

■「オンザコートフリー」の受け止めは…

 Bリーグでは、インサイドは高さとフィジカルを備えた外国籍選手の主戦場となってきた。元NBAプレーヤーや強豪国の代表経験者も増える中、日本人センターが出場時間を確保するハードルは高い。川真田も「外国籍選手のレベルが上がっていく中で対抗するのは大変ではありますが、それでもどうすれば戦えるのかを毎日ひたすら考えています」と模索の日々を送る。

 さらにBプレミアでは「オンザコートフリー」が導入され、外国籍選手3人の同時起用が可能になる。一見すると日本人ビッグマンの立場がより厳しくなるようにも見えるが、川真田は必ずしもそうは捉えていない。

「これまでは外国籍選手3人のうち2人が出て、その間に1人が休むというローテーションが主でしたが、オンザコートフリーで3人が一緒に出た場合、その交代で出る選手がより重要になってきます。特に外国籍センターの代わりになるのは、日本人ビッグマンの自分です。その意味では、活躍できるチャンスはあると思っています」

[写真]=長嶺真輝


 オンザコートフリーになったとしても、外国籍選手が健康を維持しながら長いシーズンを戦い抜くためには、日本人ビッグマンの働きが重要であることに変わりはないだろう。今シーズンもBプレミアに加え、東アジアスーパーリーグ(EASL)への出場権も有している琉球であれば、なおさらだ。

 マクヘンリーAHCも、川真田に「対戦する外国籍選手をディフェンスで守れるようになってほしい」と期待を寄せる。同じくインサイドでのプレーを持ち味とする佐土原遼とともに、「川真田や佐土原がいることによって、異なる特徴を持つ多様なラインナップを組めると思っています」と戦術の幅を広げる存在になると見ている。

■「試合勘」の先にある飛躍の可能性

 幸地渉氏とイドー・レヴィット氏の両アシスタントコーチ(AC)が長崎からともに琉球へ移ったことも、川真田にとっては心強い。

 特に3歳上の幸地ACは、長崎で川真田の担当コーチとして個人ワークアウトなどを2年間にわたって支えてきた。川真田も「何でも打ち明けられる存在」「バスケについて何でも話せる相手」と信頼を寄せ、幸地ACの琉球復帰も移籍を決断する要因の一つになった。

 川真田について、幸地ACは「長崎時代も外国籍選手が2人しかいない試合などですごい活躍をしていました。ポテンシャルは十分に持っています。あとは試合に出るだけ。コンスタントに試合に出られたら、ファンの人たちが思っている以上のパフォーマンスが出てくると思います」と評し、さらなる飛躍の可能性を誰よりも信じている。

[写真]=長嶺真輝


 これは本人の実感とも重なる。川真田がいま、自身に足りないものとして挙げるのが「試合勘」だ。「試合に出て、実戦でプレーをすればするほど、瞬間的な判断ができるようになります。だからこそ、まずは試合に出られるようにやるべきことをやっていきます」と足元を見詰める。

 ただ、チーム合流前の7月上旬に「FIBAワールドカップ2027 アジア地区予選 Window3」で右手を負傷した。診断は全治3〜4カ月。新たな一歩を踏み出そうとした矢先の怪我だったが、「怪我はするときはしてしまうので」と焦りは見せない。左手を使った練習や下半身のウエイトトレーニングなど、できることに取り組みながら復帰を目指している。

 相手として対峙してきた琉球には「シンプルに毎年強い。勝つカルチャーがある」と感じていたという。滋賀時代には、二桁リードで入った第4クオーターで逆転負けを喫したこともある。沖縄サントリーアリーナについても「ワールドカップのときはすごく頼もしかったですし、アウェーで来るときはとても圧を感じていました。それだけ沖縄にはバスケ熱が根付いているんだなと思います」と語り、ゴールドのユニフォームを着てプレーする瞬間を楽しみにしている。

 自身にとって「一番大事な時期」と考える4年間を琉球に託した川真田。「試合に出て『もっともっとできる』というところを見せるためにも、すごく大事な決断だと思っています。オファーをしてくれたチームに恩返しできるように、全力で頑張りたいです」。自らの可能性を信じてくれる新天地で、期待に応えることができるか。その答えを、これからコートの上で示していく。

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