2019.11.17

切れ味鋭いプレーが光るA東京の田中大貴「トップでなければオリンピックで戦えない」

田中は2連覇中の王者A東京が誇るエースガード[写真]=B.LEAGUE
フリーライター

Bリーグ4シーズンの中でベストなショット成功率を残すA東京のエースガード

 11月16日。アルバルク東京はホームのアリーナ立川立飛にて、B1リーグ第9節第1戦を行い、82ー67で三遠ネオフェニックスを下した。

 前半こそ36ー36で終えるも、アルバルク東京は後半に入って徐々にリードを広げていき、最後の24分間で46ー31と大差をつけて今季10勝目に到達。

 チーム最多の30分58秒コートに立った田中大貴は、5投中4本の3ポイントを決め切るなど14得点に2リバウンド6アシストをマークし、勝利に貢献。シューティングガードながらプレーメイクも難なくこなし、プルアップやキャッチ&シュートを駆使して長距離砲を何度もリングへ突き刺した。

三遠との第1戦で、田中は14得点6アシストを挙げた[写真]=B.LEAGUE

 今季の田中はここまで13試合に出場して、平均約31分に12.8得点2.0リバウンド5.8アシスト1.5スティール。Bリーグが開幕してから、今季の平均アシストとフィールドゴール成功率(52.1パーセント)とフリースロー成功率(84.0パーセント)は自己最高ペース。3ポイント成功率(40.8パーセント)はBリーグ初年度の2016ー17シーズン(40.9パーセント)とほぼ同等と、ショットの精度はBリーグ開幕後、ベストと言っても過言ではない。

 16日は今季最多となる4本の3ポイントを決めたのだが、「結構オープンな状態で打てたシュートが多かったので、手ごたえは別にありませんでした」と田中は振り返る。

 3連覇を狙う今季、A東京の主軸として練習や試合で意識していることについても、「このスタイルでもう3年目になるので、特別に何かを変えているわけではないです。アルバルクの場合はチームのルールに則ってやらなければいけません。ですので、僕はその精度や強度、スピードといった面で、質を上げていけるようにと考えています」と冷静に語っていた。

しなやかな動きから放たれる田中のプルアップジャンパーは抜群の精度を誇る[写真]=B.LEAGUE

「ワールドカップでできなかったことを、あと1年ない時間(の中)でどれだけ向上させて、オリンピックにどうチャレンジするか」

 田中個人に絞って見てみると、昨季Bリーグで2連覇を達成後、今夏は日本代表の主力の1人として「FIBAバスケットボール ワールドカップ2019」(以降、ワールドカップ)を経験。計5試合に出場し、2試合で2ケタ得点を残すも、大会平均では22.9分6.2得点1.0リバウンド1.8アシスト1.2スティール。

 抜け目のないディフェンスに加え、チームオフェンスの中で得点を挙げつつ、潤滑油としても機能するなど、田中は多彩な選手であることを示していた。

 とはいえ、日本代表はワールドカップで5戦全敗。ファーストラウンドで3連敗を喫し、順位決定戦では日本で国際強化試合を行ったニュージーランドにも81ー111で敗れるという悔しい結末に。

 Bリーグ開幕まで約1か月という中、世界レベルを体験した田中は今季、オフェンスとディフェンスの両面でキレのある動きを見せている。そこには数字として残る実績とは別に、力強い意志、日本を背負う男の1人という確固たる決意を感じられたので、個人として意識していることについて聞いてみると、こんな答えが返ってきた。

「個人としては、ワールドカップでできなかったことを、あと1年ない時間(の中)でどれだけ向上させて、次のオリンピックにどうチャレンジするのか、というものがあります」

 2連覇中の王者として田中が口にした「チームとしてはもちろん、優勝を目指してやっていますのでそれに尽きます」という言葉にも重みを感じられたのだが、それ以上に個人としてオリンピックに向けて強い気持ちを秘めていることが印象的だった。

ワールドカップではSGだけでなく、PGとしてもプレーした[写真]=fiba.com

Bリーグが誇る2ウェイプレーヤー「攻防共にしっかりやらないといけない」

 NBAでは近年、オフェンスとディフェンスの両面でリーグ有数の実力を持つ選手が“2ウェイプレーヤー”と評されている。代表的な選手では、カワイ・レナードポール・ジョージ(共にロサンゼルス・クリッパーズ)、アンソニー・デイビス(ロサンゼルス・レイカーズ)、ジミー・バトラー(マイアミ・ヒート)が挙がる。

 そしてこの2ウェイプレーヤーという選手像に、Bリーグで最もマッチする選手は田中ではないだろうか。オフェンスでは点取り屋からプレーメイク役までこなす万能性があり、ドライブから今季は力強いフィニッシュまで持ち込むことができている。また、自らショットクリエイトできる能力があり、ドライブからチームメートたちの得点機会を演出できることは田中の持ち味の一つ。

 ディフェンスでも、田中はコート上でマッチアップ相手を追いかけ回し、1対1の場面ではタイトなガードでショットまで持ち込ませないことも頻繁にある。

機敏なフットワークと高いバスケットボールIQを駆使したディフェンスも魅力[写真]=B.LEAGUE

 オフェンスとディフェンスの両面において優れた選手という自負があるかどうか、田中に聞いてみると、「もちろん」と自信満々に即答。そして「(攻防両面で)トップでなければ、オリンピックで戦えないと思っているので」と来年夏に行われる東京オリンピック2020を見据えていた。

 選手の中にはどちらかと言えばオフェンス、またはディフェンスに、よりフォーカスしていることがあるのだが、「バスケットはオフェンスとディフェンスがありますので。どちらもしっかりやらないといけないと思っています」と2ウェイプレーヤーとしての自信を口にしていた。

 開催国枠でオリンピックに出場する機会を得た日本代表だが、ただコートに出てプレーするだけでは意味がない。ワールドカップでつかむことができなかった勝利を、是非ともオリンピックという大舞台で手にしてほしい。

 それはファンや関係者が思っている以上に、選手たちが強い気持ちを持っているのだと、田中の力強い言葉から感じることができた。

取材・文=秋山裕之

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