2022.11.01

並里成、群馬クレインサンダーズで新たなキャリアをスタート「ここで優勝したい」

ケガで出遅れたものの、26日の試合では今季最多21得点をマーク [写真]=鳴神富一
スポーツジャーナリスト

「日本バスケ界のファンタジスタ」

 そう言われ続けている司令塔が、自身のバスケットボールキャリアにおいて新たなストーリーを描き始めた。通算8シーズン在籍した故郷の琉球ゴールデンキングスを離れ、今シーズから群馬クレインサンダーズに移籍した並里成のことである。オフシーズンの移籍市場で注目を集めた並里は、クラブとして進化を続け、2023年春に太田市に新アリーナがオープンする予定の群馬でのプレーを選択した。

 シーズン直前のケガにより、開幕から欠場が続いたが、10月15日に行われたアルバルク東京とのB1第3節第1戦でデビューした。復帰後はファンタジスタと言われる根源の一つでもある華麗なアシストに加え、多彩な得点パターンでスコアを記録。試合をこなすごとにコート上で存在感を放った。今シーズン初のミッドウィークゲーム、26日にホームの太田市運動公園市民体育館で行われた秋田ノーザンハピネッツとの一戦では、試合に敗れたものの、21得点6アシストでチームをけん引した。

 彼自身は復帰直後ということで試合数が少ないが、個人としての手応えをすごく感じているようだ。その一方で、今後を見据えた内容で現状を分析した。

「チーム自体はすごくいいなと感じていて、中身のあるバスケットをしていると思っています。そのなかで日々足りない部分をコーチやスタッフがしっかりとサポートしてくれていて、毎日いい練習ができているのを本当に感じていて。その部分が少しずつ結果につながっていると感じています。個人としてはケガ明け5試合目。チームのことをもっと理解しなければいけないし、今日もちょっとしたミスが出て、チームを流れに乗せきれられなかった部分がありました。もっとチームメートを知っていって、改めてチームとしてどういう姿を見せなければいけないのか。その部分を個人としても見せていきたいです」

出場試合数の関係でランキング外ではあるが、リーグ5位タイの平均6.2アシストを記録 [写真]=鳴神富一

 プロバスケ選手としての新たなストーリーを描き始めるとともに、プライベートでも環境に大きな変化があった。クラブ公式YouTubeに投稿された移籍会見の密着ドキュメンタリー映像によると、シングルファザーとして、息子と二人三脚で群馬での新生活をスタートさせたことが明らかになった。

「皆さんもおわかりだと思いますが、子育ては本当に簡単ではなく、大変です。今までもそうでしたが、今回も周囲に頼りつつ、子育てしながらプレーしています。コートという仕事場に来るまでは大変ですけど、息子のそばにいて、彼が成長できるのを手助けできる。自分の中で半分は満足していますが、半分は大変だなという思いです。それでも息子が側にいてくれるお陰で、今まで自分のなかにあったモヤモヤしていた部分がなくなって、息子からパワーをもらっています。今、自分がいい環境にいるのを実感しています」

 並里の実情を汲んだうえで公私共にサポートをしているクラブの思いに対して、「本当に家族みたいな存在」と表現し、感謝の気持ちを言葉にした。

「過去のチームを悪く言うわけではなく、やはり『仕事は仕事』という感じが今まではあったけど、クレインサンダーズは何か家族みたいな感じです。本当に口だけではなく、『みんなで家族になろう』と言ってくれて。チームメートはもちろん、フロントスタッフやコーチ陣に加えて、現場にいるみんなが僕の手助けをしてくれています。また、息子を家族のように可愛がってくれています。今は本当に感謝の気持ちでいっぱいですし、チームに恩返ししたい思いがあって、その部分をコートで表現できたらと感じています」

「チームへの恩返し」とは、群馬に優勝をもたらすことだと並里自身も理解している。

「僕はここで優勝したい。チームは優勝するためにしっかりやっていますが、残り試合も含めて、優勝までのプロセスを一つひとつ大事にしていきたいです。そのためには、まずはチャンピオンシップに進出して、進出したら優勝までのチャレンジをやっていきたいなと思います」

 今シーズン、公私ともに新たなスタートを切った。ベテランとして、自身が培った経験と実績を携えて、コート上でファンタジスタとしての輝きを放つ。彼がシーズン最後まで輝き続ければ、群馬に初の栄冠をもたらすことができるかもしれない。

選手、父親として群馬の地で新たなスタートを切った [写真]=鳴神富一

文・写真=鳴神富一

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