2024.10.16
八村塁の6年目のシーズンが始まる。3日間のトレーニングキャンプを経て、カリフォルニア州パームデザートで行われたプレシーズンゲーム初戦のミネソタ・ティンバーウルブズ戦で、八村は9得点6リバウンドをマーク。「(パリ)オリンピックでやったのでそんなに試合の感覚が衰えている感じはなかった。NBAとFIBAは全然違うので、その違いは感じたが、それ以外はいい感じでできた」とまずますの手応えをつかんだ様子。
そして2日後、同地でフェニックス・サンズを招いた試合では、攻防ともに初戦以上に積極的に動き、フィールドゴールを8本中6本決めるなど、13得点8リバウンドを記録した。「(前戦後)ディフェンスやオフェンスでまとまっていないと言われたので、しっかり直そうと思ってやった」と初戦での課題に取り組んだことを明かした。
この試合は、レブロン・ジェームズと息子のブロニーがNBA史上初めて親子で同時にコートに立ったことで世界的に話題になったが、「このチームにいることによってレブロンの偉大な歴史にいろいろ関わることができてすごくうれしい。彼も(息子がチームメートで)気合いが入っていると思うので、いいと思う」と笑顔を見せた。
「そろそろNBAの一番上のチャンピオンシップっていうところが見たいなと思う。ずっと夢見ていた目標に向けて、しっかりとやっていきたい」
2024-25シーズンのトレーニングキャンプ開始を翌日に控え、八村はそう言った。
2022―23シーズンの1月にワシントン・ウィザーズからロサンゼルス・レイカーズへトレードとなり、浮き沈みを経験しながらプレーオフ時に開花。西カンファレンス決勝まで勝ち進んだレイカーズに大貢献した。昨季は序盤ダービン・ハムヘッドコーチからの信頼が得られず。故障も重なって悶々としたスタートとなったが、2月3日のニューヨーク・ニックス戦で自らがスターターに加わってから、レイカーズはレギュラーシーズン残りの33試合で23勝10敗という好成績を収めた。
八村は、これまでレイカーズの「Xファクター」として存在してきた。そしてレイカーズが頂点に到達するには、八村のさらなる成長が必須で、本人も「レブロン(ジェームズ)とかAD(アンソニー・デイビス)は絶対に活躍する。相手チームは、他の選手にやらせない、リズムに乗らせないという作戦でくると思うので、僕がどれだけ活躍するかというのが勝利につながる。そこは意識したい」と力を込める。
今季からレイカーズの新ヘッドコーチに就任したJJ・レディックは、八村にスリーポイントをもっと打つことに加え、コーナーからオフェンスリバウンドに飛び込む“コーナークラッシュ”を求めている。「塁は素晴らしいシューターで彼にはコーナースリーを打ってもらいたい。つまり、彼はすでにコーナークラッシュの位置にいる。彼のオフェンスリバウンドを増やそうと思っている。ディフェンスにおいても、特に大きなウィングに対して彼に多くをゆだねる」とレディックHC。「塁は大きな役割を担うことになるし、我々は彼に多くのことを任せるつもりだ」と期待を込めた。
八村にとってシーズン開幕からスターターを務めるのは、ウィザーズに所属していた1年目以来となるが、特別な思いよりも自信が先行する。
「(レディックHCは)僕の昨シーズンの試合も見ているので、そういうのを見てのスターター(抜擢だと思う)。逆に(スターターじゃ)ないって言ったら、すごい批判が来ると思う」と笑った八村。「今まで(このリーグでできるところを)見せているので。それを見ている人と見てない人というのは、話したりとかコーチングの仕方でわかります。レディックコーチはもうずっと僕のことを見ていたと思うので、そういうのでわかっているんじゃないかなと思います」
過去には、納得のいかない起用法で苛立ちを隠せないこともあった。だが、我慢して自己向上に努め、ここまで這い上がってきた八村には、ベテランの風格が漂う。
その一方で、6回目の開幕を迎える八村を取材していると、懐かしい気分になることがある。
多少人見知りの面はあるものの、根は明るく、周りをいつも笑顔にしていたゴンザガ大学時代の彼を思い出すのだ。
大学1年生のときは、流暢に英語がしゃべれるわけではなく、出場時間も限られていたが、コートに出たときのハツラツとしたプレーと豪快なダンクやスリーポイントを決めたときのうれしそうな表情がファンを虜にした。不自由なく英会話ができるようになり、チームの重要な戦力となった2年目以降は、ロッカールームでも人気の選手となった。バスケ能力があるから人気なのではなく、八村と一緒にいることが好きでみんなが集まった。
レイカーズに加わって3シーズン目。ヘッドコーチが変わったことで、心から信頼するアシスタントコーチ、フィル・ハンディが去ったものの、今の八村には、あの学生時代と同じ雰囲気がある。
その理由は、前述のように、ここまでキャリアを築いた自信、そしてラッセルとジャレッド・バンダービルトがパリオリンピックの応援に来てくれたり、ジェームズが「みんながわかり合い、このグループを気に入っている」と話すなど、レイカーズのチームメートとの絆が深まっていること、またコーチからの信頼を感じ、自らもコーチが信じられる存在であることだろう。
まもなく始まる6シーズン目。すべてが順調というわけではないだろう。しかし、八村は、経験と自信、そしてチームメートとの絆を武器に「夢に見ていた目標」に向かって邁進していくはずだ。
文=山脇明子
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