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長崎を初優勝に導いたイヒョンジュン…3度目のサマーリーグでつかんだ確かな成長

スパーズで3度目のサマーリーグに挑戦したヒョンジュンをレポート [写真]=Getty Images
ロサンゼルス在住ライター

■長崎のチームメートも支えたサマーリーグへの挑戦

活躍とともに現地でも注目を集めるように [写真]=山脇明子

 5月末に幕を閉じた「りそなグループ B.LEAGUE FINALS 2025-26」。その決戦となるGAME3で23得点を挙げて長崎ヴェルカを初優勝に導き、「りそなグループ B.LEAGUE CHAMPIONSHIP 2025-26 MVP」に輝いたイヒョンジュン。Bリーグの3ポイントリーダーの元にサンアントニオ・スパーズから連絡が入ったのは、その後間もなくのことだった。

「(Bリーグの)ファイナルに勝った直後ぐらいだったと思います。Bリーグの発展はすごいと驚きました。今では世界中がBリーグに注目しています。Bリーグが今も発展を続けていて、今後さらに大きくなっていくということに驚きと誇りを感じています」とイは言った。

 2019年にNBAのスーパースター、ステフィン・カリーの母校でもあるデイビッドソン大学に進学したイは、自らの目標であるNBA入りを目指し、3年生のシーズン後、大学卒業を待たずにドラフト対象選手となれる「アーリーエントリー」を表明した。

 同大2年生のときにデイビッドソン大史上初となるフィールドゴール成功率50パーセント以上(50.8パーセント)、3ポイント成功率40パーセント(44.2パーセント)以上、フリースロー成功率90パーセント以上(90パーセント)の“50-40-90”をマーク。3年生時には1試合平均15.8得点6.0リバウンドを記録してアトランティック10カンファレンスのファーストチームに選出された。

 NBAドラフト2巡目指名やドラフト外からの2Way契約が期待されたが、ドラフト前のNBAチームとのワークアウト中に左足の甲とその部分の靭帯を負傷。完治まで何カ月も要することとなり、夢への第一歩は先送りとなった。そして翌年の2月にゴールデンステイト・ウォリアーズ傘下のGリーグチーム、サンタクルーズ・ウォリアーズでプレー、その後NBLとBリーグでの経験を経て、今回が2023年(フィラデルフィア・セブンティシクサーズ)と2024年(ポートランド・トレイルブレイザーズ)に続く3度目のサマーリーグ挑戦となった。

 過去2度のサマーリーグでは出場機会が限られた。だがBリーグで昨シーズン、リーグ史上3ポイントシュート成功最高確率となる47.9パーセントを記録したイは、今サマーリーグではローテーションに入ってプレーした。起用のされ方を見ても、スパーズから「見てみたい選手」として興味を惹かれていることは明らかだった。

 ラスベガスでのサマーリーグに先立ってサンフランシスコでプレーした「カリフォルニアクラシック」では、ウォリアーズ戦でフィールドゴール4/7(3P2/5)など11得点、ロサンゼルス・レイカーズ戦では、3ポイントが0/6と絶不調だったもののフリースローを決めるなどで7得点、7リバウンド、4アシストとオールラウンドに奮闘。3試合で1試合平均7.7得点、4リバウンド、2アシストを記録した。

 だが、3ポイントの不調がラスベガスでのサマーリーグ突入後も続き、3戦目を終えた時点で「カリフォルニアクラシック」も含めた6試合の3ポイントは4/26。プレータイムも徐々に減り、自らへのパスも少なくなり、さらにリズムがつかみにくい状況に陥ってしまった。

 そんななか、支えになったのが、スパーズのコーチ陣から「たとえ君(の3ポイント)が0/9、0/9と続いたとしても、99本連続でミスしたとしても気にしない。君はシュートを打つためにここにいるのだから」と掛けられた言葉。そして長崎のチームメートからの励ましだ。ベテランの「センパイ」馬場雄大は、「『自分を信じて頑張り続けろ。決まるから』と言ってくれた。そのおかげで自信を持つことができた」。ジャレル・ブラントリーは「試合前に電話をくれて、『ただ、楽しむことだ。結局のところ、お前が世界一のシューターなのだから』と言ってくれた」。スタンリー・ジョンソンも「テキストをくれた」。スタンドで応援してくれた松本健児リオンとも「会えてとてもうれしかった」と笑顔を見せた。そして「韓国からも日本からも僕のことを応援してくれている人たちがいる」とファンの応援に感謝した。

■ついに炸裂した長距離砲…手ごたえを得てスケジュール終了

試合を重ねるごろにチームメートの信頼も得ていった [写真]=山脇明子

 3ポイント力を大いに期待されてのサマーリーグであり、不調のなかでも「自分は1番のシューターだと信じている」と自らを鼓舞し続けた。その一方で、「ディフェンスの責任もしっかり果たそうとしている。チームディフェンスなど、いいディフェンスをし、リバウンドなどいろいろな面でチームを助けたい」と全力で臨んだ。「(サマーリーグは)競争だ。すべての選手にとってタフだ。でもここでの経験は、多くの学びとなる。(過去2回のサマーリーグで)あまりプレーさせてもらえなかったときでさえ、ここで学ぶことができた。ここでの経験によって僕はさらに成長できる。ここにいられてうれしい」と、夏の挑戦を噛みしめた。

「カリフォルニアクラシック」から始動していたスパーズにとって、残るところあと2試合となったラスベガスでの4戦目。ついにイがスランプから抜け出した。ユタ・ジャズ戦の第1クォーター、残り5分半から出場すると、左ウイングから放ったこの試合最初のショットとなる3ポイントを成功。すると今度はファストブレイクで右ウイングに入ってパスを受け取り2本目の3ポイント、さらにトップからも決めて、ミスなしの9得点スタートを切った。

 スパーズのサマーリーグを率いたコーリス・ウィリアムソンヘッドコーチはイについて、「彼のシュート力はスペーシングを取るうえで大きな助けになっている。彼は間違いなくチームの戦力の一人」と話していた。第2クォーターのイは3分弱の出場で得点はなかったが、同HCもこのときが来るのを待っていたのだろう。後半イをスタートさせ、イはハーフタイム以降13得点して期待に応えた。ようやく目覚めたイの活躍に会場は興奮に包まれ、スパーズのチームメートもイにシュートチャンスが来ると立ち上がってボールの行方を見つめた。自チームのベンチ前でイがオープンになっていたら、ベンチにいるスパーズの選手が「ここ!」と一斉にイを指さしてボールマンに知らせた。

 試合後イは、これまでの試合とこの試合の違いについて、「テクニックは同じだったがメンタルの部分。プレッシャーをすべて取り払い、自分が一生懸命に練習してきたことを信じた。昨日もその前もハードに練習した。そこから得た自信を試合につなげた。シュートが決まってうれしい。でも第4クォーターに全然3ポイントを決められなかったことに腹が立つ」と話した。実際、第4クォーターに4本目の3ポイントを決めているが、会場からの期待が高まる中、3ポイントが4分の1で終わってしまったことを悔やんだ。

 イが22得点5リバウンド2スティール1ブロックショットをマークしたスパーズはジャズに勝ったことで、一時は「セミファイナル」進出の枠に食い込んだ(のちに他チームに抜かれた)。

 最終試合となるフェニックス・サンズ戦でスターターに抜擢されたイは、前半に放った3本のフィールドゴール(すべて3ポイント)を成功させた。後半は3本のフィールドゴールをミスしたが、9得点7リバウンド2アシスト2スティール1ブロックショットを決め、4連勝でサマーリーグを終えたチームに貢献した。

 スパーズとの契約はサマーリーグ契約で、フリーエージェントのイは、もしNBAが叶わなかった場合、Gリーグを含めた来シーズンの行方について、「まだ何も決めていない」とし、「これからも頑張り続けて、どうなるか見てみる」と言った。

 ただ、「Bリーグのチャンピオンになっても満足はしない。まだまだ成長できる。挑戦し続ける」と話すイにとって、この夏の経験は、自らを一段と勇気づけることになったに違いない。

文=山脇明子

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