1時間前

NBAがYouTubeで本格配信? 約1600億円規模の巨大交渉、背景には地元局のビジネスモデル崩壊

NBAのローカル放映権のパートナー候補にYouTubeがあがっている [写真]=Getty Images

 NBAの試合が、YouTubeで見られる時代が来るかもしれない。ただし、これは日本を含む世界中のファンが、YouTubeNBA全試合を見られるようになると言う意味ではない。対象は、米国内における各チームの“ローカル放映権”だ。

『Sports Business Journal』によると、NBAは2027-28シーズンから、各チームの地元向け中継を集約するストリーミングハブの立ち上げを構想している。初年度は最大25チーム、将来的にはカナダに本拠地を置くトロント・ラプターズを除く29チームまで広げる可能性があり、契約額は10億ドル(約1590億円)を超える規模になると言う。その最有力候補と見られているのが、世界最大級の動画プラットフォームであるYouTubeだ。

 NBAの放映権は、大きく「全米放映権」と「ローカル放映権」に分かれている。

 全米放映権はリーグがまとめて販売する権利で、全米規模のテレビ局や配信サービスが注目カードを中継する。現在のNBAでは『ESPN』、『NBC/Peacock』、『Amazon Prime Video』がナショナルゲームを担当している。

 一方のローカル放映とは、各チームの本拠地周辺を対象にした中継のことを指す。米国内の「NBA League Pass」では地元チームの試合がブラックアウトされるため、ファンが試合を視聴するためには別途、ローカル放送を利用する必要がある。今回構想されているサービスも地域制限がかかる見込みだ。

 では、なぜNBAはローカル放映権の仕組みを再構築しようとしているのか。その背景にあるのが、リージョナル・スポーツ・ネットワーク、通称RSNの崩壊である。

 RSNとは、特定地域のプロスポーツを専門に扱うケーブルテレビ局のことだ。長年、RSNは地元球団の試合を大量に中継し、ケーブルテレビ事業者から得る契約料を原資として、チームへ高額な放映権料を支払ってきた。しかし、従来のケーブルテレビや衛星放送を解約し、インターネット経由の動画配信サービスへ移行する消費者が増えたことで、このビジネスモデルは急速に揺らいだ。バリー・スポーツの運営で知られるダイヤモンド・スポーツ・グループは、約90億ドル(1兆4330億円)の負債を抱え、2023年に破産申請。再建後はメイン・ストリート・スポーツ・グループへ改称したものの、再び経営難に陥り、2026年4月には事業を終了している。

 その影響で、アトランタ・ホークス、クリーブランド・キャバリアーズ、マイアミ・ヒートなど、全13球団が新たなローカル放送先を探すことになった。チームごとに放映先が分散し、視聴環境が不安定になるなかで、NBAはリーグ主導でローカル放映権を束ねる必要性を強めている。

 YouTubeが有力候補とされる理由は明快だ。すでに巨大なユーザー基盤を持ち、NFLでスポーツ中継を販売するプラットフォームとしての実績もある。NBAにとっては、ローカルゲームを一つの入り口に集約しやすく、ファンにとっても「どこで見ればいいのか」がわかりやすくなる可能性がある。

 一方で、対抗馬として存在感を増しているのが『DAZN』だ。同社は2026-27シーズンに向けて、ミネソタ・ティンバーウルブズやインディアナ・ペイサーズとローカル配信契約を締結している。『YES Network』や『MSG Networks』が独自配信アプリを終了し、デジタル配信権を『DAZN』へ一元化したため、ニューヨーク・ニックスとブルックリン・ネッツの地元向け配信も担当することに。『Forbes』によれば、今シーズンは『DAZN』が計10チームのローカル配信に関わる見込みだ。

YouTubeの対抗馬と目されているのがDAZN [写真]=Getty Images

 NBAのこうした変化は、日本のスポーツ視聴環境とも重なる。Jリーグは放映権をリーグで一括管理し、『DAZN』との長期契約を通じて、J1からJ3までの全試合を配信する体制を整えてきた。2026年には、それまでのJ1、J2に加え、2032-33シーズンまでJ3リーグのDAZN放映が決まり、J1、J2、J3の全試合が2032-33シーズンまで『DAZN』で放映されることになった。

 かつてスポーツ観戦は、地上波、BS、CSのどのチャンネルで放送されるかを探すものだった。だが今は、見たい競技やチームを持つプラットフォームを契約する時代へ変わりつつある。

 ただし、NBAの新構想が必ずしもファンの視聴環境を単純化するとは限らない。ローカルゲームがYouTubeや『DAZN』に集約されたとしても、全米放送を見るには『ESPN』、『NBC/Peacock』、『Amazon Prime Video』が必要になる。地元外の試合には、引き続き「NBA League Pass」という選択肢も残る。つまり、ローカル放映権の中央化は、チームにとって新たな収益源となる一方で、ファンにとっては新たなサブスクリプション登録を増やす可能性もある。

 放映権と言う巨大なビジネスは、ファンの視聴体験の変化によって、大きな転換期を迎えている。

文=Meiji

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