1時間前

【LA取材】八村塁「勝てた試合だった」…ヒート戦後のベンチで見つめた、“あと一歩”の景色

ヒート戦では敗れたとはいえ、八村は今季のベストと言えるパフォーマンスを見せた [写真]=Getty Images
ロサンゼルス在住ライター

■キャリアハイの7アシストに加えて21得点も勝利に導けず

 11月5日(現地時間4日)のマイアミ・ヒート戦。ロサンゼルス・クリッパーズはオーバータイム残り1秒に逆転の3ポイントシュートを許し、116-117で惜敗した。手中に収めかけていた今シーズン2勝目は、あと一歩のところでするりとこぼれ落ちた。

 自らのホーム、インテュイット・ドームでヒートの選手たちが狂喜乱舞の輪を広げるなか、クリッパーズの選手たちは力なくコートを去った。

 八村塁の姿が見えなかった。

 コートを一通り見渡したが、やはりいない。

 八村は、クリッパーズのベンチに座っていた。そして、チームメートが引き上げたあと、重い足取りでゆっくりとコートをあとにした。

「今日は勝てた試合だった。最後で負けてしまったので、すごく悔しい」。

 試合後のロッカールームでメディア対応した八村は、無念さを口にした。

 時に笑顔も見せた。だが、ベンチから立ち上がる気力さえ失っていた姿を見たあとでは、それが作り笑いであることは明らかだった。それでも「自分たちも若いチームなので、今は自分でもいろいろ探しながらやってる。そのなかでこうやってここまで来られて。すごい悔しいんですけど、これをまたいい勉強として、長いシーズンなので、それを生かしていきたい」と前向きに話した。

八村は積極的に攻撃をリードした [写真]=Getty Images

 このヒート戦で、八村は37分16秒プレーして、21得点、9リバウンド、自己最多の7アシストを記録し、1スティールも奪った。クリッパーズが第1クォーターだけで43得点し、ヒートを19得点に抑えて、途中20点リードした第2クォーターには、ブルック・ロペスとともにヤニス・アデトクンボを外側へ押しやってリバウンドを奪った。その攻撃権でゴール下へドライブ、ダブルチームを誘って、ワイドオープンで待っていたキートン・ワグラーへキックアウトし、3ポイントシュートを演出した。さらにデリック・ジョーンズJr.の3ポイントシュートもお膳立てし、リードを10点に広げてヒートにタイムアウトを取らせた。第1クォーターで11得点を記録していた八村にとって、ヒートのディフェンスから注目を集めるのは難しいことではなかった。

「とにかくアグレッシブにプレーしようと心がけていた。特にファストブレイクの場面では、相手の守備陣形が整っておらず、戻りも遅かったので、そこを突こうと狙っていた。今日はその点でうまくプレーできた。僕らはチーム全体でボールをシェアしようとしていて、パスを回し合った。だから僕自身も自然に(パスが)できたし、パスが回ったいい試合だった」と八村。

「ただ、結果としては敗れた」と、唇をかみしめるように言った。

■ルーHCの期待と八村が背負う重責

 クリッパーズは、サクラメント・キングスと対戦した開幕戦こそ勝利で飾ったが、その後7連敗。プレシーズンゲームでは3試合すべてでチーム最多得点を記録し、フィールドゴール成功率51.6パーセント(16/31)、3ポイント成功率61.5パーセント(8/13)、フリースロー成功率91.7パーセント(11/12)と、すべてで高確率を残した八村も、開幕2戦連続で2ケタ得点を記録したものの、2試合のフィールドゴールは27本中8本の成功と、好調とは言えなかった。さらに3試合目のオクラホマシティ・サンダー戦では、フィールドゴール11本中2本成功、3ポイント6本中1本成功の5得点と精彩を欠いた。

 サンダー戦後、クリッパーズのティロン・ルーヘッドコーチ(HC)は、八村について聞かれて「彼はよいシュート、つまり彼自身が好むシュートを打てている。相手がダブルチームを仕掛けてくる場面でも、我々は彼にボールを集めるようにしているし、彼は自分が優れたパッサーであることも証明してきた。インサイドを攻め、テンポよくプレーし、ペイントエリアに侵入して状況を的確に判断する、そうしたプレーを続けていれば、自然と彼のシュートチャンスは生まれてくる。彼がシュートを外しても気にしない。それよりも、正しいプレーをしてほしいと思っている」と期待を込め、「彼にとっては新しい環境であり、新しい状況だ。我々が彼をどう活用しようとしているのか、その役割に慣れていく必要がある。以前はコーナーに立って3ポイントシュートを打つのが主な役割だったかもしれないが、今はポストプレーなど、これまでとは異なる動きが求められている。お互いにその形に慣れ、最適なプレーを見つけ出そうとしている」と課題を挙げた。

 実際、八村はこのサンダー戦で左大腿四頭筋に痛みを感じながらプレーしており、この負傷のため、のちに2試合(4日時点)欠場した。ブランドン・イングラムやジョーダン・ミラー、ブラッドリー・ビール、マックス・ストゥルース(日本時間11月3日に復帰)ら、本来はチームの中心を担うべき選手たちが開幕から戦線を離脱するなか、ダリアス・ガーランドとともにチームをけん引しようとしている。しかし、プレシーズンゲームはわずか3試合にとどまり、最終戦から中6日空けて開幕戦を迎えたチームが連係を深めるのは容易ではない。八村が、開幕2戦目のロサンゼルス・レイカーズ戦後に「僕らは助け合わなければならない。僕はオールスター選手でもなければ、スーパースターでもない。だから僕らは、いかにして助け合うかを考えなければならない。そうすることで、僕にとってもチームメイトにとってもプレーがしやすくなる」と言ったのは、そういった背景からだ。今シーズン最多の24得点をマークしたゴールデンステイト・ウォリアーズ戦でも「新しいチームだし、若いので。ケガ人も多いし、ラインナップも変わったりするので、そういうところではケミストリーはまだまだ」と語っていた。

チームにおける八村が背負う責任は大きい [写真]=Getty Images

 故障者が多いなか、相手チームからの標的になる八村とガーランド。2人が背負う責任は大きく、サンダー戦で太ももの痛みがあることを誰にも言わず、八村がプレーし続けたように、ガーランドも背中の張りを感じながらプレーし続けている。

 ルーHCに現状でのチームの明るい材料とは何なのかを尋ねると、「チームとして結束し続けること。正しいやり方で物事を進めていくこと。今直面している困難に対して、戦い続けることだ。このチームには、似たようなスタートを昨シーズン経験した選手がいる。多くの故障離脱者が出ているが、前向きな姿勢を保ち、互いに支え合いながら前に進んでいく。選手たちは、まさにそれを実践してくれている」と力強く言い切った。

 昨シーズンのクリッパーズは、カワイ・レナードの故障やケミストリーの問題などで6勝21敗スタートを切ったが、42勝40敗と勝ち越しでレギュラーシーズンを終え、ウェスタン・カンファレンス9位でプレーイン・トーナメントに出場した。

 選手も入れ替わり、同じことが起きるとは限らないが、我慢を重ねた昨シーズンと同じ姿勢で、ともに成長していくことは可能だ。

 八村がヒート戦後、1人ベンチに残って、喜びを分かち合うヒートの選手たちを見た風景も、そのときの思いも、すべてがこれからにつながっていくはずだ。

文=山脇明子

八村 塁の関連記事

NBAの関連記事