2020.08.24
新型コロナウイルスの感染拡大を防止すべく、世界最高峰のエンターテインメント、NBAは3月13日(現地時間12日、日付は以下同)より2019-20レギュラーシーズンを中断することを余儀なくされた。6月に入り、7月31日からフロリダ州オーランドで22チームが参戦し、シーズンを再開することが決まった中、65試合前後を消化した各チームならびにその主要選手たちを振り返っていきたい。
※データは日本時間3月12日終了時点、%=パーセント、評価は上から順にS、A、B、C、D、Eの6段階
所属:ワシントン・ウィザーズ(イースタン・カンファレンス9位)
総合評価:A
■プロフィール
生年月日(年齢):1993年6月28日生まれ(27歳)
ポジション:ガード
身長/体重:190センチ/93キロ
NBAキャリア:8年目
<今季ここまでの功績>
特になし
<2019-20シーズン 個人成績>
平均出場時間:36.0分(リーグ5位)
平均得点:30.5得点(リーグ2位)
平均リバウンド:4.2本
平均アシスト:6.1本
平均スティール:1.2本
平均ブロック:0.4本
フィールドゴール成功率:45.5%
3ポイント成功率:35.3%
フリースロー成功率:84.2%
■主要項目におけるシーズンハイ(相手チーム名は略称)
出場時間:42分13秒(19年11月23日/対ホーネッツ)
得点:55得点(20年2月25日/対バックス)★
リバウンド:10本(2度)
アシスト:12本(19年11月23日/対ホーネッツ)
スティール:5本(20年3月2日/対ウォリアーズ)
ブロック:3本(20年2月2日/対ネッツ)
フィ―ルドゴール成功数:19本(20年2月25日/対バックス)
3ポイント成功数:8本(20年2月25日/対バックス)
フリースロー成功数:18本(20年2月24日/対ブルズ)★
★=キャリアハイ
昨年10月、ウィザーズと21-22シーズンからスタートする2年7,200万ドル(当時のレートで約77億7,600万円/2年目の22-23シーズンはプレーヤーオプション)のマックス額で延長契約を結んだビールは「俺は(ワシントン)D.C.を愛してる。ここは常にいたい場所であり、残りのキャリアすべてを過ごしたい場所でもあるんだ」と話し、ジョン・ウォール不在の中で今季を迎えた。
開幕3試合はいずれもフィールドゴール成功率が35.0%を下回ったものの、ホーム初戦となった開幕4戦目のヒューストン・ロケッツ戦では面白いようにショットが決まり、46得点8アシストの大暴れ。1点差で惜敗したとはいえ、延長なしのレギュレーションながら158-159という超ハイスコアリングゲームを最後まで戦い切った。
その後もスコアラーとして吹っ切れたかのように30得点以上を連発。ビールはウィザーズでスコアリングからプレーメイクまでこなし、獅子奮迅の活躍でけん引していくも、チームとして勝利を収めることはなかなかできず。
12月に入るとケガ人が続出し、ビールも12月下旬に右足を痛めて戦線離脱。2年半以上も戦い続けてきたが、連続出場試合記録も194でストップ。当時のチームメート、アイザイア・トーマス(現無所属)は『The Athletic』へこう話している。
「あれだけの連続出場試合記録がある場合、ケガをしないように自分の身体を最大限にケアしているはず。それに長いシーズンの中でささいなことにも耐えてプレーしていると思う。それにしても、(ビールの記録は)すごいよね。今はロードマネジメント(選手の疲労管理)が頻繁に行われていて、(その試合に)必要なければ選手たちは休息(Rest)となってベンチで座って見ているくらいだからね」。
1月中旬から復帰したビールだったが、なかなか勝てないチームに怒りを爆発させる。16日のシカゴ・ブルズ戦。後半に逆転を許してしまい、9点差で敗れた試合後、ビールは「俺は負けることが嫌いなんだ。今日は勝てる試合だった。このチームが勝ち始めて、カルチャーが変わるまで、厳しく叱責し続けていくつもりだ」と発言。何が欠けているのかと聞かれると、ビールは「試合に勝利すること。そして勝利するための姿勢と習慣を持つこと」と切り返し、悔しさを露わにした。
ビールの喝の効果もあってか、ウィザーズは徐々に持ち直す。八村塁が鼠径部の負傷から2月4日のゴールデンステイト・ウォリアーズ戦で復帰して戦力がそろったこともあり、オールスターブレイク前の7試合で5勝をマークし、イースト9位へと浮上。
「オールスターブレイク前に、俺たちが勝てたかもしれない試合が2つあった。だが俺たちは今、いい位置にいると思う」とビールが口にしていたように、8位のオーランド・マジックと3.0ゲーム差まで肉薄していた。
だがオールスター後にウィザーズは3連敗。そこからシーズン中断までに4勝4敗と持ち直したものの、3連敗が響いてしまい、マジックとのゲーム差は5.5へと広がってしまう。
その中で、スーパーエースと化したビールは今年に入って21試合連続25得点以上、オールスター後には53、55得点と、連夜の50得点超えと大爆発し、キャリアハイを更新。チーム成績が伸びず、3年連続のオールスター選出とはならなかったが、リーグ2位の平均得点をたたき出し、すばらしい働きを見せた。
ただ残念なことに、若手の育成を掲げている現状のウィザーズでは、ビールがいくら高得点を奪っても勝利に直結することはほとんど訪れなかった。今季ビールが40得点以上を挙げた10試合でウィザーズが勝利したのはわずか1度。連夜の50得点超えとなった2試合も全敗している。
その一方で、ビールが10アシスト以上を残した6試合で3勝3敗という戦績が示すように、エースがディフェンスを引きつけ、チームメートたちの得点機会を演出した試合では五分五分だったことから、勝利のためにはプレーメイカーとしてのビールも必要とされていたと言っていい。
もっとも、6月13日に『The Athletic』へ「正直な話、俺はゲームに対する考え方が変わったんだ。プレーしている限り、俺はもっともっとアグレッシブに行こうとね。そしてフロアの中で、俺はベストプレーヤーなんだという考えになったのさ」と話しているとおり、ビールはウォール不在の約1年半で選手として進化を遂げたことは間違いない。
シーズン再開に向けて、「俺のパフォーマンスは持続できるものだと思ってる。これまで以上にコートを走り回る必要はないからね。点を取りに行くだけさ。あとはファウルをもらってフリースローラインにもっと多く立って、さらに自分のゲームを広げていくことだと感じてる」と切り出し、「リムへのアタックを繰り返し、ダンクをしていくこと。それがさらに得点するチャンスを与えるだろうし、(チームメートへの得点機会も)クリエイトできるさ」と自信を見せていた。
7月7日の時点で、ビールが今季の第二幕でプレーするかは決まっていない。ウィザーズは8日にオーランドへ向かうのだが、スコット・ブルックスHC(ヘッドコーチ)は「(まだプレーするかどうか)最終的な決断は下せていない」と言及している。
それでも、「彼はすごくいい状態にある。フィジカル面のコンディションもすごく良くなっているし、他の選手たちと一緒に毎日向上を続けている。我々は皆、コート上で競い合って向上し、プレーオフの座をつかもうとしている。彼はいい状態に見える」と話しているように、ワークアウトを続けており、コンディションは良好だという。
最終的な判断はビールが下すため、今季はこのままプレーしない可能性があることも否定できないが、この1年半で深めた自身のパフォーマンスを、第二幕でも発揮してチームメートたちを引っ張っていってほしいものである。
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