2024.11.06
躍進を続けるバスケットボール男子日本代表の主力であり、B.LEAGUEを代表するスター選手の一人でもあるジョシュ・ホーキンソン(サンロッカーズ渋谷)。
ワシントン州立大学を卒業後の2017年にBリーグでプロデビューを果たすと、2023年には日本国籍を取得し、FIBAバスケットボールワールドカップ2023、パリ2024オリンピックと、主要国際大会で大車輪の活躍を見せてきた。
“鷹ちゃん”の愛称で親しまれるホーキンソンは、どのような思いでワールドカップ、オリンピック、Bリーグを戦ってきたのか。また、2028年のロサンゼルスオリンピック、成長を続けるBリーグ、10月に開幕した「りそなグループ B.LEAGUE 2024-25 SEASON」へ向けて、どのような思いを抱いているのか、語ってもらった。
――オリンピックはワールドカップよりハイレベルなチームが集う世界最高峰の大会でした。今回のパリ五輪にはどのような思いで臨んでいましたか。
ホーキンソン もちろんオリンピックのほうがハイレベルな12カ国が揃っていますし、ワールドカップのときにドイツ代表と試合をして(63―81で敗戦)、ヨーロッパの主要な強豪国がどれだけハイレベルなのかもわかっていました。オリンピックへ向けて、より綿密に準備していかないと厳しい戦いになるということはわかっていたので、しっかり準備して臨むことを心がけていました。
――個人的にワールドカップよりもさらにモチベーションが上がるようなことはなかったですか。
ホーキンソン これといって何か大きな要素があってモチベーションが変わったことはなかったです。ワールドカップやオリンピックは、世界の中で最もレベルの高いコンペティションということはわかっていました。自分がワールドカップで強豪チーム相手にもしっかりやれることを証明できていたので、それをもう一度やるだけだと考えていました。何かが起点になって「よしやるぞ!」とスイッチが入ったことはなく、再び自分の力を証明する舞台が来たなという印象でした。
――ワールドカップに続きパリオリンピックでも日本代表を支える大車輪の活躍でした。
ホーキンソン まず、ワールドカップに関してはホスト国ということで、沖縄アリーナで完全ホームの状況で試合をすることができました。お客さんを見たらエナジーもすごかったですし、今までで最も楽しかったゲームの一つでした。お客さんたちの顔を見たら、日本を代表してプレーできたことがすごく光栄でしたし、お客さんたちが歓喜で泣いていたり、笑顔をもたらしてくれている。すごく思い出深い大会です。
――パリオリンピックで経験したような完全アウェーの雰囲気は楽しめるタイプですか。
ホーキンソン 完全アウェーのような環境も楽しむようにしています。ホームチームを応援する大歓声の中で、NBAではよくアウェーチームの選手が決めてシーンと静まる瞬間がありますよね。自分がプレーしていてああいった瞬間が訪れたときはすごく気持ちがいいんです。お客さんを黙らせるようなプレーができるという点では、ホームとはまた違った意味で楽しめましたね。
――大会後には好スタッツを記録していたこともあり、国内外から「ホーキンソンはNBAでプレーできる」という声もありました。
ホーキンソン 自分がいい成績を残して、家族や友人などから、レブロン・ジェームズ、ケビン・デュラント、ステフィン・カリー、こういった選手たちよりもスタッツでは上にいるということを称賛されたり、メディアでも報道されて、すごく楽しかったし光栄でした。オリンピックでスタッツ上いいプレーができたというのは、個人的にもすごく良かったです。
――日本代表はパリ五輪で一段落。今度はロス2028オリンピックへの道のりが始まります。
ホーキンソン アジアカップなども含めていろいろな大会があります。次のオリンピックは4年後。パリオリンピックを終えた今、率直に4年後というのはまだ先のことだなと感じています。ただ、自分にとっては次のオリンピックが年齢的にも最後のチャンスかもしれないということもあるので、長い目で見たらもちろん出たいです。
日本代表の成長を助けるという意味では、アジアカップ、ワールドカップであったり、4年後のロス五輪までにいくつか大きな大会があるので、そこは長期的目標と短期的目標を明確にしていきたいです。まずは11月と2月にアジアカップ予選があるので、そこにしっかり照準を合わせてコツコツとやっていけば、自ずと次の目標に向かっていける…そういった形で段階を踏んで進んでいきたいと思います。
――気づけばBリーグ8年目です。来日してから今まで、どんな部分で成長できたと感じますか。
ホーキンソン 8年前にファイティングイーグルス名古屋へ入団したときは、今よりも華奢でした。日本の外国籍のレギュレーションでは重いビッグマンが多いので、来日当初は5番ポジションの選手に対峙するときは少し苦労しましたね。ただ、信州ブレイブウォリアーズに移籍してから、ディフェンス力を向上できたと思います。勝久マイケルヘッドコーチがいて、当時は選手だったアンソニー・マクヘンリー(2023年に現役引退/現B1琉球アシスタントコーチ)、今もプレーしているウェイン・マーシャル選手(現B2信州所属)といった日本のレジェンドと言われるようなベテランの外国籍選手から、どのように守るか、どのように身体を使うか、ディフェンスの構築という部分をたくさん学びました。振り返ってみれば、自分にとって信州での3年間がすごく大きかったです。オフェンスに関しては、所属クラブによって多少役割が変わる部分はありますが、プロキャリアをスタートさせたときから大きな変化はなく、主にディフェンスが日本に来てからかなり向上したと感じています。
――日本代表選手たちは「バスケ界を盛り上げたい」と口にしてきました。2023年に帰化したホーキンソン選手は、どのような思いでプレーされているのでしょうか。
ホーキンソン 自分のキャリアを振り返ってみると、B2からスタートして、B1に移籍して、帰化をして、日本代表の中心選手になって、という夢みたいな物語が続いています。8年前にこういったキャリアを歩むとはまったく想像していなかったです。一般的にはサクセスストーリーを進んでいるように見えるかもしれませんが、今でも「もっと良い選手になりたい」という思いは変わらないですし、それが自分のモチベーションになっています。
これまで自分自身のステップアップをしてきましたが、日本バスケの成長の助けになりたいとも思っています。そのためにも自分が毎日ベストプレーヤーでいるということを目標にしていますし、誰か自分を支えてくれている人たちがいる限り、そういう人たちを代表してプレーすることを心がけています。次の世代の子たちのためにも、もっとバスケットボールが人気になる、もっとたくさんの人たちがプレーをする、そういうことに貢献できるような“スター選手”のような立ち回りができたらいいなと思っています。
――今シーズンの開幕戦では完成間もないハピネスアリーナ(長崎)でプレーし、日本代表のチームメートである馬場雄大選手ともマッチアップしました。
ホーキンソン ハピネスアリーナだけでなく長崎市に行くこと自体が初めてだったので、長崎という街も含めて素晴らしい場所だなと遠征を楽しんでいました。ただアリーナが大きいだけじゃなくて、選手のプレーがよく見えるスタンドの構造も素晴らしいなと思いましたね。
うちのチームはスイッチディフェンスが多くて、ババとマッチアップすることがありました。特にGAME1ではショットクロックぎりぎりで一対一を仕掛けてきて決められてしまいましたが、GAME2は向こうもスイッチしてきてやり返す場面がありました。代表で仲良くしていたマイキー(川真田紘也)ともマッチアップする機会があって、すごく楽しい瞬間でした。
――今シーズンは日本代表でチームメートだった渡邊雄太選手が千葉ジェッツに加入しました。シーズン終盤の第31節(4月12日・同13日)に対戦します。
ホーキンソン 元NBA選手がBリーグに入ってきてくれるということは、日本のバスケットボール業界にとって非常に大きなことだと思います。彼は衰えていないですし、ベテランというわけでもない。プライムタイム(脂が乗っている時期)という非常にいいタイミングで戻ってきてくれたので、リーグ自体の競争力を上げてくれる選手だと思います。個人的には彼とは代表のチームメートとしてプレーしてきたので、プレシーズンゲームで彼とマッチアップする時間も楽しめましたし、レギュラーシーズンでは4月まで対戦することはないですけど、また彼とマッチアップする機会があれば非常に楽しみです。
――最後に今シーズンの目標と、ファンへのメッセージをお願いします。
ホーキンソン 目標は「毎日いい選手になる」ということを続けていくことです。日々ベストを更新していくことは忘れずに取り組んでいきたいと思っています。チームとしては、まずCSに出場しないとBリーグチャンピオンになるチャンスすらないので、まずはその舞台に立てるように一つひとつ積み上げていきたいと思います。
ファンの皆さんのサポートは本当に素晴らしいです。大きな期待を寄せてくれていると思いますので、そこに応えられるように頑張ります。青山学院記念館でのホームゲームもあるので、私自身に対してもそうですが、サンロッカーズ渋谷というチームを応援していただけるとうれしいです。引き続き応援よろしくお願いします。
取材・文=藤田皓己
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