2025.12.30
ディフェンスがついていても、体勢が崩れていても、難しい位置でも関係なく決めきる。タフな状況を作った相手からしてみれば、納得いくはずもない。そんな“理不尽”な3ポイントシュートをクリストファー・スミスは決め続けてきた。
「いつもコフィ(・コーバーン)や(メイヨ)ニックが邪魔してくるけど、その中でも決めきることを練習で想定できているので、それがタフショットにつながっていると思います」
そう笑いながら話す広島ドラゴンフライズの背番号8は、たとえ難しい状況でも打ちきれる自信がある。それを可能にしている要因の1つは、特徴的な高軌道のシュートだろう。スミスが放つ3ポイントシュートは手元から高く上がり、優雅なアーチを描いてほぼ真上から小さなリングに吸い込まれる。
そんな高軌道シュートを習得したのは、8歳の頃だという。当時のマッチアップ相手は10歳上と7歳上の兄弟。小学3年生が高校生と対峙するようなもの。体格も経験も圧倒的に違う高い壁だ。
「兄弟が2人とも年上で背が高いので、常にブロックされていました。それを避けるために高い軌道のシュートを覚えないといけなかったんです」

[写真]=B.LEAGUE
「(高軌道の)シュートが入るようになってから、『この2人相手に入るんだったら、他の誰が相手でも決められるよな』という自信がついて、それがずっと僕のマインドセットになっています」
8歳のときに壁を乗り越えてから24年。32歳になった広島の背番号8は、これまで数々の理不尽ショットを沈めてきた。直近ではB1リーグ戦第32節の長崎ヴェルカ戦で第4クォーターの終盤に連続スリーを沈め、チーム最多24得点で83-82の勝利に貢献。ひりつくような激戦を楽しんでいた。

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第33節の島根スサノオマジック戦では両試合とも大接戦の末に惜しくも連敗を喫したが、その中でもスミスの活躍が光った。4月18日のGame1では80-83で迎えた試合残り19秒で難しい3ポイントシュートを決めきりオーバータイムに導く理不尽ぶりを発揮。38分29秒のプレータイムで31得点7リバウンドを記録した。

[写真]=B.LEAGUE
そして、1点ビハインドの試合残り4.4秒、広島は逆転勝利がかかった最後の攻撃を迎えていた。朝山正悟ヘッドコーチ(HC)は試合後の会見で直前の指示を明かした。
「自分たちは2点でもオープンショットであれば3点でも、どちらも狙える状況ではありました。なので、どこか1つに絞ったわけではなく、狙い目は3つありました。相手が3ファールだったので、すぐにファールで止めてくる予想をしている中で、その次をどういう形でやるかという部分まで確認しました」
勝負が決まるラストプレー。山崎稜のスローインから三谷桂司朗を経由して、最後はトップで受けたスミスが左サイドへ持ち運び、相手2人に詰められながらも3ポイントシュートを打ちきった。朝山HCは最後のシーンをこう振り返る。
「(スミスは)昨日のオーバータイムに持ち込んだときのショットのように、味方にいながらも理不尽だと思うようなショットを決められる選手ですし、それはリーグの中でもなかなかいないと思います。シュートが入る、入らないはあると思いますが、ああいったショットを打ち続けられるメンタルはすごいですし、僕が彼のことをリスペクトしている部分です。全然レベルは違いますけど、自分も同じシューターとしてやってきた中で、あのメンタルやあの間合いでも打ち続けること、その技術力も含めて普段の背景がしっかりしていなければ、なかなかできないと思います。それに加えて彼はリーダーシップや『自分が決めきってやる』というメンタルを持っている選手なので、自分たちとしてはああいうシチュエーションの中で彼が選択の中の1つに入ることは間違いないです。狙い目として別の方が良かったんじゃないかということは言えますが、でもそれはあのメンバーの中で最善を尽くしたということに過ぎないので、そこに関しては結果論です」

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「シュートは入る時も入らない時もありますけど、自分の中であのシュートを打つのを恐れたり逃げたりすることは絶対にありません。島根さんがしっかりファールしてきたり、準備してきたりした中で、昨日は決められましたけど、今日は入らなかった。ただただその結果が全てだと思います」。スミスは試合後にそう潔く言いきった。

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「もちろんドウェインという本当に大きな存在がいなくなったことで、自分だけじゃなくて、全員が自分たちの基準を上げていかないと勝っていけないと思います」
島根戦では勝利に導けなかったが、スミスはこれまでと同じように、どんな状況でも自信を持ってシュートを打ち続ける。なぜなら「恐れることはない」から。

[写真]=B.LEAGUE
その言葉には、8歳の頃から積み上げ続けてきた自信や、強い意志でシュートを打ち続けてきた努力が詰まっている。スミスの理不尽スリーには、納得いくほどの理由がある。
文=湊昂大
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