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貪欲に戦える準備はできているか…広島・朝山正悟HCが求めた「プロとしての向き合い方」と若手の覚悟

年内最後の試合を勝利で終えた広島が得たものとは[写真]=B.LEAGUE
広島のスポーツライター

 広島ドラゴフライズは12月27、28日にB1リーグ第17節で茨城ロボッツをホームに迎えた。Game1は72-87で敗戦を喫したが、Game2で98-88のリベンジを果たし、年内最後の試合を勝利で締め括った。

 クリストファー・スミスは相変わらず貪欲だった。Game1は敗れたものの、5本の3ポイントシュートを含むチーム最多19得点や6リバウンドでチームをけん引。Game2は第2クォーターに倒れ込みながら「目を閉じて打ったら入りました(笑)」というタフショットを決め切るなどチーム最多22得点を挙げて勝利に貢献した。「もうハードにやるだけだったので、前日の反省を生かして、しっかりカムバックできた試合だったと思います」と振り返った。

 チームはGame1で前半から競り合う展開となったが、後半に警戒していたはずのロバート・フランクスを乗せてしまい、試合を通して8本の3ポイントシュートを含む32得点を許した。1点差で迎えた第4クォーターは開始から茨城に13点のランで突き放され、オフェンスのリズムも崩した広島はわずか7得点に抑えられて悔しい敗戦を喫した。

 特にGame1ではスミスやドウェイン・エバンスらが安定して躍動する中で、日本人選手の活躍は物足りなかった。佐藤涼成の負傷離脱もあって奮起が求められる中で、それぞれシュートは打ち切れていたが、決定力を欠いて得点を伸ばせなかった。その中でも、渡部琉が後半に気を吐いて8得点。ただ、12月に肩のケガから復帰したばかりの25歳は、「涼成がケガしたり、チームのシュート確率が悪かったところもありますが、オフェンスに関してもディフェンスに関しても、僕たちの遂行力が足りていなかったです」と悔しさを滲ませた。

■「向き合い方が甘い」敗戦を経て朝山HCが突きつけたプロの覚悟

朝山HCの要求に、若手選手たちはGame2で見事に応えた[写真]=B.LEAGUE


 悔しい敗戦を喫した第1戦から雪辱がかかった第2戦に向けて、朝山HCが特に選手たちに対して伝えたことは、「試合への向き合い方」だった。

「みんな試合に出たい中でプレータイムを勝ち取っていかないといけないのはプロフェッショナルとして当たり前のこと。なぜなら、それでお金をもらっていて、僕らはそれでご飯を食べてるから。そこに対しての向き合い方が甘いということはしっかりと伝えました。そこを前提として、自分たちがどういうマインドで一戦一戦に向き合わなきゃいけないのか、見に来ている人たちに何を伝えたいのか。勝つ日もあれば負ける日もある中で、それに対しての向き合い方や準備の仕方がどうだったのかっていう話をしました」(朝山HC)

 真価が問われる第2戦、まずは三谷桂司朗がフランクスとマッチアップし、タイトなディフェンスで奮闘。前日に成功0本だった3ポイントシュートも3本決めて、果敢にペイントアタックする姿勢も見せた。渡部もプレー時間や得点数は前日より少なかったが、ディフェンスで体を張ってつないだ。朝山HCは、「まずはこちらが伝えて体現してほしいところをやりきってくれたと思います。桂司朗も琉もフランクス選手に対してしっかりと戦ったところは非常に良かったです」と評価した。

 Game1でプレー時間3分40秒のみだったキャプテンの上澤俊喜は、「各々でもっとインテンシティを上げられたのに、それができなかったゲームだったので、今日の試合は『強度を上げよう』と、もうそれだけを話して試合に入りました」とチームへの声かけを明かし、Game2では自身も「1本目を打つ時にしっかり決めきることは意識しています」という言葉通り、第2クォーターに途中出場して3ポイントシュートを2本決め切ってチームを勢いづけた。

 前日に失速した勝負の第4クォーターでは、山崎稜に5本目の3ポイントシュートで待望の1本が決まり、ホームブースターが一気に沸いた。それに三谷と上澤も続いて3ポイントシュートを成功させて勝利への流れを作った。上澤は直後にペイントアタックで2得点も決め切った。

 貪欲なプレーが勝利を引き寄せた。上澤は、「相手が僕たちの外国籍選手を守ってきた中で、ボールを止めないように僕たち(日本人選手)も流れのままシュートを狙いにいけた結果、僕も得点できましたし、アシストもできたので良かったと思います」と胸を張る。

■「貪欲に戦える準備はできているか」――勝利への執念を“ベーシック”に

スミスの“試合への向き合い方”は若手選手の見本ともなる[写真]=B.LEAGUE


 Game2でカムバックを果たし、朝山HCは、「気持ちの部分が1つ大きかったと思います」と振り返る。

「昨日からの今日は、勝った負けただけじゃなくて、その中での戦い方が全然違ったと思います。それは技術的に何か変わったり、いきなり体が強くなったり、足が速くなったり、高く飛べるようになったりしたわけではなくて、ただ単純に戦えたし、その準備がしっかりとできていたと思います」

 積極的に戦う姿勢が遂行力となりチームの力になる。もっと貪欲に戦うこと。それを朝山HCは常に求めてきた。

「貪欲さっていうのは、クリスを見たら日本人の選手たちとサイズ自体は変わらない中で、ファイトの仕方ですよね。そこは『やられたくない』、『俺がやってやるんだ』っていう貪欲さが源にあると思いますが、(若手選手は)その辺がやっぱりまだまだ足らない。そこをしっかりやっていかないと、自分たちは上位に上がっていけないと思うので、自分自身の大きな仕事の1つとしてこれからも取り組んでいきたいです」(朝山HC)

 貪欲さは敗戦によってスイッチが入るものではなく、コートに立つ上でのベースでなければ、勝ち星を積み上げるのは難しい。常にアグレッシブに戦うスミスは言う。

「プロになる前からずっとアグレッシブにやり続けていますし、自分の中で積極的にやっていない状態になってしまうと、チームに何も貢献できていないと感じてしまいます。僕のマインドセットは、スタートからだろうと、ベンチからだろうと、コートでは常にアグレッシブに戦い、ゲームに影響を与えるようなプレーを意識しています」(スミス)

 結果よりもまずコートで見せなければならないものがある。貪欲に戦える準備はできているか。上澤は、「今日の試合の強度を負けたからやるのではなくて、常にこの強度をベーシックにできるように練習中からやっていきたいです」と今後に向けて力を込めた。

取材・文=湊昂大

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