2023.06.22

主力が万全ではない状況の中、福岡第一が九州大会男子5連覇達成

九州大会4連覇を達成し、インターハイ制覇を目指す福岡第一 [写真]=佐々木啓次
バスケットボールキング編集部。これまで主に中学、高校、女子日本代表をカバーしてきた。また、どういうわけかあまり人が行かない土地での取材も多く、氷点下10度を下回るモンゴルを経験。Twitterのアカウントは @m_irie3

■延岡学園が福岡2強の一角を崩す

 6月17日・18日、福岡市総合体育館(照葉積水ハウスアリーナ)とアクシオン福岡において、「第76回全九州高等学校体育大会バスケットボール競技大会」が開催。九州・沖縄8県のインターハイ予選を勝ち抜いた1位と2位、男女32チームが集結、熱戦を繰り広げた。

 男子の準決勝に勝ち上がった4チームを組み合わせ順で紹介すると、福岡県1位の福岡第一高校と大分県1位の別府溝部学園高校、宮崎県1位の延岡学園高校と福岡県2位の福岡大学附属大濠高校。ぞれぞれが持ち味を生かしたゲームとなった。

 試合の行方が最後まで分からなかったのが延岡学園と福大大濠戦。第3クォーター終了時には54−42と延岡学園が12点ものリードを奪い優位に見えたが、福大大濠はともに岩下愛育(3年)と湧川裕斗、高田将吾(ともに2年)が積極的にアタック。守ってもゾーンプレスとマンツーマンのチェンジングディフェンスで延岡学園のターンオーバーを誘発させ、次第にビハインドを詰めていった。

準決勝、最後までリングを目指した福大大濠の湧川 [写真]=佐々木啓次


 そして、残り21秒、岩下のフリースローが1本決まり、61−61と福大大濠は同点に追いついた。ただし、延岡学園の最後のオフェンスで、内田悠介(2年)ゴール下にポジションを取ると福大大濠はファウルで止めるのが精いっぱい。残り時間は0.3秒。内田は落ち着いて1本目を決めると再逆転。2本目はリングを弾いたがこの間にタイムアップ。17年ぶりとなる決勝戦にコマを進めた。

 崎濱秀斗、山口瑛司(ともに3年生)という自慢の2ガードが故障のために万全なコンディションではなかった福岡第一。2人の出場時間を制限した中、他の選手の頑張りで初日を突破。迎えた別府溝部学園との準決勝ではロハンドジュラ オマニュド ジョン(2年)の高さと大庭涼太郎(3年)の積極的なシュートに手を焼く展開に。それでも46−41で迎えた後半、福岡第一は控えの高口陽季(3年)が攻防にわたり躍動する。高口はゾーンディフェンスの裏をついたポジショニングでゴール下のシュートを決めたかと思えば、速攻の先頭を切る走力を見せつけチームに勢いをもたらしていく。

高さに挑戦した別府溝部学園の喜屋武 [写真]=佐々木啓次


 福岡第一は控え組の活躍もあり、第3クォーターで35−22としてリードを広げると、そのままそれをキープして試合を終了。苦しい台所事情の中、93−76で別府溝部学園を破り、決勝進出を決めた。

■福岡第一が勝ちにこだわり頂点に

 決して本調子ではない福岡第一に、福大大濠を大熱戦を末に倒した延岡学園が挑戦する構図となった決勝戦。しかし、ウインターカップ出場枠獲得、さらにはインターハイに向けて勢いを増していきたい福岡第一は試合開始から万全な試合運びを見せた。

 ティップオフ直後から積極的にゴールを目指したのが世戸陸翔(3年)。持ち前の走力を活かしてゴール下に走り込み、次々と得点をあげていく。これに呼応するように崎濱秀のシュート、山口のアシストが冴え渡り、一気にリードを広げていった。最初の10分間が終わるると、福岡第一は33−17とリードを奪った。

走力が魅力の福岡第一の世戸 [写真]=佐々木啓次


 対する延岡学園は準決勝の疲れからか勢いに乗れない。試合の主導権を完全に握られ、連続得点が奪えない。成松輝彩(3年)のドライブや永徳翔(3年)の3ポイントシュートで追撃するが一旦引き離された状況を引き戻すことができなかった。

 福岡第一はベンチ入りした15名がコートに立ち、チームのコンセプトである堅守速攻を体現。最終スコア107−72で勝利し、九州大会5連覇を達成した。

 試合後、メディア対応した福岡第一の井手口孝コーチは、「とりあえずウインターカップの出場枠を獲得できたので責任を果たしました」とホッとした表情を見せた。崎濱(秀)と山口という自慢の2ガードがケガのため本調子ではない中での勝ち上がりだったが、「この大会の意味を選手たちが理解していました。とにかく勝たないといけないことはわかっていたので」と言葉を続けた。

 連覇がかかるインターハイの開幕までほぼ1カ月。本番に向けては「万全なコンディションで大会を向けたい」と課題を語る。インターハイが終わればU18日清食品トップリーグが始まり、その後にはウインターカップ予選まで毎週試合が組まれていく。

「それだけに鍛えるのは今の時期しかないかもしれないですね。少しぐらい頑張ってもケガをしない体作りをしたい。トレーナーと相談して、ラグビーの日本代表に負けないくらいのメニューを組んで選手たちを鍛えますよ」と前を向いた。

 一方敗れた延岡学園は大きな収穫と明確な課題を得た大会になった。楠元龍水コーチは、「(福大)大濠さんに勝って一つ自信をつけました。しかし、(福岡)第一さんとの決勝はきつかったですね。ここで勝てたら本当に力をつけた証拠だったのですが。自分たちの目標である日本一になるのはこの壁を乗り越えなければいけないですね。足元から見つめ直して取り組んでいきます」と、大会を振り返った。

ドライブでゴールをこじ開けた延岡学園の成松 [写真]=佐々木啓次


 この2年間、県大会では小林高校に敗れ、インターハイ出場を逃してきた。「力はあったと思うのですが、うまく噛み合いませんでした。今年、県大会で勝つことで自信がつきました」と、チームの状況を語る楠元コーチ。「準決勝でも控えの選手が出たときにミスをするなど、選手層でも課題を見つけました。自分たちがこだわってきたことで日本一になりたい」と、決意を新たにした。

取材・文=入江美紀雄
写真=佐々木啓次

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