1時間前

「アジアの代表」として戦う八村、河村へ期待…NBA Japan渡邉GMが語る育成とBリーグ連係

NBA Japanの渡邉GMにシンガポールでインタビュー [写真]=バスケットボールキング
バスケットボールキング編集部

アジアに約7000万人いる10代選手をつなぐ「NBAライジングスターズ・インビテーショナル2026」が開催。大会の意義や八村塁河村勇輝への期待、Bリーグとの連係をNBA Japanの渡邉和史GMに聞いた。

インタビュー・文=入江美紀雄(バスケットボールキング編集部)

■高校単位にこだわる理由とアジアが持つポテンシャル

――今回で2回目を迎えた「NBAライジングスターズ・インビテーショナル」ですが、国を代表するチームではなく、学校単位のチームが対戦するレギュレーションになっています。NBAがこのようにユニークな大会を立ち上げた狙いを教えてください。
渡邉
 アジアには我々の統計上、約7000万人の10代のバスケットボール選手がいると考えています。それぞれの国で高校生レベルの大会はあるものの、それらを一つに束ねる大会はこれまで存在しませんでした。いつかそういったものを実現したいという構想があるなかで、八村塁選手や河村勇輝選手の台頭があり、今まで雲の上の存在だったNBAが、アジアにとっても身近な存在になってきていると実感しました。それならば、彼らを呼んで「夢は実現できる」とリアルに感じてもらうためにも、大会を開催する必要があると考えました。高校単位にすることで、コンペティションを通じて全体の底上げを図ることもできると考え、この形に決めました。

――この大会の対象はアジア(オセアニア)地区だけなのでしょうか。
渡邉
 今のところはそうです。ただ、ありがたいことに、中近東やアフリカ、ヨーロッパのNBAオフィスからも「来年参加校を送っていいか」といった声をいただいています。そこは慎重に、どういう大会フォーマットにできるかも含めて検証しなければいけませんが、今年は台湾のチームが増えたりもしていますので、いろいろと検討していきたいと思っています。

――日本での開催も期待したいところです。
渡邉
 本当にやりたいです。アジアにはバラエティ豊かなチーム・選手がいるという現実を、日本の高校生に肌で感じてもらいたいです。日本のお客さまにもアジアの高校トップレベルを見ていただきたいですし、仮に日本が決勝に進まなかったとしても、中国や韓国などのアジアの強豪チームのプレーを見ることは、日本のバスケットボール界にとって非常に大事なことだと思っています。また選手目線で言えば、今回も精華女子高校や鳥取城北高校の子たちがセントーサ島などを訪れて、シンガポールの文化を学んでいます。海外のチームにも、そうやって日本の文化を肌で感じてもらうことができればうれいしいですね。ただ、日本の高校生が初めてパスポートを取得して、日本以外の文化に触れる機会は残しておきたい。期待はたくさんありますが、気持ちは裏腹です(笑)。

――昨年初めて開催され、今回は2回目となります。大会の進化をどう捉えていますか。
渡邉
 一番大きなポイントは、日本、タイ、オーストラリア、台湾の4カ国で予選が行われたことだと思います。予選を実施することで、それぞれの学校が「国を代表している」というメンタルを持てるようになります。また、勝ち抜いてきただけあって、競技レベルも昨年よりかなり高まっています。さらに、大会全体が広く認知されることにもつながりました。ウインターカップのベスト8決定のタイミングで発表したのですが、多くの高校生がそれをきっかけに気づいて予選に足を運んだり、配信を見たりしてくれました。そして今回は鳥取城北高校と精華女子高校が頑張ってシンガポールまで来てくれた。それを我々がSNSで発信していくことで認知がどんどん高まり、「来年はウインターカップに出ることはもちろん、まずはこの大会の選抜枠を目指したい」と思ってくださる高校生が増えることは、非常に意義深いことだと考えています。

女子は精華女子が優勝。昨年の京都精華学園に続き、日本勢が連覇した [写真]=NBA Rising Stars Invitational

――この年代で海外のプレーを体験することの意義をどうお考えですか。
渡邉
 すごくよい経験になります。学校が日本を代表すれば、個人で代表にならなくても海外の多様なスタイルや手の長さ、フィジカルに慣れることができます。昨年、精華女子高校と福岡大学附属大濠高校に出場してもらいました。経験のないバスケットボールを体感したことで、帰国後も両校ともU18日清食品トップリーグで優勝を果たしました。そうした海外経験が生きているのだなと実感しています。また、競技面だけでなく、選手たちが試合を重ねるなかできちんと目と目を合わせながら握手していく姿がすごく美しいなと感じました。人間としても一皮むけて、「地球って一つなんだ、狭いんだ」と彼らが感じてくれていることが何よりうれしいです。

■八村・河村への熱視線とNBA Japanのデジタル戦略

――渡邉さんがGMに就任されてから約2年が経ちますが、国内の盛り上がりをどう感じていますか。
渡邉
 国内の配信パートナーが「Prime Video」「NBA docomo」に変わったことも含めて、得られるリーチは以前の10倍に増えています。そこに良い波を運んでくれたのが、ニューヨーク・ニックスの53年ぶりの優勝でした。1973年以来、半世紀以上を経ての古豪の悲願の戴冠は、アメリカ中はもちろん、日本のファンにとっても本当に大きなニュースになりました。あれだけファンの人たちが盛り上がっているのを見ると、NBAの凄さがストレートに伝わったなと感じます。当然ながら八村塁選手や河村勇輝選手の活躍もあります。河村選手がこれからインディアナ・ペイサーズの一員としてNBAサマーリーグに参加しますが、昨年、シカゴ・ブルズのユニフォームを着て、NBAの選手と1対1をしている絵を見るだけで、「日本はすごいな」「NBAっておもしろい、見てみたいな」と興味を引きつける大きな流れが来ているなと感じています。

シンガポールでも八村塁の注目度は異常に高かった [写真]=NBA Rising Stars Invitational

――今回、初めて開催された「NBA HOUSE Japan 2026」も大成功を収めました。
渡邉
 目標の1万人を上回る、1万4000人の方々に足を運んでいただき、大成功だったと思っています。あえて入場料を無料にし、より多くの方々にNBAに触れていただくことで、新規ファンの獲得や既存ファンへのアプローチ、グッズ販売などにつなげることができました。将来的には、ニューヨークにあるようなビルではなくても、みんなが集まってパブリックビューイングを観たりグッズを買ったりできる「NBAストア」を日本国内に常設オープンしたいという野望もあります。アパレルからもNBAを盛り上げていきたいですね。

――SNSなどのデジタルコンテンツの活用についても教えてください。
渡邉
 X(旧Twitter)だけでなく、InstagramやTikTok、YouTubeショートなども積極的に活用しています。今回もデジタルコンテンツチームが現場に部屋を構え、撮影した映像を直ちに編集して投稿しています。情報を多くスピーディーに出していくことで、大会の認知や素晴らしさを届けています。

――今回、八村選手も現地を訪れましたが、アジアでの八村選手や河村選手への人気をどのように見られていますか。
渡邉
 八村選手や河村選手の人気はアジアでも本当にすごいです。もちろんメディアの反応も大きくて、八村選手の会見では各国メディアが積極的に話を聞いていました。八村選手もそれにこたえるかのように、フレンドリーに対応していたのも良いシーンだったと思います。「自分は日本代表であると同時に、アジアの代表なんだ」という認識を持っていますよね。今回彼が現地に来てくれたことで、高校生たちにもそのエリートとしてのマインドが伝わったのではないでしょうか。精華女子高校や鳥取城北高校の子たちとハイタッチをしながらフレンドリーに交流している様子は、本当に素晴らしい光景でした。

――Bリーグとの連係についてはどうお考えですか。
渡邉
 我々はBリーグさんと戦略的パートナーシップを提携しています。もっと積極的に、Bリーグさんと共同で選手を育んでいければなと思っています。そこは日本のバスケットボール『エコシステム(競技全体を支える仕組み)』全体で協同できればと。リーグは違えど、結局はみんな仲間ですから。すべてはバスケットボールのために、ですね。今回、「NBA HOUSE Japan 2026」の会場や日程を選んだのも、隣でアルバルク東京滋賀レイクスの試合があったからこそだったんですよ。NBA HOUSEの特別ゲストだったクリス・ボッシュ氏(元マイアミ・ヒートほか)をトヨタアリーナ東京でBリーグのファンにあいさつしていただきました。ボッシュ氏も非常に喜んでいましたね。こうしてNBAファンにBリーグを、BリーグファンにNBAを知ってもらい、ファンからもお互いバスケットを支え合う、同じバスケなんだから同じように楽しましょう、という機運を盛り上げられればと思います。

八村 塁の関連記事

NBAの関連記事