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『B MY HERO!』
4月になり新学期がスタート。新チームには新入生も正式に加わり、インターハイ予選に向けて本格的にチームの強化が進んでいるころだ。バスケットボールキングでは2023年に注目したい高校生ケイジャーをピックアップ。高校バスケ界をけん引するエース候補生を紹介する。
文=小沼克年
2023年、福岡大学附属大濠高校(福岡県)の13番を背負うのは2年生の湧川裕斗だ。181センチの新司令塔は決してスピードで切り裂くタイプではない。だが、本人が得意と話す「ピック&ロール」から状況に応じた多彩なプレーを繰り出す。
視野の広さとパスセンスに優れ、瞬時にノーマークの味方を見つけて得点を演出するだけでなく、チャンスと見れば躊躇なく3ポイントや柔らかなフローターでシュートを決める。「シュート力と“目”に関しては優れたもの持っています」と、指揮を執る片峯聡太コーチも昨年から湧川のポテンシャルを評価していた。
昨年は兄である颯斗(滋賀レイクス)がエースガードを示す13番を背負ったため、“兄から継承”と言えば耳触りがいい。けれど、弟もしっかりそれに見合った実力があるからこそ、2年生ながら重責を託されたのである。湧川が片峯コーチから13番を言い渡されたのは、2023年が明けですぐのことだったという。
「年明けに『明けましておめでとうございます』って先生にLINEをしたら、『今年は裕斗が13番だぞ』っていう返信をもらいました。最初は驚いたんですけど、『やるしかないな』っていう気持ちになりました」
湧川は中学1年の頃から福大大濠でプレーすることを夢見ていた。しかし、福大大濠は毎年のように2メートル近いビッグマンが入部してくる強豪校だ。「この身長で活躍するにはポイントガードしかない」。そう思った湧川は、中学3年から本格的にポイントガードを本職とする選手へと歩み始めた。
「ガードは常に相手をだまし続けろ」。指揮官からそんなアドバイスももらい、コート上では裏をかくノールックパスでも会場を虜にする。片峯コーチは「頼れるエースはいないが、試合ごとにエースになれるような選手が揃っている」と現在のチームを表現しており、そういった日替わりヒーローを生み出すには、試合をコントロールする司令塔の働きも重要になるだろう。
「去年のガードにはお兄ちゃんと4番の鍋田憲伸さん(法政大1年)がいて、ずっと先輩方に支えられていたんですけど、今年はしっかりとチームを引っ張っていきたいと思います。13番はチームの司令塔なので、自分が崩れることなく周りを生かせられるようにしていきたいです」
チーム浮沈のカギを握るのは湧川裕斗。そう断言できるほど、福大大濠のプレーメーカーは重要な存在だ。