2025.05.31

2大会連続五輪出場の東藤なな子が新たな代表活動へ意欲「焦りや迷いは捨てて自分の良さを出せるように」

練習後、取材に対応した東藤なな子 [写真]=バスケットボールキング
フリーライター

世代の代表として“同級生”の増加を歓迎

 5月20日から28日の期間で行われた女子日本代表第1次合宿。この合宿には上は35歳から下は19歳まで幅広い世代の25名が参加したが、その中で一際多い“学年”が2000年&2001年の早生まれの選手たちだ。

 顔ぶれは、梅木千夏(デンソーアイリス)、奥山理々嘉(日立ハイテククーガーズ)、今野紀花(デンソーアイリス)、東藤なな子(トヨタ紡織サンシャインラビッツ)、野口さくら(アイシンウィングス)、星杏璃(ENEOSサンフラワーズ)の6人(※所属は2024-25シーズンのもの)。Wリーグの2024-25シーズンでも、それぞれが自チームで欠かすことのできない戦力として奮闘し、ほどんどが過去にU18や19女子日本代表に名を連ねた選手たちだ。

 その6人の中で日本代表としてトップの経験を持つのが東藤だろう。20歳で東京オリンピック2020に出場。チーム最年少ではあったものの、存在感を示した。その後も幾多の国際大会に出場し、パリオリンピック2024にも出場を果たしている。

ゲインズ新HCのもと、新生女子代表がスタート [写真]=田島早苗

「私がU18や19の女子日本代表にいたとき、周りのメンバーのレベルがすごく高いと思っていました。だけど、そのときの同世代たちがこれまで日本代表に選ばれることがあまりなかったので、やっとみんなの力が認められて一緒にできるなという楽しみがあります。だから私もみんなに負けないで、一緒に(最終メンバー)選ばれられるように頑張りたいし、NTC(味の素ナショナルトレーニングセンター)で合宿をしているというのもあって、U19のころを思い出して、ちょっと趣き深いなと思っています」と、東藤はそのような“同級生”の存在について声を弾ませた。

 東京オリンピックでは『ディフェンスの東藤』という印象を強く与えたが、札幌山の手高校(北海道)在学時は元々点取り屋。卒業後に入団したトヨタ紡織でも1年目からエースを担い、多くの試合で2ケタ得点を挙げるなど、攻防両面においてチームを引っ張ってきた実績を持つ。そのため、現在の日本代表についても「東京オリンピックのときは自分にできることがディフェンスだという認識だったのですが、今はそれをアグレッシブにやることは大前提として、その上乗せとしてオフェンスでどれだけチームに貢献できるかと考えています」と、言う。さらに自身の役割については、「チャンスのタイミングでは3ポイントシュートなど積極的に外からシュートを狙っていきたいですし、その中でカッティングやペイントアタックも自分の役割の一つかなと認識しています」と語った。

ゲインズ新体制の中、自然体で最終ロスター争いを楽しむ

 22日にはメディア向けに公開練習が行われたが、「コーリー(ゲインズ)ヘッドコーチの雰囲気作りですごくリラックスしながらできました。プレースタイル的にもカッティングや合わせの動きの感覚を大事にしている方なので、そういう意味では自分自身すごくやりやすいです」と、東藤は言う。また、「最初のミーティングでコンセプトの紹介があったのですが、そのコンセプトがトム(ホーバス)さんと似ていたので、根底的なもの、感覚的なものは似ているのかなと思っています」とも教えてくれた。

 先のコメントの通り、公開練習は見ているこちら側も強く感じるほど明るい雰囲気で行われ、メリハリがある中で選手たちの楽しそうな表情が多く見られた。

「自然にそういう空気感になっていくというか。作ろうと思って作っているというよりかは、コーリー・ヘッドコーチがそういう雰囲気にしているのもあると思いますし、みんなが楽しんでできているからこそ、ああいった雰囲気になっていくのかなとは感じました」(東藤)

 もちろん、メンバー争い、そして7月には王座奪還のための女子アジアカップも控えている。選手個人としてもサバイバルはこれからも続いていくだろう。

 だが、東藤からは「それこそ必死に頑張りすぎて視野が狭くなることも嫌だし、これだけいいメンバーとできているという楽しさも忘れたくないので、余計なことは考えずに焦りや迷いは捨てて自分の良さを出せるように頑張ろうという気持ちでいます」と、自然体でのコメントが印象的だ。これには、これまで日本代表としての積み重ね、特にパリオリンピックに向けたメンバー争いの経験が大きかったようで、「パリまでの3年間でそういうのを学んだかなと思います」という。

東藤は「余計なことは考えずに焦りや迷いは捨てて」と自然体を強調 [写真]=田島早苗

 2大会連続のオリンピック出場も、歩んできた道のりを振り返れば決して楽ではなく、試練もたくさん味わってきた。しかし、それが彼女を精神的にもたくましくさせたのだろう。気負わず平常心で臨もうとする東藤にとって、新指揮官の作り出す練習の雰囲気は後押しともなるようで、「自然にあのような空気感ができているので、すごく安心しますね」と、笑顔を見せる。

「ヘッドコーチが変わって新体制になるので、本当にゼロからのスタートだと思っています。いかに早くヘッドコーチのバスケットを理解して、自分の中に落とし込んでパフォーマンスとして出せるか。そのスピード感は大事にしていきたいなと思っています」

 24歳のスモールフォワードは新たな戦いに向けて冷静に、そして時に熱い思いで取り組んでいる。

文・写真=田島早苗