2026.08.04
NBA選手・八村塁が、自身の経験や視点を次世代と共有するために立ち上げたプロジェクト「BLACK SAMURAI」。2025年に行われたそのキャンプで、世界基準の熱量に触れた一人が、八村の母校・仙台大学附明成高校に所属する今野瑛心だ。FIBAU17ワールドカップ2026でも日の丸を背負って戦った今野は、キャンプで八村やNBAコーチからの教えをいかに自身の力に変え、最高峰の夢へと繋げているのか。
インタビュー・文=小永吉陽子
NBA選手・八村塁が世界の舞台で培ってきた学びや視点、そしてマインドセットを日本バスケ界と共有したいという思いから誕生したプロジェクト。2025年の「THE CAMP」ではIGアリーナを舞台に中高生向けのキャンプが3日間にわたって開催され、最終日には1万人を超える観客が見守る中、キャンプ参加者によるスペシャルマッチ「THE SHOWCASE」が行われた。2026年は「CAMP」「SUMMIT」「Homecoming」の3つのテーマ、神戸・愛知・富山の3つの会場でイベント開催が予定されている。

[写真]=小永吉陽子
――昨年「BLACK SAMURAI 2025 THE CAMP」への参加が決まった時の心境を教えてください。
今野 塁さんがキャンプを開催すると知ったとき「出たいな」と思いましたが、まさか自分が出られるとは思っていなかったので、選ばれたと聞いたときは率直にうれしかったです。フィルさん(フィル・ハンディ)のようにNBA選手を教えているコーチも来るキャンプだと聞いたので、自分の力を発揮して、思い切りやってやろうと心に決めて臨みました。
――八村選手に対してはどのような印象を持っていましたか?
今野 塁さんは僕の憧れの選手で、目標としている選手なんです。
――八村選手は仙台大明成高校の先輩ですね。いつから憧れているのですか?
今野 僕は小学校から野球をしていて、バスケを始めたのが中2からと遅かったので、まずは「バスケってどういうものかな?」とその頃からNBAを見始めました。そこで「NBAでこんなに頑張っている日本人選手がいるんだ!」と塁さんのことを知り、そのあとに塁さんが(自分の)地元の明成出身だと分かったときには「こんなに身近にすごい人がいたのか」と衝撃を受けて、そこから憧れの存在になりました。僕も塁さんのように成長したいと思い、明成に進学しました。

高校の先輩である八村は憧れの存在 [写真] = Getty Images
――キャンプの雰囲気はどうでしたか?
今野 まず、IGアリーナの大きさに圧倒されました。IGアリーナは今まで自分がプレーした中で一番大きい会場だったので、その大きさや観客の多さに圧倒されました。キャンプでは、フィルさんと塁さんが誰よりも汗をかいて教えてくれました。パス一つにしろ、ドリブル一つにしろ、強度が高かったです。参加した選手たちもその強度でプレーしようとしていたので、とても引き締まったキャンプだったと思います。
――キャンプでは自分のプレーは出せましたか?
今野 自分は他の選手に比べたら1対1ができるとか、シュートがめちゃめちゃ入るわけではないので、明成でやってきたディフェンス、リバウンド、ルーズボールといった泥臭いところは絶対に負けない自信があったので、そこはハッスルできました。ただ、自分をアピールすることに関しては、納得いかなかったというか、もう少しやれたんじゃないかなと思います。
――キャンプ中、フィルコーチや八村選手から学んだことで、印象に残っている言葉やアドバイスはありますか?
今野 フィルさんからは「練習では友達との仲の良さは関係なく、目の前の敵だと思ってそいつを本気で倒しに行け!全力で戦え!」という言葉をもらい、それがとても印象に残っています。
塁さんからはジャンプシュートのコツを教えてもらいました。ドリブルからのジャンプシュートを打つときは、ボールを一回下げてから構えるんじゃなくて、「ドリブルをついて、上がってきたボールをキャッチするタイミングと同時にジャンプをすれば、もっと速いリリースで打てる」と教えてもらいました。自分はジャンプシュートが得意なので、ほんの零コンマ何秒のリリースの差がブロック回避につながるということをアドバイスしてもらい、本当にその通りだなと思って意識するようになりました。

八村からジャンプシュートのコツを直接伝授された[写真]=小永吉陽子
――キャンプを経て、日常の取り組みや意識にはどのような変化がありましたか?
今野 自分はキャンプとか、アンダーカテゴリーの合宿だと声が出せなくなるタイプだったので、BLACK SAMURAIのようなキャンプに出ることで、たくさんライバルがいる中でも、どうやって自分のいいところを出せばいいのか勉強になりました。そういう経験が、今年に入って「U17ワールドカップ」と「U18アジアカップ」の代表に選ばれたことにつながったと思います。
――直近では日本代表として「FIBA U17バスケットボールワールドカップ2026」に出場しました。手応えは?
今野 初めて世界を相手に戦ってみて、自分が通用したのは1対1のディフェンスだったので、そこは明成でやってきたことは間違いなかったと再認識できましたし、ディフェンスが自分の生き残る道だと思いました。ただ、オフェンスでは、まだまだ海外の高さやフィジカルにやられてしまう部分があったので、そこは課題です。
――世界の強豪と戦う中で、キャンプでの学びが生きた場面はありましたか?
今野 やっぱり、フィルさんに言われた「目の前の敵を倒しに行け」との言葉を意識して戦うことが重要だと感じました。U17ワールドカップでは世界のトップ選手と対戦するということで、アメリカやフランス代表の選手をTikTokや映像を見て調べたんです。そこで「すごいな」って思うこともあったんですけど、そういう有名な選手たちに名前負けしないようにするためには、フィルさんに言われた「目の前の敵を倒す」という気持ちが大切だし、その言葉はこれからも生きてくると思いました。

「目の前の敵を倒す」強い気持ちで世界と戦い抜いた[写真]=fiba.basketball
――世界を経験して新たに突きつけられた課題はありましたか?
今野 技術的にまったく歯が立たなかったということはなかったですが、バスケに対する情熱とか、意識に差があったんじゃないかと感じました。
海外の選手たちは高さもフィジカルもあるのに、自分たちよりルーズボールやリバウンドに飛び込んでいたし、試合中にミスがあったときはケンカになるくらい選手同士が言い合ったりしていて、これがフィルさんの言う「目の前の敵をやっつけろ」ということだと感じました。日本のような小さい選手はそういうところで負けちゃいけないのに、海外の選手のほうが一つ一つのプレーに情熱を出していたのは悔しかったですし、そこが日本の課題だと感じました。
――2026年の「BLACK SAMURAI SUMMIT」への参加が決定しています。2度目の参加となる今回はどのようなテーマを持って臨みますか?
今野 自分は去年もキャンプに出させてもらったので、今回も自分の持っている力を最大限に発揮して、去年より成長したところを、塁さんやコーチに見せたいです。
それと今言ったように、海外の選手たちとの意識の差を埋めるのは、日頃の練習からリバウンド一つにしろ、ディフェンスにしろ、自分の全力を出してやることが大事だと思います。「練習だからこれくらいでいいや」と思ってやっていると本番の試合でも出てしまいます。そういう日頃の一つ一つの行いが、最後は大きな差になるんじゃないかと感じたので、キャンプでも一つ一つの練習から全力でやっていきたいです。

[写真]=小永吉陽子
――今野選手が目指す選手像は?
今野 明成では新チームになってから3番ポジションにコンバートして、エースとして任されています。NBAのプレーオフを見ていても、塁さんはチームが苦しい時にシュートを決めていて、そこは本当に尊敬するところです。自分も明成では塁さんと同じ「背番号8」をつけさせてもらっているので、目標としては塁さんのように、苦しいところでシュートを決めたり、声を出したりして、チームを勝たせる選手になりたいです。
――当面の目標、そしてキャリアを通じた最終的な目標を教えてください。
今野 明成での目標はウインターカップで優勝することです。日本一を獲るためにはブラックサムライキャンプでやってきた積極性を生かしたいですし、僕自身、昨年は怪我をしていて「U18日清食品トップリーグ」に出場することができなかったので、今年はトップリーグで強豪校と試合をして、もっともっと成長したいです。
将来の夢はプロバスケットボール選手になることが一番の目標です。選手としてこれだけは負けたくなというのは、みんなが嫌がる泥臭いところで頑張れる選手になることです。そこは、将来どんなチームでプレーしても、変わらない自分の生きる道だと思っています。
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