2025.05.09

河村勇輝がNBA挑戦1年目を総括…一つずつ壁を乗り越え来季を見据え、代表活動についても言及

河村勇輝が挑戦したNBA1年目を振り返った [写真]=Getty Images
ロサンゼルス在住ライター

改めてNBAの厳しさを感じたプレーオフ

NBAプレーオフ2025」ウェスタン・カンファレンス第1ラウンドで、メンフィス・グリズリーズがオクラホマシティ・サンダーにスイープされた翌日4月28日(現地時間27日)、河村勇輝がシーズン終了のオンライン会見を行った。

 2Way契約の自らはポストシーズンに出場できないためプレーしなかったものの、プレーイントーナメントから6試合のポストシーズンを戦ったチームと帯同して、「雰囲気だったり、プレーの強度の違いをすごく感じました」と印象を話し、「プレーオフになればなるほど、ローテーションプレイヤーの人数もすごく減ってきて、他の選手よりも違いを生み出せる選手が生き残っていると感じた。僕も違いを生み出していけるような選手にならないといけないと思うし、あとは大前提ディフェンスができない選手はプレーオフの試合にはなかなか出られないとグリズリーズにいてより感じているので。直近は本契約を目標にしていますが、その先の一番大きな目標に向けて、ディフェンスのところはよりクリアにしていかないといけないと思います」と、尽きることのない課題があることを痛感した様子。

プレーオフでもシーズン同様、チームメートを鼓舞した [写真]=Getty Images

「試合には出ていませんけど、緊張感のある、あの雰囲気を感じられたことで、バスケットボールへの熱だったり、自分の目標に対する熱というのが、より高まりました」と貴重な経験を嚙みしめた。

 ちょうど2週間前、プレーイントーナメントに向けて主力を温存したグリズリーズのレギュラーシーズン最終試合で、河村は途中出場ながら、自己最長の28分5秒出場し、いずれも自己最多の12得点5リバウンド5アシスト1スティールを記録した。

「自分はNBAでプレーできるということを証明したかった」と臨んだ同試合では、第2クオーターにバックコートでスティールを奪い、ゴールに突進したマービン・バグリー三世に後ろ向きのままパスを出し、ダンクに繋げるハイライトも飛び出すなどの活躍で、最大41点差をつけて大勝したチームに貢献。試合後、河村について聞かれたGGジャクソンは、「友達と話していたんだ。もし勇輝が6−2(188センチ)だったら、誰にも止められないだろうってね。なぜなら彼はディフェンスの前にとどまっていて、いつも正しい時に正しい位置にいる。あの華やかなパスもそうだ。的確なタイミングで的確なところにくる。とんでもないシューターであり、競争者でもある」と言った。

 だが、それこそが「小さくてもプレーできる。NBAでプレーできるんだっていうことを証明したい。それが僕の一つのミッションだと思っています」と言う5−8(173センチ)の河村の挑戦なのだ。

周囲のコメントからもわかる河村の成長

 エグジビット10契約でトレーニングキャンプに挑み、プレシーズンゲームで結果を残して2Way契約を手に入れた。グリズリーズは故障者が多かったことで、特にシーズン前半はNBAのベンチ入りの機会も多く、Gリーグメンフィス・ハッスルに行けば、主力としてプレー時間を得て、NBAで学んだことを試行できた。

 シーズン終盤は、シューターという役割になることが増えたが、「そこでしっかりと3ポイントでチームの勝利に貢献できることを僕の中では証明できたんじゃないかと思っている。ただ、それが最終的に結果に繋がらないこともあったりして。そうなると、より僕がコートに出たときにチームの勝利に直結できるようなプレーだったり、ガードとしてのコントロールがまだ足りないんじゃないかと感じました。そこの一つの大きな原因としては、やはりディフェンスのところ。Gリーグは特にNBAよりも、よりインディビジュアルな(個人的な)プレーだったり、1対1というのがすごく多いと思うので、そういったところで1対1でアドバンテージを取られてしまうということがあったのかなという…。そこはやっぱりクリアにしていかないと、よりレベルの高いNBAではやっていけない」とGリーグの中でも課題を見つけた。

NBAGリーグを行き来する環境の中、壁を乗り越えていった [写真]=Getty Images

 河村は、1年目に特に気にかけていたことについて聞かれ、「英語はもっと話せないと、より深いコミュニケーションを取れない。ポイントガードとしてやっていけない」と、英語のコミュニケーションを高めることにも時間をかけてきたことを明かしたが、その成果を感じていたのが、ハッスルのTC・スワースキーヘッドコーチ。河村の1シーズンの成長について、シューティングの向上とともに「コミュニケーション力がシーズンを通して非常に向上した。チームメートと話すだけでなく、コート上でのプレーやカバレージの観点から見てもその成長は素晴らしかった」と称賛した。

 1月には、新たな2Way契約選手の加入に伴い、ともに行動することが多かったコリン・キャッスルトンが解雇となった(キャッスルトンは最終的にトロント・ラプターズと契約)。2月にはベテランのマーカス・スマートがワシントン・ウィザーズにトレードになり、レギュラーシーズン終了まで2週間あまりとなったところで、チームを指揮して6年目だったテイラー・ジェンキンスHCが解任となるなど、NBAの厳しさを目の当たりにし、「いつカットされるかわからない状況の中で一日一日、試合だけじゃなくて、練習の中でも自分がここにいる意味というものを証明しなければならない。そういった意味では精神的にもすごく鍛えられましたし、NBA、またGリーグ、このアメリカのバスケに順応するために試行錯誤して、自分なりに考えて、またチームメートの支えを受けながらここまで来られました」とメンタル的な成長も実感したようだ。

契約次第では日本代表活動に参加を希望

 今後は、サマーリーグへの参加を目指して体作りに励み、NBAとの契約次第で可能であればアジアカップの出場も望んでおり、「NBAと同じぐらいオリンピックで日本として結果を残したいという目標がある。アジアカップで結果を残してFIBAランキングを上げることで、これからのワールドカップだったりというところにもつながる」と日本代表への思いを口にした。

状況が整えば代表でのプレーを望んでいる [写真]=Getty Images

「欲を言うのであれば、初めて自分を評価してもらったメンフィスの地でプレーして、ファンの皆さんやザック(クレイマン)GM、コーチに恩返ししたい気持ちはある」と来シーズンもグリズリーズに戻りたい気持ちも打ち明けたが、「これからどうなるかわからない。NBAは流動的なので、常にアジャストする必要がある」と事情も把握している。

 ただ、今後どんな状況になろうとも変わらないことは、河村のNBAへの挑戦はまだまだ続くということ。

「(アメリカは)間違いなく実力の世界。どれだけGリーグで活躍してもNBAで活躍していなければ、コーチやグリズリーズの選手からの厚い信頼は得られない。そういった部分で言えば、まだまだ足りないところはいっぱいある」

 一つ乗り越えれば、またぶち当たる壁。河村は、それらを乗り越えながら目標に向けて突き進んでいく。

文=山脇明子

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