2024.10.03
10月18日、19日に川崎市とどろきアリーナで行われる川崎ブレイブサンダースvs横浜ビー・コルセアーズを前に、川崎の飯田遼と横浜BCの杉浦佑成による対談が実現。両チームはBリーグ初年度の2016-17シーズンからB1に所属し、リーグ公式戦の通算対戦成績では川崎が34勝6敗と大きくリードする。ただ、2022-23シーズンのチャンピオンシップでは横浜BCが2連勝を飾り、翌シーズンの対戦も2勝2敗と星を分け合うなど、ライバルとしてしのぎを削ってきた。同い年の両選手だが、じっくりと話す機会は初とのこと。“神奈川ダービー”に向けてコート内外について語り合ってもらった。
インタビュー=酒井伸
写真=Bリーグ
ーーお互いのことをいつ頃から知っていましたか?
飯田 大学の時です。僕がBチームの時は、試合で直接対戦することはありませんでしたが、試合に出ていた杉浦選手の存在を知っていました。
杉浦 最後のインカレでは準決勝で戦って、マッチアップしました。
ーーその準決勝では杉浦選手の所属する筑波大学が飯田選手の拓殖大学に73-70で勝利しました。
杉浦 鮮明に覚えていないですけど、たしかリーグ戦では拓大に勝てなかったんじゃないかな……。
飯田 そうそう。(※関東大学リーグでは拓殖大が2戦2勝)
杉浦 当時1年生の菅原暉(群馬クレインサンダーズ)がビッグショットを決めて、僕たちが勝ちました。アップセットを起こした試合だったと思っています。
飯田 僕たちはリーグ戦で2勝したのがビックリだったというか、「勝てたね」というような感じでした。筑波大は強いイメージがあり、チーム内でも「一発勝負の筑波大は怖い」と話していたら、そのとおりになってしまって。ずっと接戦の試合で、最後にやられてしまいました。
杉浦 僕たちには、一発勝負は強い雰囲気がありましたね。それは僕が1年生の時も2年生の時も、ずっと勝てなかった東海(大学)にインカレの決勝で勝って、一発勝負で結果を残していましたから。勝てる雰囲気はありました。
ーー当時はお互いのことをどのような選手だと見ていましたか?
飯田 大きくて、走れて、中でも外でもプレーできるイメージがすごく強かったです。1年生の頃から試合に出て、活躍していたので、同い年ながらすごいなと思っていました。
杉浦 飯田選手はチーム事情で、4番(パワーフォワード)ポジションでプレーしていたと思います。シュートがうまくて、自分に求められていることをこなす仕事人タイプでした。
ーー2人とも現所属チームに加入して2シーズン目に突入しました。加入前はチームについてどのような印象を抱いていたか聞かせてください。
飯田 伝統のあるチームで、川崎ブレイブサンダースと聞いたら、バスケットを知る人なら強いイメージを持っているのかなと。そう思ったままで、いいチームという印象がすごく強かったです。
杉浦 僕が加入する前のシーズンに初めてチャンピオンシップに出場して、ベスト4まで進んだこともあり、すごく勢いがありました。河村勇輝選手を中心に、アップテンポなスタイルで“イケイケ”でしたね。
ーー実際にそのチームに加入して、驚いたことは?
飯田 川崎のYouTubeを見ていたこともあって、みんなが賑やかなのかなとイメージしていましたけど、意外とすごく真面目というか。オンとオフのメリハリがしっかりしていると感じました。あとはベテラン選手が多く、よく考えて練習やトレーニングに取り組んでいる印象を受けました。
杉浦 加入前に話したことがあるのは(森井)健太だけでしたけど、若い選手が多いこともあってワイワイしていて。やる時はやりますけど、オフコートではお調子者な選手が多いです。
飯田 (笑)
杉浦 明るい選手が多い。だから川崎とは対照的かもしれない。落ち着いていないかな(笑)。
飯田 横浜BCは若いチームだよね?
杉浦 僕と健太が日本人で最年長だからかなり若いね。
飯田 全然違う。川崎では野﨑(零也)と同い年だけど、まだ若手~中堅の部類に入っちゃうから。立場も対照的だね。
ーー杉浦選手は日本人最年長選手として、コート内外で引っ張っていくタイプですか?
杉浦 僕よりは、健太が率先してやってくれますね。ただ、コート上ではみんなが自立しています。年齢が近いこともあって、健太を中心に意見を交換し合える環境が整っています。
ーー飯田選手は川崎が4チーム目、杉浦選手は横浜BCが5チーム目です。新しいチームに加入する際、適応する秘訣や苦労したことはありますか?
飯田 僕は最初の移籍が一番怖くて、本当に何もかもわからない状況でした。年齢も25歳でしたから。でも経験したら、移籍しないと得られないものもあったというか。同じチームで長くプレーする選手もすごいと思いますけど、自分が移籍して知らない土地に行けば、人間関係もイチからで、バスケットもイチから。適応力というか、そこでどのぐらい自分を出していいのかは少しずつわかるようになってきました。今はそこまで深く「これをやらなければダメ」というのはないですけど、最初は移籍するのに力を使うなと思いました
杉浦 どのチームもみんなが優しく、温かく迎え入れてくれたので、人間関係の部分で苦労した印象はなくて。ただ、引っ越しは大変だなと。プレー面でいろいろなことをできるわけではないので、まずシュートで、そこから自分の得意なことをアピールしようと考えています。ディフェンスのやり方がチームやヘッドコーチによって違うので、より考えながらプレーする必要があると思っています。
ーー引っ越しの際に苦労したことや家選びのこだわりを聞かせてください。
飯田 家を選ぶのは楽しいんですよ。いろいろな部屋を見られるので。ただ、僕が最初の頃に反省したのは、荷物を多くしてしまうと面倒臭いということ。山形(ワイヴァンズ)から香川(ファイブアローズ)に移籍する時、荷物をすごく減らしました。使わないものを捨てて、荷物をコンパクトにして引っ越したのは良かったです。家選びのこだわりはお風呂の大きさ。僕は湯船にしっかりと浸かりたいので。杉浦は何かある?
杉浦 僕はあまり選ぶのが好きじゃなくて。探す段階で「最高じゃん」と感じる家に出会ったことがない。でできるだけや安い家がいいし、できるだけ広い家がいいし、できるだけ新しい家がいい。そうすると、何かを妥協しなきゃいけなくなるけど、住んだらどの家もめっちゃいいやんって。住めば都とはよく言ったものだなと。
ーープレシーズンの“神奈川ダービー”は100-94で川崎に軍配が上がりました。
飯田 川崎は課題もそうですけど、自分たちの強み、やらなければいけない部分がすごく明確になった試合でした。観客が入ったプレシーズンゲームは新チームになってから初めてで、もちろん勝敗は大事ですけど、結果より内容がチームにとってすごくプラスだったと思っています。
杉浦 昨シーズンからスタイルがガラッと変わって、ボールも人も動くようなバスケットを体現できる時間帯があったと思います。外国籍選手が1人出られなかったこともあり、いわゆるオンザコート「0」の時間帯がありましたけど、それでもみんなが足を動かし、コミュニケーションも取れていい部分もあったと思います。みんなが手応えを感じた試合だったと思うし、もっと良くなれると思えた試合でもありました。
ーーお互いにHCの交代、選手の入れ替わりがあり、新しいチームです。飯田選手は横浜BC、杉浦選手は川崎についてどのような印象を受けましたか?
飯田 河村選手やデビン・オリバー選手といった自分で得点を挙げられて、クリエイトもできる選手がいなくなり、どのようなチームなんだろうと思っていました。実際に対戦すると、それぞれがよりアグレッシブになり、ボールもよく動いていました。嫌なチームというか、どこからでも得点を奪えるアグレッシブなチームというイメージです。
杉浦 今までよりテンポが上がり、ロスコ・アレン選手やアリゼ・ジョンソン選手もボールをプッシュしていました。よりスピーディーなバスケットになって、止めづらかったです。
ーーその試合前には2人で会話したようですね。
飯田 バスケットに全然関係ない話です(笑)。控え室の前で会って話してという感じで。
杉浦 僕としてはお礼を言いたいことがあって。これまでは、話したことはなかったよね?
飯田 なかったね。
杉浦 お互いに知っていて、意識しているけど。
飯田 (笑)
杉浦 きっかけがなかったからね。どこかで一緒になることがなく、タイミングがないままきちゃった。
飯田 たしかに。(拓殖大出身の)阿部諒(サンロッカーズ渋谷)選手とか共通の知り合いはいるけど、その人を交えて話すタイミングがなかったので。この前が初めてで、ちょっと不思議だね(笑)。
ーー同い年のコミュニティはないんですか?
飯田&杉浦 ないですね。
杉浦 みんなが意識しているけど、ないです。
飯田 仲がいい人はいるけど、全然話さない選手もいて。仲が悪いわけではないんですけどね。
杉浦 人数も多いですし。
飯田 僕たちが大学3年生の時にBリーグが誕生し、特別指定選手の制度もできたので、選手たちが各チームに散らばったのかなと。
ーーBリーグが誕生して9シーズン目に突入しました。Bリーグを目指すようになったきっかけがあれば聞かせてください。
飯田 杉浦は大学3年生の時、どこかのチームで特別指定選手だった?
杉浦 SR渋谷の特別指定だったよ。
飯田 すごい。大学で活躍していた選手は4年生になる前から特別指定選手としてチームに加わっていたので、プロになるイメージがつきやすいよね。僕はあまり深く考えてなく、夏に信州ブレイブウォリアーズの練習に参加させてもらいましたが、特にそこから話が進むことはなくて。リーグ戦が終わってから声を掛けていただいて、ご縁があって良かったなと。就活をしていなかったので、今なら何を考えているんだろうと思いますけど(笑)。
杉浦 大学2年生まではNBLのチームに加入してプレーして、引退後はその企業に勤められればいいなと思っていました。でもプロ化すると聞いた時は「マジか」という思いでした。プロになるイメージを持っていなかったので大丈夫かなと。ただ、大学3年生の時、特別指定としてSR渋谷に加入してからは、大学卒業後はBリーグでプレーしたいと思っていました。
ーー10月18日、19日に“神奈川ダービー”が開催されます。同じ県同士の対戦はいつも以上に意識するものですか?
杉浦 意識しますね。横浜と川崎ではエリアが違いますけど、同じ神奈川県です。神奈川県といえば、横浜BCでありたい。そのためには川崎より強くて、いい成績を残したい気持ちがあります。
飯田 60試合のうちの数試合ではありますけど、同じ神奈川県で隣の街。僕たちはもちろん、ファンの方々も「横浜BCには負けたくない」、「川崎には負けたくない」という気持ちが強いと思います。その結果が集客や試合の盛り上がりにも反映されているので、特別な一戦であることは間違いないと思います。
杉浦 アリーナはアウェーであってもホームのような雰囲気。
飯田 お互いに行きやすいからね。アウェーという感じはしないよね。移動は長くないし。
杉浦 たしかに。
ーー“神奈川ダービー”で注目してほしい自チームの選手を教えてください。
飯田 川崎には神奈川県出身選手が2人いて、1人は背番号2の小針幸也。桐光学園高校、神奈川大学の出身で、社会人になるまでずっと神奈川県でバスケットをプレーしてきています。もう1人は篠山竜青選手。所属は川崎ですけど、出身は横浜です。本人たちがどこまで意識しているのかわからないですけど、昔から両チームを見てきたことは間違いないと思うので、2人の気合いの入れ方に注目してほしいです。
杉浦 僕たちには3人の神奈川県出身選手がいます。横浜出身の須藤昂矢、キング開、横須賀出身のナナーダニエル弾。彼らにより注目していただけるとうれしいです。
飯田 須藤選手と小針は同じ高校だよね。
杉浦 年齢は2個違いか。
飯田 小針の情報によると、須藤選手はめちゃくちゃ怖かったらしいよ。
杉浦 寡黙だから。後輩からしたらちょっと怖いのかも。
ーー話は変わりますが、お互いの街でおすすめがあれば教えてください。
飯田 川崎大師やラゾーナ川崎など、いろいろな場所に人が集まります。アクセスがいいのでどこにも行きやすいですし、コンパクトで住みやすいと思いますね。
杉浦 僕たちにはみなとみらいがあります。
飯田 たしかに。おしゃれだもんな。
杉浦 街並みがキレイ。
飯田 おしゃれさでは勝てないかな……(笑)。
杉浦 (笑)。
ーー開幕前のオフ期間で一番の思い出はありますか?
杉浦 やっぱりシーズンへの準備。
飯田 (笑)。
杉浦 というのは冗談で(笑)。高校、大学で同期の青木(保憲/仙台89ERS)選手の結婚式が沖縄で行われ、それに出席しました。カチャーシーを踊る時間があり、筑波大学の吉田(健司)先生も一緒になって踊っていて。楽しそうに踊る吉田先生を見られたのが一番の思い出です。
飯田 川崎の選手も出席していたよね。竜青さんとか、(長谷川)技さんとか。
杉浦 そうそう。オフに行われる結婚式ではいろいろなチームの選手が集まる印象。
飯田 僕は実家がある長野県に帰省しました。昨年、川崎に引っ越してきて、すごく住みやすくていいんですが、緑が少なくて。実家に帰って、改めて自然はいいなと感じました。
ーーお互いのチーム内で何か流行っていることはありますか?
飯田 先日の天皇杯が今シーズン初めての遠征でしたが、HCが変わると、チームルールも変わって。今シーズンは昼食と夕食をみんなで一緒に「いただきます」をしてからとるようにしていて、食事中はスマートフォンを使ってはいけない。チームでコミュニケーションを取ろうという意図があって、自然と話す時間も増えます。HCがオフコートでそういった機会を作ってくれたのは良かったです。シーズンをとおして続いていくことだと思うので、いろいろな選手とコミュニケーションを取れるきっかけになるのかなと。流行っていることではないんですけど……。
杉浦 横浜BCも遠征時は昼食と夕食をみんなでとるようにしています。スマートフォンを使ってもいいんですけど、動画を見たり、音楽を聞いたりするのはダメで。ラッシ(トゥオビ)HCはコミュニケーションの部分を重要視していて、積極的に声を掛けてくれます。チーム一丸という雰囲気ですね。
飯田 横浜BCのHCは怒るとか、ネガティブな態度を見せることがないと思っていて。すごく褒めているイメージだけど、実際はどうなの?
杉浦 すごくポジティブだね。練習中に怒ることはあるけど、選手の士気を高めるために、タイミングを見て喝を入れるみたいな。よく考えてくれていると感じるね。
飯田 ヨーロッパ出身のコーチはいい意味ですごく感情的だから、いいことも悪いことも勢いよく感情に任せて言っちゃうイメージだけど、全然そんなことはなくて。HCは若い?
杉浦 37歳だね。
飯田 僕たちのHCは61歳だからか。もちろん、ネノHC(ロネン・ギンズブルグHCの愛称)も優しいけど、また違ったタイプなのかな。
ーー逆に杉浦選手から飯田選手に質問はありますか?
杉浦 オフの日は何をしている?
飯田 それ本当に興味ある(笑)?
杉浦 さっきも話していたけど、川崎はアクセスがいいからさ。オフの日はそこまで多くないのか。
飯田 そう、オフがすごく少ない(笑)。スケジュールもよく変更になるからね。横浜は近いからよく行く。あと劇団四季が好きで、よく見に行くね。それは関東にいて良かったと思う点。
杉浦 ライオンキング?
飯田 そう。テツ(柏倉哲平)さんとライオンキングを見に行ったんだよね。近々、川崎のYouTubeにアップされると思うよ。
杉浦 それ仕事じゃん(笑)。
飯田 (笑)。「お邪魔していい?」って聞かれたから「もちろん」と。僕は劇団四季の普及活動に力を入れているので。
ーーきっかけは?
飯田 幼い頃、母親の影響で見るようになりましたね。すごく好きです。
杉浦 面白そう。2時間くらい?
飯田 2時間30分くらい。子どもがもし泣いちゃったとしても、ベビールームも設備されているから。ぜひ。
ーー杉浦選手の趣味は何ですか?
杉浦 ホテルに泊まる“ホカンス”って知っています?
飯田 ホテルに行って、ホテルで過ごす?
杉浦 そう。ホテルでただゆっくりするだけのことなんだけど。
飯田 ゆっくりできる?
杉浦 うん、ゆっくりできる。子どもがいるから少しだけど、妻からしたら食事は外食か、どこかで買ってホテルで食べるとかで、いい息抜きになる。非日常を、遠くに行かなくても味わえるから。
飯田 たしかに。
ーー最後にダービーへの意気込み、ファンへのメッセージをお願いします。
飯田 僕らにとってはもちろん、ファンの方々にとっても特別な一戦だと思います。試合は川崎がホームでも、横浜BCがホームでも、ぜひ自分たちのホームだと思って足を運んでいただいて、一緒に盛り上がり、一緒に戦ってくれたらうれしいです。川崎ファンはもちろん、横浜BCファンの方も一緒に楽しんで、盛り上がってくれたらいいなと思います。
杉浦 ダービーが激しくなればなるほど、神奈川県のバスケットが盛り上がってくると思うので、注目に値するようないい試合ができるように頑張ります。飯田選手も言いましたが、ホーム、アウェーに関係なく、一緒に熱い試合にしましょう。
飯田 頑張りましょう!
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